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終身刑の死角 (新書y)

終身刑の死角 (新書y)
By 河合 幹雄

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  • 発売日: 2009-09-05
  • 版型: 新書
  • 190 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
ギリギリの決断を迫られかねない裁判員の死刑判定を回避すべく、死刑と無期刑の中間刑として導入が検討されている「仮釈放なしの終身刑」。だが、出所という一縷の希望もない終身刑囚を、現場の刑務官はいかに統制するのか。導入後に待っているのは、たとえ刑務所内で暴れてもこれ以上、刑が重くなることのない終身刑囚への優遇措置の蔓延と、寝たきりの彼らの介護、そして“死の看取り”である。“死ぬまで監禁刑”が孕む弊害を、法社会学の俊英が問う。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河合 幹雄
1960年生まれ。京都大学大学院法学研究科法社会学専攻博士課程修了。現在、桐蔭横浜大学教授。専門は法社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

絶対に当たらない宝くじの販売のもつ意味とは!4
何の気なしに購入した本でしたが、非常に面白かったです。殺人と死刑そして刑というドラマティックな事象に対してはどうしても即時的な反応が出てきてしまいます。しかしこの作品はこのようなドラマティックな出来事に対しての多面的な接近を見事に果たしています。もともとは、仮釈放なしの終身刑という政治的な動きへの反対という非常に時事的な動機に基づいて書かれた作品のようですが、本書の射程と論理はその動機の時限性を超えて普遍的なものとなっています。統計を利用しての日本の安全神話崩壊という通説への論駁で本書は始まります。しかし話はそこで留まることなく、終身刑、死刑そして刑務所の実態へと冷静に議論は進められます。ここで議論のベースとなるのは人間にとって時間のもつ意味とかすかながらも可能性の維持が人間の生存への動機に与える影響です。この文脈の中で普段知られることのない刑務官の職務にも、縁の下の力持ちとしての文化的な宿命としての存在にスペースが与えられます。「被害者の視点」は深い論点を呈示しながらも、犯した罪の本質的な不可逆性への認識で締めくくられます。第7章は、刑を通した見事な日本社会論になっており、短いスペースながらも、日本の犯罪統制の歴史的なユニークさがその見事な成功と、一面では民主主義(個人主義)とは決して相容れないことのない日本社会の厳しさ(ページ183)が見事に指摘されます。追加で日本の社会における国家陰謀論の不成立性までもが、内輪話のようにコメントされますが、これはもう少しスペースがあった方が面白かったのかもしれませんね。そしてここでも取り上げられるのがマスメディアのどうしようもない幼稚さとその社会への害毒としての存在です。

終身刑と刑務所運営4
本書は、まず最初に、日本の犯罪状況や、逮捕から死刑、無期懲役を巡る状況を綴り、その上で、終身刑導入によって起こりうる事態の考察をし、現在の状況の長所を見直す、という構成となっている。
中でも注目すべきは、タイトルとも直接関係する、その終身刑を入れることの弊害を綴った第5章であろう。刑務所の運営は、受刑者の活動により支えられている部分があり、仮出所が認められる、ということがアメとして機能している(逆に従わなければ、認められない、ということがムチともなる) それが崩壊してしまう。そこに代わるアメとムチを用意する、となると、アメリカなどであるようなリゾート地のような刑務所というおかしなことになりかねないし、また、どうせ同じなら、という脱走へ駆り立てる動機にもなってしまう。それらは、明らかに変であると同時に莫大な費用が掛かってしまう、という指摘は極めて重要だろう。勿論、高齢になっての介護などの問題も起こる。
この部分に関しては、『刑務所の風景』(浜井浩一著)や『獄窓記』(山本譲司著)などと組み合わせると、さらに深刻であると感じざるを得ない。ここで挙げた著書の内容は、あくまでも「現在」つまり、「無期懲役でも仮出所のある状態」ですら、高齢者や障害者など、刑務所運営にとって負担となる存在が増えている、というものを綴った書である(現時点でも、山本氏などは、刑務所は福祉施設化している、と述べている) もし、ここに終身刑が導入されたなら……。
感情論ではなくて、刑務所の運営という視点で見た、終身刑の問題指摘、これは非常に重要だと思う。

制度を運用するとはどういうことか?4
とても興味深く最後まで読ませて頂きました。

私自身、死刑制度の存廃や終身刑について、感情論での2択問題の様に捉えていたことを思い知りました。

この本では、実際に制度を運用していくとはどういうことかに焦点が当てられ、淡々と事実を示している点、好感が持てました。

死刑制度や終身刑について、ブレークダウンして欲しいと思っている方は読んでみてください。