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宮沢賢治全集 (7) (ちくま文庫)

宮沢賢治全集 (7) (ちくま文庫)
By 宮沢 賢治

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  • 発売日: 1985-12
  • 版型: 文庫
  • 632 ページ

カスタマーレビュー

「銀河鉄道の夜」、決定稿と3つの異稿5
全集7に収められているのは、「なめとこ山の熊」「フランドル農学校の豚」「ポラーノの広場」「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「セロ弾きのゴーシュ」など全15篇。

いくつかの作品には「異稿」が併載されていますが、一番面白いのは「銀河鉄道」の「異稿」3種ではないかと思います。賢治の代表作とされる「銀河鉄道」のために残された原稿83枚を読み込み、決定稿に至るまでを時間を追って紹介しています。賢治は「銀河鉄道」で何を書きたかったのか? 決定稿で削られた部分を読むことで、少なくとも私の場合は、かなり明確化できたように思います。今更ながら、傑作なのだ、と実感できました。

ついでにこちらの全集(10巻)の構成を記しておきますと、1~4が詩集、5~8が童話、9は書簡、10がノート・手帳・その他、です。「春と修羅」(「無声慟哭」を含む)は1巻、「疾中」は2巻、「注文の多い料理店」「グスコーブドリの伝記」は8巻、「雨ニモマケズ手帳」と「農民芸術概論」は10巻、にそれぞれ収められています。

童話だけどすごいリアリティ5
「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「セロ弾きのゴーシュ」など、宮沢賢治の有名な童話が収録されています。特に印象的だったのが「フランドン農学校の豚」。知性を持ち、人間の言葉を話せる豚が屠殺されるまでの過程を、豚の独白という形で綴った童話です。撲殺同意書に調印させようとする校長とそれを拒む豚の問答は、ぞっとするほど緊迫していてリアリティがあります。

「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだらうか。」5
 カンパネルラの幼くもかなしい懐疑の言葉がいつまでも胸に残る。そして決定的な「誰だって、ほんたうにいいことをしたら、いちばん幸せなんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思ふ。」この場面から、夢が醒めていくあの美しい終景へと繋がっていく。
 私にはこの終景と、映画『ブレードランナー』の終景近く、死の直前のレプリカント「ロイ」のモノローグが重なって見える。「お前ら人間には信じられぬものをおれは見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船やタンホイザー・ゲートのオーロラ。そういう思い出もやがて消える。時がくれば涙のように雨のように。その時が来た」。映画史上おそらく最も感動的なモノローグだ(マーク・ローランズ)。
 「どこまでもどこまでも僕たち一緒に行かう。」ジョバンニが深い悲しみのなかで繰り返す言葉だが、初手からこの物語を色濃く染める泣き濡れたような悲しみの語調を誤解してはならない。原初の「別れ」が、この世のあれやこれやが、孤絶した存在と存在とが、悲しいのではない。「しあはせ」には必然的に「かなしみ」が伴う、そこにうっすらと懐疑の影がさしているということが「しあはせ」であることの証しなのだ(でなければ、ただの脳天気なハッピーになってしまう)。賢治はここに、もうひとつ別の「かなしみ」を発見しているのだと思う。それにしてもカンパネルラが許しを請うその「おっかさん」は息子の行ないをどう抱きしめればいいのだろう。