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円周率を計算した男 (新人物文庫)

円周率を計算した男 (新人物文庫)
By 鳴海 風

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  • 発売日: 2009-05-11
  • 版型: 文庫
  • 381 ページ

エディターレビュー

内容紹介
鎖国下の江戸時代、日本でも全く独自の方法で円周率の計算に躍起になった男たちがいた――算聖とうたわれた師関孝和との葛藤を経つつ、ついに円周率の公式を明らかにした天才算術家建部賢弘の苦闘の生涯……。

歴史文学賞受賞・日本数学会出版賞受賞の表題作「円周率を計算した男」、大酒飲みの奇才算術家に振り回される平野忠兵衛夫婦の大晦日の夜を描いた「初夢」ほか、「空出」「算子塚」「風狂算法」「やぶつばきの降り敷く」の六篇を収録。

和算の世界に材をとって、時代小説に新たな視点を提起した話題作、ついに文庫で登場。

内容(「BOOK」データベースより)
鎖国下の江戸時代、日本でも全く独自の方法で円周率の計算に躍起になった男たちがいた―算聖とうたわれた師関孝和との葛藤を経つつ、ついに円周率の公式を明らかにした天才算術家建部賢弘の苦闘の生涯…。歴史文学賞受賞・日本数学会出版賞受賞の表題作「円周率を計算した男」、大酒飲みの奇才算術家に振り回される平野忠兵衛夫婦の大晦日の夜を描いた「初夢」ほか、「空出」「算子塚」「風狂算法」「やぶつばきの降り敷く」の六篇を収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鳴海 風
1953年、新潟県生まれ。秋田高校から東北大学へ進み、機械工学専攻修了。1980年、日本電装(現デンソー)入社。1990年、第20回池内祥三文学奨励賞受賞。1992年、「円周率を計算した男」で第16回歴史文学賞を受賞。2006年、日本数学会出版賞受賞。日本文芸家協会会員・財団法人新鷹会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

計算された楽しみがあります5
実は以前に単行本で読みましたが,今回文庫で再度楽しみました.私はエンジニアなので和算の解説としても楽しく読めました.おそらく著者も調査や執筆の過程で和算そのものもかなり深く勉強したものと思います.そうした努力が伺えるような,真面目な書きっぷりに好感が持てます.なお著者の他の作品では,怒涛逆巻くも(上下)が好きですね.海外に出て世界を知りそこで得た知識を発展させていく,まさにわが国技術者の原点があるような気がします.

「数学=美」を極めようとした男達の一徹な人生5
関孝和から始まる江戸時代の和算の歴史を題材にして、滋味豊かな人間模様を描いた短編集。何より、「数学=美」と言う点を作者が理解しているのが嬉しい。

この美を頑固なまでに追求したのが、「円周率を計算した男」の建部賢弘であり、「算子塚」の会田安明である。私は円周率を求めたのも関孝和だと思い込んでいた(帰納的には求めた)が、円周率を計算するオイラー式を求めたのは建部だったのだ。こうした知識を作者は多く提供してくれる。しかも、「算術を実学(歴法)に生かせ」と言う師孝和の言葉に反発するように、飽くまで円理に拘った建部の人生が見事に描き出されている。そして、和算と言うのは、関孝和を始祖として、江戸時代、幅広い層に広まった事が良く書き込まれいる。「空出」における久留米藩主(!)も算術書を出版しているのだ。また、算術一辺倒ではなく、「初夢」では、老境を迎え、銀座役人としての任務と算術の追求との板挟みに会う主人公を登場させ、糟糠の妻との心温まる愛情物語を映し出している。「算子塚」の一徹者会田は最上流の始祖だが、新しい流派を興したのも関流が閉鎖的だったからとの由。いつの世も人は派閥を作り、争う。本作は関流の藤田貞資等と会田の意地の張り合いが見所だが、お互い驚く数の著書を書く。その序文で相手を痛罵する様は人間臭さを感じさせる。全ての著作をフォローしている作者の調査も立派。そして、全編を貫く苦い友情物語と秘恋が胸を打つ。「風狂算法」は後に遊歴算家となる主人公の姿を松尾芭蕉に重ねた風雅な作品を狙ったものだが、色付けを狙った恋愛模様が裏目に出た感じ。

各編は時代順に配置され、和算の歴史が辿れると共に、ある編での主要登場人物が後続の編でも顔を出す等、まさに数学的緻密さで構成された珠玉の連作短編集。

「初夢」が一番良かった5
江戸時代の算学、算術者に題をとった、和算時代小説というジャンルを切り開いた異色の時代小説。

作者自身がエンジニアのためか、和算に対する理解がきちんと数学によって行き届いており、時代小説の単なる小道具や背景になっていないところが好ましい。
数学自身の美しさ、完璧さを求める心と、実務として役立たせてこその学問ではないかという世俗的な(そしてもっともな)疑問、身過ぎ世過ぎ、食い扶持を稼ぐ手段に手段に過ぎないと卑下する屈折と、好きな算術で身を立てることができるのならと何という幸せという夢、技術者なら誰もが感じるこの二律背反な感情を、賢しらな結論をつけずに登場人物の生き様として描いているところにとても共感できる。
自分もエンジニアだから。

連作短編小説集だが、各小説の登場人物やゆかりの人物が次の作品の脇役としてちらりと登場することが、不思議な感覚をもたらす。
こうしたつながりは、自分が今仕事で使う算術が、明治時代に西洋からもたらされた輸入された外来の学問なのではなく、江戸時代から連綿と続く文化によってはぐくまれた土壌から育ったものであり、未来に続くそのつながりの中に自分もいるのだという奇妙な感覚を与えてくれる。
 各編にまたがって登場する脇役のように、自分も、次の時代に活躍する逸材の産婆役、導き手を努めることができたなら、と読後そう願う。