エル・スール
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #160407 / 本
- 発売日: 2009-02
- 版型: 単行本
- 131 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
父の死を契機にセビーリャへと赴いた少女が出会ったものは…。内戦後の喪失と不安感を背景に、大人へと歩み始めた多感な少女の眼を通して浮かびあがる、家族の秘められた過去。映画『エル・スール』製作当時、エリセの伴侶として彼に霊感を与えたアデライダ・ガルシア=モラレスによる、時代を超えた成長小説。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ガルシア=モラレス,アデライダ
1945年、スペイン、バダホスに生まれる。その後セビーリャに移り、1970年、マドリード大学哲文学部哲学科を卒業。国立映画学校で脚本を学んだ後、中学校の教師、女優などを経て、1985年、第一作El Sur seguido de Bene(『エル・スール/ベネ』)をアナグラマ社から刊行。同年に刊行したEl silencio de las sirenas(『セイレーンたちの沈黙』)では、エラルデ小説賞を受賞。90年代に多産な執筆活動を展開し、今世紀に入っても新作を発表している
野谷 文昭
1948年、神奈川県川崎市生まれ。スペイン・ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部現代文芸論専修課程教授
熊倉 靖子
栃木県真岡市生まれ。清泉女子大学大学院修士課程修了。現在、清泉女子大学非常勤講師。スペイン語圏における幻想文学分野を研究テーマとする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
おそらく主人公が反芻し続けるように、私もこの物語を反芻しつづけたいと感じた
これはビクトル・エリセ監督の名作スペイン映画『エル・スール [DVD]』の基となった物語です。映画は少女エストレージャが、自殺した父の過去を探るために南(エル・スール)へ旅立とうとするところで終わっていました。
その旅の様子についてはこのガルシア=モラレスの小説に書かれているとかねてから耳にしていました。それがようやく翻訳出版されたと聞き、急ぎ手にした次第です。
実際にページを繰り出して気がついたのは、あの映画がこの小説を忠実に映像化したものではなかったということです。例えば少女の名前はエストレージャではなくアドリアナです。
ですから映画の続きを強く期待しすぎると、ちょっぴり肩透かしを食わされた思いをするかもしれません。
しかしこれは映画の有無にかかわらず小説として大変すばらしい作品でした。
父の複雑な過去は必ずしもそのすべてが解き明かされるわけではなく、時間の流れによってうっすらと霞がかかってそれを完全に振り払うことはもはやかないません。そして父が生きていた頃に少女の限られた認知力が見つめて記憶に刻んだものは、いまや幻想的で曖昧なひとつの物語として立ち現れてくるばかりです。
だから彼女は父の物語が「乗り越えることができず永遠のものとなって」しまったと綴ります。おそらく少女は自分の命がついえるときまで、この物語を反芻し続けることでしょう。それは残酷な美しさをたたえ、底冷えがする思いと同時に、哀しいぬくもりを感じさせます。
翻訳を紡いだ訳者たちの日本語の素晴らしさは胸を打ちます。長らく翻訳されなかったこの作品が、すぐれたこの二人の手で訳出されて本当に良かった、そう思える文章です。
ガルシア=モラレスの小説の日本での翻訳はこれが初めてのようですが、ぜひ他の作品も、そしてぜひ同じ翻訳家たちの手で出版してもらいたいものです。
ガルシア=モラレス、アデライダ氏の他の作品も読みたくなりました
以前から映画「エル・スール」に魅かれていました。今回は「映画の元になった小説」として非常に興味を持ち、この本を手に取りました。しかしながら、10ページほど読んだところで「映画を意識して読まないほうがいいのでは」と感じました。ビクトル・エリセ氏は優れた映画監督だと思っていますが、アデライダ氏の作品はそれ自体独立したものだと思いながら読み続けました。
作品の中に常に暗い影を感じながら読みました。父親の秘密が彼自身を孤独にし、家族を不幸にします。しかし、「暗い影」がアドリアナを追い詰めない所にとても魅力を感じました。彼女を取り巻く家庭環境や、彼女に降りかかる悲しいエピソードは、アドリアナを深く落ち込ませますが、それとは関係なく時間は過ぎてゆきます。アドリアナが成長してゆく場だと思います。
この作品が書かれた時代背景は、勿論作品に大きな影響を与えていると思います。それでも、この本の中では時間がゆっくりと流れてゆき、暗いけれど心地よい感覚を持ちました。この作品の最後の部分は、映画にはないエピソードでアドリアナの個性に違った色合いをつけて結んでいます。私はそこに力強さを感じます。
訳者の野谷文昭氏、熊倉靖子氏の飾り気のない落ち着いた日本語に感銘を受けました。また解説に書かれている内容も得がたい情報ばかりで作品と同じくらいじっくり読ませていただきました。
愛を探す旅
最初に手に取ったときは少しがっかりした。私の好きな映画「エル・スール」の世界がこんなに薄い本であることに。でもこの本はあの映画の世界観が書かれているものではなかった。映画はこの物語をもとに独自の世界観を持っている。エリセの素晴らしいイマジネーションによって。
そこで原作としてではなく小説として読んでいくことにした。
この物語で主人公は心の中で亡き父に語りかけ続ける。彼女は自分が子供の時の父の想いを振り返りながら、父の足跡をたどる旅に出る。
私は、父の面影を求めるというよりは、愛を与えられずに育った主人公が愛というものを理解する手段としてエル・スールをめざしたのだと思った。父をあのように変えてしまう「愛」について知りたいと。その中で父や母、周囲の人々の行動を徐々に理解していく。心にまだ空虚さを残しながらも、それでも自身の「愛」への希望としてあの言葉を残したのではないだろうか。




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