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ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)
By ジェイン オースティン

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  • 発売日: 2009-09-09
  • 版型: 文庫
  • 392 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
17歳の平凡な少女キャサリンは、リゾート地バースで恋に落ち、由緒あるお屋敷に招待されて有頂天。古めかしいお屋敷で、愛読中のゴシック小説に出てくるようなホラー体験ができる、と大喜びでノーサンガー・アビーに出かける。ところが、小説の読みすぎでキャサリンの妄想はとんでもない方向に…。オースティン初期の辛口ラブコメディー。定評ある読みやすい新訳で初の文庫化。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
オースティン,ジェイン
1775‐1817。イギリスの小説家。おもに結婚話を題材とした、平凡な日常生活のドラマを皮肉とユーモアをもって描き、完璧な芸術へ高めたと言われる

中野 康司
1946年神奈川県生まれ。青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

機知とユーモアを持ったラブコメ4
主人公は、小説好きの普通の女の子キャサリンです。
この当時のゴシック小説は、「善」「悪」がはっきりした小説です。
それに対して、ジェイン・オースティンは「善と悪が入り混じっている」人間を描こうとしています。
キャサリンも小説の中の世界に生きる「夢見る夢子さん」から出発し、ヘンリー・ティルニーを好きになり、様々な困難に直面しながら愛を貫く中で、一人の大人の女性として成長してゆきます。
その意味では、主人公の成長小説と言えるかも知れませんが、より強く「ラブコメディー」の要素を持っています。
それだけ作者が、登場人物を機知とユーモアを持って、生き生きと描いていると言えるのでしょう。
読む側にとっては、18世紀の小説とは思えない読みやすさを持った小説でもある訳です。
主人公キャサリンを、親の視点から応援したくなるような、そんな小説でした。

新しいヒロイン像に挑戦するオースティン5
ジェイン・オースティンが22歳頃に書いた、事実上の処女作。後半部など展開がやや冗長で、小説の技法的完成度としては『高慢と偏見』『エマ』などには一歩譲るが、本書は、若きオースティンの心情溢れる瑞々しい作品だ。当時まだ軽んじられていた小説を断固として擁護する彼女の情熱が凄い。小説は軟弱な女子供の慰みものであり、男子たるもの読むべからずという偏見や、詩を文学の最高峰とする伝統に抗して、彼女はヒロインに小説の素晴らしさを語らせる。当時読まれていた小説の実名がたくさん出てくるのも楽しい。そして、本作のヒロイン像はきわめて斬新である。それまでの小説のヒロインは、上流階級でとびきり美人のお嬢様というワンパターンであったが、本書のヒロインのキャサリンは、美人でもない17歳の普通の女の子である。それだけではない。当時のしきたりでは、女性は男性に求愛されるまでは、たとえ自分が相手を好きでもその感情を見せてはいけないとされていたのに、キャサリンは、相手のヘンリーに自分の愛情を先に見せてしまう。「つまりヘンリーは、キャサリンから愛されていると確信したために、彼女のことを真剣に考えるようになった。これは、恋愛物語としては新しいパターンかもしれないし、ヒロインの名誉を著しく傷つけることになるかもしれない」(p370)。愛情を先に見せることが「ヒロインの名誉を著しく傷つける」時代にあって、オースティンは大きな一歩を踏み出した。

純粋培養の少女のロマンス&成長物語4
 オースティンの作品を久々に読んでみたいと思い手に取った。古典だけれど、少女の心理をユーモア溢れる(もしかしたら笑わせる意図はなかったのかもしれないが)筆致で表したり、人を見抜く経験を積んだり、横恋慕に苦しんだりと意外に古典が古くない。案外、この作品、マンガにしたら思春期の少女たちに受けるのではないか?

 ホラー小説が大好きなキャサリンは、バースにお伴のご近所さんと出かけ、社交界デビュー的な儀式(知り合いのいないパーティに出て右往左往する場面に、案外イギリス人もそんなものかと安堵する)も通過し、なおかつ良い縁談を求めていたのだが、すぐに意中の人が現れる。昔はそんなに綺麗ではないという周囲の認識だったが、ここ最近はすっかり綺麗になったと彼女の評判も上がったせいで、好きでもない男性に言い寄られる。そのせいで意中の人と親しくなる時間をロスしたり、誤解を招いたり、脇道にそれつつも、意中の人の妹と首尾よく仲良しになれたことで、彼らの実家、ノーサンガー・アビーに滞在できることになる。

 ここの当主、兄妹の父親が、怖い。最初は、キャサリンの過剰な想像力ゆえに、とんでもない濡れ衣が彼女の頭の中で着せられていたので、同情しつつも、かなり笑わせてもらったのだが、後でこの男のとんでもなさに呆れ、がっかりする。折角の大邸宅もこれでは泣く。この男の描写にはオースティンの皮肉が込められているのだろうか。まあ兎にも角にもハッピーエンドで、終わりよければすべてよし、と。

 疲労が蓄積したとき、こういう恋愛ものは疲れを癒してくれる。