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壁を壊す

壁を壊す
By 吉川 廣和

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  • 発売日: 2007-11-02
  • 版型: 単行本
  • 214 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
「べき論」はいらない!「やり抜く」ことが仕事だ。圧倒的なスピードと実行力で事業・組織・風土改革を成し遂げたDOWAホールディングス、“破壊と創造”の軌跡。

レビュー
「日経ビジネス」2008/05/19
▽常識破りの企業改革
知り合いに勧められて読んだら、すごい企業改革物語だった。
100年以上の歴史を持つが故体質が古く利益も出なかった同和鉱業(現DOWAホールディングス)を体質改善し、高収益会社に変身させた現会長兼CEO(最高経営責任者)の吉川廣和氏が書いたこの本だ。
吉川氏は型破りな経営者だ。
本社を破壊した話が一番面白い。教科書的にやるなら、時間をかけて業務内容や社員の働き方を変えるが、DOWAにはその余裕がない。肥大化が問題なら物理的に小さくしてしまえ、といきなり本社の部門間にあった壁を取り払いスペースを6割に減らした。非難囂々であるが、強引に遣り通してしまう。一応理屈はある。壁がなくなれば、村社会はできにくくなる。そして壁の破壊は、改革への不退転の決意の表れを意味する。しかし、普通は実行できない話である。
またリードフレーム事業から撤退した話が大変興味深い。ようやく黒字化した事業だったが将来性がないので撤退することにした。ところが、当事者が海外の往生だけはどうしても続けさせてくれと言う。そこで吉川氏が、それならただ同然で譲るから、後は自分たちの資金だけで続けたらと提案すると、一転してそれではやれないと言う。要するに会社のカネならやれるが、自分のカネではやらないということで、その程度の覚悟なら続ける意味はないという話だ。身につまされるではないか。
ほかにも、本質を突いた話が盛りだくさんだ。例えば、「何十枚にもなるリポートを書けば、それで仕事をした気分になれる。しかし資料の作成は仕事ではない」。あるいはオフィスをフリーアドレスにしたり、肩書きを自由につけてよいとしたのは「管理職は人を管理するのではなく、仕事を管理するという考え方から」だそうだ。
吉川氏は「企業を改革するのに評論家はいらない、反対があってもやりきる勇気が必要だ」ということを身をもって実践した経営者だと思う。
もちろん、なぜDOWAがそこまでしなければならなかったか、あるいはどんな手順で大胆な改革を行ったかなどについてもきちんと描かれている。
私は本を読んでいて、気に入ったフレーズや気になること、あるいは経営のヒントを得ると、すぐ線を引く癖がある、読む本は年間100冊になると思うが、最近読んだ本の中では一番線が多かった。それだけ、考えさせられることの多い本である。企業改革を成し遂げたいと思っている経営者やミドルの方に一読を勧める。
(早稲田大ビジネススクール教授・内田和成)

レビュー
「日経情報ストラテジー」、2008年03月号
改革を阻む4つの壁を壊す

著者は、1884年創業の同和鉱業(現・DOWAホールディングス)が抱えた「組織の壁」「上下の壁」「社風・風土の壁」「心の壁」を問題視。1999年に専務に就任して以降、会長を務める現在に至るまで経営改革を断行し、経常利益を10倍の500億円に押し上げた。
本書には現実味の乏しい“スマートな”経営理論は登場しない。だが、人員削減などで苦労しながら自力で再建を果たした筆者の言葉は示唆に富む。例えば、本社の物理的な壁を破壊してフリーアドレス型オフィスに変えた。工場などに対する本社の官僚体質を払拭する狙いがあった。「工夫よりも形から入ったほうがスピードのある改革ができる」という言葉にも重みがある。(杉山)


