ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)
|
| 価格: | ¥ 756 1500円以上は送料無料 詳細 |
発送可能時期: 在庫あり。
販売、発送は Amazon.co.jp
商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #45742 / 本
- 発売日: 1988-12
- 版型: 文庫
- 319 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立するきっかけとなった記念碑的作品。
カスタマーレビュー
1284年6月26日、子供たち130人が行方不明になった。
『ネズミを退治した笛吹き男に、街の人たちはお礼のお金を払いませんでした。
次の日、男が吹く笛の音に誘われて、街中の子供達が付いて行き、行方不明になりました。』
ちいさなころソノシートつきの絵本を見て、
「楽しい音楽に誘われて、子供達はどこにいったんだろうな。」
とあこがれたものでした。
「大人は悪いことをしたから悲しい思いをしてあたりまえだけど、子供達はなんにもしていないんだから素敵な場所に行ったに違いない。」
と幼いなりに理由をつけて考えていたのでした。
この本には、子供達の失踪の史実あり、それが伝説になり、それを下敷きにして童話になったと書かれています。
事件発生当時のハーメルンの市の様子、政治の状態。
伝説が変化していく際の市の状況や市民達の心理状態。
また、変化させていく人達の身分や目的などが細かく説明されていて、とても興味深く読みました。
さて、私が幼いころ感じていたことの答えも載っていました。
「大人の世界で営まれるこうした醜悪な所業の責任をとらされるのは、しばしばいとけない子供たちである。」
「素敵な場所に行ったのではない」
と、伝説を伝えてきた人々ははわかっていたのですね。
真実が内包されているため、この伝説は今日も印象深く世界的に有名になったのだとも語られています。
伝説の根拠になった資料や、各研究者の資料などを引用し、現在わかっている事を書いてある本です。
私は歴史は詳しくないのですが、丁寧な解説ですのでスラスラと面白く読みました。
歴史、伝説に興味をお持ちの方におすすめです。
1284年6月26日、ハーメルンの町から130の子供が消えた
2006年9月4日、新聞で訃報をみた。
ずっと気になっていたがまだ読んでいなかったので、
訃報をきっかけに手にとって見た。
「ハーメルンの笛吹き」は日本人にもなじみ深いグリム童話である。
ハーメルンの町にまだら服の男が現れた。ネズミを駆除するという。
鼠害に悩む町人は男に仕事を頼んだ。
男が笛を吹くと、ネズミは男の後をついていく。
そうして川まで誘い出し、男はネズミをおぼれさせた。
町人はしかし、約束の報酬を払わなかった。
男は怒って、笛を吹いた。
130人の子供たちが男の後についていき、忽然と消えた。
この童話は、単なる物語ではない。
1284年6月26日に130人の子供が失踪した、という記録があるそうだ。
そして、ハーメルンの笛吹きの謎解きは、近代にわたるまでずっと
研究者たちの好奇心の的だった。
阿部氏の視点は、しかし、単なる童話の謎解きではない。
この伝説の背景となった中世ドイツの庶民の生活を緻密にあぶりだしていく。
強烈な身分社会、宗教の支配、貧困、被差別賤民・・・。
中世の庶民にのしかかる重圧感がひしひしと伝わってくる。
そのリアリティが凄い。
なぜ130人もの子供が失踪したのか、笛吹き男とはだれだったのか、
謎はまだ当分は解けないだろう、と阿部氏はいう。
しかし本書には、その想像をめぐらせるだけの圧倒的な情報量がある。
自分なりのイメージを膨らませ、謎を考えるのも一興である。
良い本を遺してくれたことを感謝しつつ、冥福をお祈りします。
読み物としても楽しめる一冊
「ハーメルンの笛吹き男」。一つの伝説として日本でも有名なこの話はしかし単なるおとぎ話ではなかった。この伝説の核心には確かに1284年6月26日にハーメルン市において130人の子どもたちが謎の失踪を遂げるという歴史的事実があったのである。
ドイツ中世史の泰斗である著者は、中世ドイツの社会的背景や民衆の生活を丁寧に探ることによってこの事件の真相を推測していく。著者は、過去になされた歴史家による先行研究を検討しつつ、下層民の鬱屈した日常生活と疲労の色の濃さがもたらす宗教的興奮を事件の背景に見出す。そこで著者は、中世都市が多数抱えた下層民の生活の実像に焦点を当てていくのである。
「私たちは法制とか社会制度の整備、さらに市壁の立派さとか建物が堅固になったという、誰の目にも容易に見える事実に惑わされてはならない。こうした外面的繁栄の陰で呻吟している多くの庶民がいたからである。」(P68)
「われわれは中世政治史や文化史のロマネスクやゴシックの建築に象徴させる華麗な叙述の背後に、痩せさらばえ、虚ろな顔をして死にかけた乳児を抱いて、足を引きずるように歩いていた無言の群衆を常に見据えていなければならないのである。」(P216)
事件の真相は何だったのか。著者の作業を通しても当然決定打は出てこないものの、下層民を見据える著者の作業によって当時の雰囲気が浮かび上がってくる。そして、悲劇的事件を民衆がどのように語り継ぎ、「笛吹き男」を加え、「ネズミ捕り男の復讐」というモチーフを加えた伝説となっていったのか、著者の叙述は興味深い。
歴史家としての著者の視点、問題意識の高さには、慨嘆させられるものがある。読み物としても面白いので気軽に読める一冊であると同時に、分野は違えど同じく歴史を学ぶ者には極めて示唆に富む名著だと思う。





