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夜と霧 新版

夜と霧 新版
By ヴィクトール・E・フランクル

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  • 発売日: 2002-11-06
  • 版型: 単行本
  • 169 ページ

エディターレビュー

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   名著の新訳には、つねに大きな期待と幾分かの不安がつきまとう。訳者や版元の重圧も察するにあまりあるが、その緊張感と真摯さのためか、多くの場合成功を収めているように思われる。本書もまた、その列に加わるものであろう。

   ユダヤ人精神分析学者がみずからのナチス強制収容所体験をつづった本書は、わが国でも1956年の初版以来、すでに古典として読みつがれている。著者は悪名高いアウシュビッツとその支所に収容されるが、想像も及ばぬ苛酷な環境を生き抜き、ついに解放される。家族は収容所で命を落とし、たった1人残されての生還だったという。

   このような経験は、残念ながらあの時代と地域ではけっして珍しいものではない。収容所の体験記も、大戦後には数多く発表されている。その中にあって、なぜ本書が半世紀以上を経て、なお生命を保っているのだろうか。今回はじめて手にした読者は、深い詠嘆とともにその理由を感得するはずである。

   著者は学者らしい観察眼で、極限におかれた人々の心理状態を分析する。なぜ監督官たちは人間を虫けらのように扱って平気でいられるのか、被収容者たちはどうやって精神の平衡を保ち、または崩壊させてゆくのか。こうした問いを突きつめてゆくうち、著者の思索は人間存在そのものにまで及ぶ。というよりも、むしろ人間を解き明かすために収容所という舞台を借りているとさえ思えるほど、その洞察は深遠にして哲学的である。「生きることからなにを期待するかではなく、……生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題」というような忘れがたい一節が、新しくみずみずしい日本語となって、随所に光をおびている。本書の読後感は一手記のそれではなく、すぐれた文学や哲学書のものであろう。

   今回の底本には、旧版に比べてさまざまな変更点や相違が見られるという。それには1人の哲学者と彼を取り巻く世界の変化が反映されている。一度、双方を読み比べてみることをすすめたい。それだけの価値ある書物である。 (大滝浩太郎)

内容(「BOOK」データベースより)
心理学者、強制収容所を体験する―飾りのないこの原題から、永遠のロングセラーは生まれた。“人間とは何か”を描いた静かな書を、新訳・新編集でおくる。

内容(「MARC」データベースより)
心理学者、強制収容所を体験する-。飾りのないこの原題から、永遠のロングセラーは生まれた。原著の改訂版である1977年版にもとづき、新たな訳者で新編集。人間の偉大と悲惨をあますところなく描く。


カスタマーレビュー

真摯な解釈の結果、より原書の雰囲気に近づいた5
訳者が変わり、文体がシンプルなものになると同時に、
旧版についていたアウシュビッツに関する資料がなくなった。
これは前の訳者の主観を読者に植え付ける要素が強く、著者の客観的な
姿勢に反した余計なものだと思っていた(この点で旧作は本としては
星四つ)ので、本としてソリッドに著者の意思が統一された形となった。

この本が生きるヒントを与えてくれる類の本だと受け止められたのは、
単純にナチスの非道さが記されているからではない。
凄惨な極限状況の中で人と悪魔を分けたのは、ユダヤ人とドイツ人という
人種ではなく、勝者と敗者といった立場でもない、普遍的な人間性や良識を
維持できたか否かという個人の内面の充実に答えを求めているからだ。
つまり、現在平和な状況で生きている我々も、この答えを持たないため、
少し状況が変われば獣に落ちてしまいかねない不安定な存在なのである。
自分の凄惨すぎる収容所の経験と平和な状況での混迷を真摯に同列として
扱って答えを探そうとするところに、本書が人々の心に直に響く要素が
あるのではないか?そういう原書の持つ哲学書としての真摯さを尊重
すれば、これくらい簡潔にライトな和文で記述されるのが、相当であり、
妥当な選択であるといえる。

それにしても、作品の本意に従うためとはいえ、戦争ドキュメンタリー
として秀逸な旧作にあえてメスを入れ、大幅なスリム化を施すのには
大変な勇気が要ったことだろうと思う。戦争を軽視しているなどといった
不本意な批判が起こることへの恐れもあったに違いない。しかしそれでも
原書への忠実さと、本書が持つ「普遍的な平和」への飢えの訴求力を
信じた出版社と訳者に敬意を表したい。

20世紀の一冊、21世紀の必読書5
「20世紀を代表する一冊」の旧版とは違う訳者による新訳。

私たちはなぜ生きるのか。
この問いへの答えが今ほど切実に求められている時代はないだろう。
「夜と霧」は単なる収容所生活のレポートではない。

それは圧倒的な絶望の中で生きた人々のたどりついた
人間の最後のこころのとりでの記録である。

衣食住だけでなくすべての尊厳さえを奪われた収容所での生活。
そこでフランクルが仲間と夕日を眺め、
美しさに心奪われる場面がある。

人間はいかなる状況でも
「こころの世界」、「内面的な世界」を失うことがないということは、
心に人知れぬ悩みを抱えていた私にとっての大きな希望となり、
苦悩への答えとなった。

わたしたちがどんなに最悪の状況でも
「その状況に対する態度を決める自由」だけは決して失われない
というフランクルの言葉は
さまざまな問題を抱える今の日本に生きる私たちにとって
力強い励まし、1つの答えとなるに違いないと思う。

人間の究極の「こころの世界」をえがくこの本は
すべての人にすすめたい一冊である。

名著復活5
どうしても旧版と比べられてしまいますが、改訂された原書の翻訳ですから、単なる改訳だと思ってはいけません。旧版も絶版にはなっていないようですので、ともに存在価値があると思います。
さて、この機会に旧版ともども一気に読みました。
比べるつもりはないものの、やはり「差」は感じます。それは出版された時代背景についてです。

ホロコーストそのものについての情報が乏しかった旧版の時代と、それらを予備知識として前提できる今日との差は、あきらかにあるようです。それをもって旧版は重く新版が軽いと言っては正鵠をえていないでしょう。この本は、悲惨な状況を冷静にかつ客観的に書いています。決して、悲惨の原因を糾弾することではなく、淡々と書いていることが印象的です。

その雰囡?気を、新版もあますところなく伝えています。旧版に比べて軽いと感じるとすれば、それには読みやすい文体が寄与しています。原著もこんな「感じ」なんだろうと、私には思われます。