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待ってくれ、洋子

待ってくれ、洋子
By 長門 裕之

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  • 発売日: 2009-04
  • 版型: 単行本
  • 206 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
昨日の洋子に戻ってくれ。神様、この時計を、もういっぺん巻き戻せませんか?老老介護の現実と夫婦愛。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
長門 裕之
1934年(昭和9年)京都府生まれ。父方は歌舞伎一家、母方は映画のマキノ一家。6歳で映画デビューし、8歳で出演した「無法松の一生」で名子役として注目される。26歳でブルーリボン賞を受賞。代表作に「太陽の季節」「にあんちゃん」「秋津温泉」など。近作は「旭山動物園物語」、主演の「夢のまにまに」。舞台、テレビドラマでも活躍中。2010年に芸能生活70周年を迎える(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

放蕩芝居馬鹿の荘大な懺悔録・・・ 小説であってほしい5
老々介護の美談、と受け取られている話題ですが、70歳の母親に言わせると「あんなもの、
自業自得だわ」と吐き捨てるように言われて驚きました。筆者の過去のスキャンダル等は
全く知らなかったからです。

これは、一冊まるまる、壮絶な老々介護の現場の記録であると同時に、若いころから「おし
どり夫婦」と呼ばれていた自らを「仮面夫婦だった」と言い切り、浮気、暴露本の失敗、
身勝手な金遣いでの膨大な借金、父親の介護の押しつけ、更には暴力までという、“放蕩
三昧の芝居馬鹿”の荘大なる懺悔になっています。それをさらけ出して、奥様にいかに辛く
あたってきたかを、苦く苦く噛みしめながら、歯を食いしばって介護を続ける姿が淡々と
綴られています。

単なる介護記録の「お涙頂戴」ではなくて、この懺悔の呻きこそが、読む価値があり、考え
させられるものがあります。読後感としては、【一番かわいそうなのは、筆者ではなく、
耐え続けてきた挙句に認知症に苦しむ奥様の方だ】と思わせる迫力があります。

あまりに苦しく、奥様が先に死んだら自分が発狂しそう。といって、自分が先に逝ったら
奥様が不憫過ぎる。苦し紛れに「一緒に死のうか」と口走った筆者に、一瞬、澄んだ目を
取り戻して「だめだよ!」と言い切った奥様の毅然とした尊厳。素晴らしいです。

自ら制作会社をつくり、数多くのドラマの作成も手掛けてきた筆者。自分でも、「これは
ドッキリでしたぁ!!」と言えたらどんなに良いか、と言っておられますが、脚本家と
しての文章力も読ませるものがあります(口述筆記とは推測しますが)。実は、これは
良くできた懇親の小説だった、としても、読み応えのある一冊でした。むしろ、小説で
あること、脚色がふんだんにされていることを祈りつつ、星5つつけます。

孫悟空の恩返し5
読んでいて、長門氏は奥様の介護をする以前は、ずーっと
「お釈迦様の手のひらの上を飛んでいると気付かずイイ気になってる、やんちゃな孫悟空」の様な人だったのだと思いました。

役者として妻が台詞を覚えられない事、女優を廃業し療養生活に入る様、
二人で築き上げた夫婦生活の思い出を、共にゆっくりと語り合う時になり、お互いの事情が落ち着いた頃、
運命の皮肉で妻の記憶が失われ、日々、自分が見知っていた妻とは違う別人に変化する悲しみと、
その中で時折昔の妻の顔を垣間見せ
長門氏を諭す姿に老老介護の現実を見た様な気がしました。

記憶が日々薄れゆく妻と長門氏は、健常だった頃とは違う形の新たなコミュニケーションを取りながら
これまでの夫婦の強い絆に基づいた関係から更に新たな関係を築くのですが、
その有り方はとても純粋で美しく、高村光太郎の「智恵子抄」を思わせます。

そして、妻に出会った頃は妻の方が長門氏より遥かに格上で、俳優としても弟・津川氏の様に二枚目ではなく、裕次郎の様に人気も無い。
俳優としてのキャリアへの憧憬と焦燥、妻との密会を重ねた恋愛関係を公にする為に、
もがき苦しみ俳優として歩むべき道を模索する長門氏の姿は、読む側にも逼迫感を感じさせます。

また、俳優業で儲かったはいいが、放蕩な芸妓や女優らとの浮気三昧、
道楽癖で「人間プロ」を設立、映画製作やステーキ店のビジネスで莫大な借金を作り、
更には、親の介護の為に女優・南田洋子を妻としてクレゾール臭漂う女優にしてしまった事への悔恨。
長門氏は「仮面夫婦だった」と言うけれど、私には彼らの関係が仮面夫婦には見えない。
本当に仮面夫婦なら、離婚再婚の珍しくないこの世界に身を置く人間は、さっさと離婚している筈!
長門氏が浮気した際に、浮気相手を目の前にした妻・洋子氏の姿はあまりにも鮮やかで格好良すぎます!
そして、夫の全てを理解し達観して見ているので「多少のやんちゃ」を放任する肝っ玉の太さに同じ女性として憧れてしまう。
「この人の弱さ脆さ、それら全てを本当の意味で知りつくしたのは私だけよ。貴女には無理」と言わんばかりの態度は、
まさに「洋子姐さん」であり、孫悟空を手のひらの上で転がすお釈迦様の様です。

世の中に数多ある理想の夫婦論と各自それぞれの夫婦の形。私は完璧な夫婦なんてこの世にいないと思っています。
夫婦の数だけ、それぞれに応じた理想の夫婦の形があっていいと思うんです。
この本は紆余曲折を辿りつつようやく理想の夫婦になり、お釈迦様=洋子氏へ心から恩返しをする孫悟空=長門氏と言う
一組の夫婦の素晴らしい実話が詰まっています。お気に入りの本です。

素晴らしい!!!!5
とても感動しました!!
単なる感動ものではなく、もっと深い「夫婦の愛」を感じた作品でした。

それと同時に、長門さん夫妻の様子から、介護保険によるサービスが果たして必要なのか?とも考えました。この作品を読むまで、老老介護には、公的ななんらかのサービスが入るべき!!と考えていましたが・・・・。うーーん。二人の様子を読んでいると・・・考えてしまいますね。

とても深く考えさせられる作品でした。

今、福祉関係のお仕事をされている方、学生の方には絶対読んでおいてほしいです!!!