カスタマーレビュー

強い信念を持ってこそ、やり遂げられる壁の破壊です。5
改革のターゲットとするところは経営的な観点から教科書にあるセオリーに近いものと思います。
しかしながら、ここで類いないところは、その強い意志による本気の実行力、つまり四の五の言わずに、先ずは「改革を形から入るところ」です。
企業の改革は、最近では経営コンサルタントといったその道のプロを雇ったり、改革プロジェクトチームなどを作って入念な調査・分析・検討を行って机上のスキーム作りから足を踏み入れるのでは、内容を揉みすぎたり、トップへのエスカレーションのプロセスで意外とシュリンクしてしまうことが多いようです。
コンサル等の外部が介入した改革は、まるで人ごとのようでビジネスを進める冷たさがあり、危機感も少ないように思います。
強い意志と勇気を持ったトップダウンで実力行使するほうがよっぽどダイレクトに直結したトップ命令であること、トップは有無を言わさない”本気”であることを周知させるには「形から入る」手法が得策だと思います。
それと「形から入る」の背景は、社員が一丸となってモチベーションをアップさせて、チームビルディングを奮起させるためのものであり、ここが最大のミソであると思います。
改善とは異なり、改革には痛みを伴いますが、最大限の気配りと共に社員と一緒に分かち合うことができてこそ、成し遂げられるミッションだということを強く感じました。
本書は、現場主義に立脚したエグゼクティブが実は社内に向けて発した声だと思いますが、これだけ生の声を上げたものは他にはなく、経営のエッセンスが凝縮されて読み応え十分です。

危機が変革型リーダーを生む5
見るからに意志の強そうな顔をした人である。東大ではマルクス、レーニン、サルトルに傾倒したそうだ。何回か退職を迷い、いまだに「我が人生これでよいのか?」と考えているらしい。文学青年が年を取ったような人が凄い変革を成し遂げるのだから、会社生活はなんとも面白い。
「破壊」とか「血路」とか、勇ましい言葉が沢山散りばめられているが、「涙ながらの抗議文」を受け取った後に撤退方針を覆す行動を起こすなど、この人は本来的には情の人であることが分かる。全体最適を推進する「理」と、相手の気持ちを読む「情」のバランスがこの人の魅力となって、リーダーシップを形成しているのだろう。最後に若者に宛てた「今の仕事をまずはしっかりやりぬくこと、自分の軸をぶれさせないこと」というメッセージが、なんとも味わい深い。

<伏魔殿>対策にどうぞ5
タイトルどおり、本社の壁をぶち抜いたり専用机を一人残らず取り上げたり・・と(果たして我々の職場にに応用が利くのか
分からないほど)凄いエピソードも満載です。
しかしながらその行動力に裏打ちされた鋭く、しかも透徹した彼の<視点>こそがこの本の真骨頂でしょう。

まず
“悪い本社からは、良い工場は生まれない” 
として、コストセンターの自覚を持たない本社(≒社内エリート)が如何に無益かつ有害かを繰返し説いています。
いわゆる名門企業には余計に顕著なのでしょうが、どの企業にせよ<改革>を叫ぶ場合には間違いなく「本社=立案(やらせる)側
/現場=実行(やらされる)側」の構図に陥るはずです。まずその構図から徹底して疑う事の重要さを説いているのは、小気味いい
ものです。
 <先ず隗より始めよ>はなかなか難しいのですが、それは精神論ではなくキャッシュを生む現実手段だと解せます。

また、読み通すと、個別の事業選別の内容や、その理論化抽象化といった“改革本”にはお決まりの内容が少ないのに気づきます。
 例えば
“儲かっているうちに合理化や事業撤退するのはなぜか?”
についても、
「沢山の退職金が払えて、その退職金を元手に次の人生を模索できるだろうから」
という非常に温情的な理由付けがされています。
しかしこれは単なる浪花節の類ではなく、企業の存在意義や仕事観について極めて明快でドライな見方をしているからに他なら
ないと感じます。
 「会社は夢や生きがいなんてものは与えられない。それが出来る経営者は教導者かペテン師のどちらかだろう」
とする吉川氏は、徹底した現実主義者なのでしょう。