東洲しゃらくさし (PHP文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #114189 / 本
- 発売日: 2001-08
- 版型: 文庫
- 358 ページ
エディターレビュー
出版社/著者からの内容紹介
江戸期の東西歌舞伎の実相を克明に描きながら、謎の天才絵師・東洲斎写楽の正体をあぶり出す、異色長編時代小説。
寛政の改革の嵐が過ぎ去り、江戸の町にも漸く活気が戻った頃、上方の人気歌舞伎作者・並木五兵衛は、鳴物入りで江戸に呼ばれることに。彼の江戸下りに先立ち、一人の男が大坂の町を後にした。大道具の彩色方をつとめる彦三という男である。五兵衛のたっての頼みにより、江戸での手助けと、江戸芝居の様子を前もって報せる役目を担っていた。だが、待ちわびる五兵衛の許に彦三からの報せはなく、漸く届いたものは東洲斎の雅号を付した幾枚もの版摺絵であった。江戸の大立者を大胆な筆致で描いた似顔絵であり、五兵衛はそこに描かれた旧知の役者に思いを馳せつつ、江戸へ下っていくのである。
東西の風習・文化の違いと、芝居という虚の世界に、真実を追い求めた男たちの哀歓を、見事に描出した力作である。時代小説大賞受賞作家のデビュー作。
内容(「BOOK」データベースより)
寛政の改革の嵐が去り、江戸の町に活気が戻ったころ、上方の人気歌舞伎作者・並木五兵衛は江戸下りを決意する。五兵衛に先立ち、大道具の彩色方・彦三が大坂を後にした。江戸芝居の様子を報せるためでもあったが、待ちわびる五兵衛の許に届いたものは、東洲斎の雅号を付した幾枚もの版摺絵であった…。謎の絵師・写楽の正体と、芝居という虚と現実の狭間に生きる男たちの哀歓を描く力作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
松井 今朝子
1953年、京都生まれ。早稲田大学大学院演劇学修士課程終了後、松竹株式会社演劇制作部に入り、歌舞伎の企画制作に携わる。退社後、歌舞伎上演台本の作成、評論、演出などを手がけ、97年、本書で作家デビュー。同年、『仲蔵狂乱』(講談社)で第8回時代小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
柝の音が響く余韻の味わい
平成九年に書き下ろされた松井今朝子のデビュー作。
題名から明らかなように写楽もの。寛永年間に忽然と登場し、短期間に幾多の傑作を残して忽然と消えた謎の絵師。写楽の謎を求めてはいくつかの作品が書かれている。それらは写楽の正体について、魅力的な答えの一つとして了解されるものの、謎は依然謎のまま生き続けている。先人、先達が寄ってたかって発掘し尽くした感のある写楽。そのような写楽を、あえてデビュー作に持ってこようというは一体どんな了見かと思うが、松井今朝子という人がいかに性根の座った、良い根性の持ち主であるかが、一読してすれば良く判る。
大阪の狂言作者並木五兵衛が江戸に下った時期と、写楽の登場とが期を一にしているという史実から、歌舞伎の世界を通して上方と江戸の意識、文化的違いの対比のうちに、歌舞伎にまつわる人々の様々な生業、営みをもって写楽とその時代を説き起こし、返す刀で写楽の謎を描ききる。その解釈もまた胸に迫る。
客観に徹した作者の態度切れのいい叙情がうまれ、歌舞伎の制作、劇評に長く携わっていたという作者の豊富な教養知識は物語の流れに自然に溶け込んで、単なる蘊蓄を聴かされる辛さもない。
新人のデビュー作と思えない、悠揚迫らぬ堂々たる筆致で描かれた写楽の時代。抑制と格調で安易に情緒に訴えようとしないから、こちらも作中人物への感情移入や思い入れで読むのではなく、結構知的に読み進めてきたつもりだったが、淡々と綴られたエピローグに思いがけずに涙こぼしそうになった。鮮やかな幕切れにいっそう高く響く柝の音が聞こえたような気がして、深い余韻に包まれた。
歌舞伎+写楽の謎
直木賞作家松井今朝子のデビュー作。
作者のもともとの専門分野である歌舞伎の世界を踏まえて、東洲斎写楽の謎を扱った作品です。
上方の人気歌舞伎作家並木五兵衛の江戸下りを中心に、それに同行した大道具の彩色方彦三を写楽として話が展開します。
この本は、所謂「写楽もの」とは一線を画しているように思います。それは、中心は悪まで上方と江戸の歌舞伎の違い、もっと言えば、文化の違いを描き出すことにあります。もう一つは、虚構の世界とリアルな世界の対立にあります。
この対立の中で、写楽は写実性を追求して行くことにより、表舞台から去らざるを得なかったという結論に至っています。
歌舞伎の世界の舞台裏は、流石に専門分野ということもあり、見事と言う他はなく、歌舞伎の魅力に取り憑かせる興味深い内容です。
自分の期待した写楽像とは・・・
本書は、江戸時代の歌舞伎、浮世絵といった、
個人的に興味深い題材を小説にしており、
しかも作者は歌舞伎の世界に精通した専門家ということもあり、
最後までとても面白く読ませてもらった。
天才浮世絵師、写楽は謎の人物であり、生没年はもちろん出生地も不明。
たった一年の間に百数十点の浮世絵を描いて消息を絶った。
写楽の浮世絵は素人の目で見ても、他のものと比べて明らかに独創的であり、
私個人としてはもっと個性的で破天荒な天才像を期待していたのだが、
本書の写楽はちょっと平凡かなと思ってしまった。
本書は歌舞伎作者・並木五兵衛が上方から江戸へ進出し、成功を収めるまでの
エピソードが物語の中心であり、それはそれで十分に面白いのだが、
それならば並木五兵衛の目を通して写楽の天才振りを描いた方が良かったのでは?
(たまたま最近、天才画家を主人公にしたモーム著「月と六ペンス」を読んだばかりで、
つい比較してしまった。)




