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虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)

虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)
By 火坂 雅志

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  • 発売日: 2007-09-01
  • 版型: 文庫
  • 699 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
戦国動乱の最中、鋭い眼で世を見据える青年、藤堂高虎は、巨躯を生かした槍働きで立身出世の夢を抱いていた。自らの実力に正当な評価を求め主を転々とする高虎だったが、運命の主君羽柴秀吉の弟・秀長に見出される。算用や築城術などを秀長に学び、その名声を徐々に高めていく高虎。だが秀吉の下で頭角を現わす宿敵・石田三成がその行く手を阻む…。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
火坂 雅志
1956年、新潟生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て88年『花月秘拳行』でデビュー。99年、『全宗』で吉川英治文学新人賞の候補となる。2009年のNHK大河ドラマ原作に『天地人』が選ばれるなど、今最も注目を集めている小説家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

戦国時代に対する作者の世界観や文体3
昔の史家の個人的な解釈によってあまり好ましい評価を得られていなかった藤堂高虎を好意的に取り上げて頂いた事はありがたい事だと思います。

若い頃に憧れを抱いた女性を守る事を出来なかった高虎が、
愛する女性と一緒になる為には地位も経済的にも相応に充実していなければならないという事を学び、
それを信条として切磋琢磨して成長していく若き日々から
次第に、単なる武の功績ではなく建築・土木技術の実績をその時々の権力者に認められながら有力大名となってゆくその生涯を描いた物語です。

周囲に認められ出世するにしたがって対立者が出てくるのは避けては通れない事で、
石田三成との駆け引きには読む方も熱が入ります。

個人的に読んでいて展開に胸が躍った場面は、
目をかけてもらった信頼する羽柴秀長が病死し、後継者・秀保の家臣となるものの、
その秀保も石田三成の謀略によって亡き者にされて主を失ってしまい途方にくれる一連の場面に関しては、流れるような展開で良かったです。


しかし、全体としては、
「〜年にはこういう戦いがあった。ここでは例の黒漆塗唐冠形兜を身に付けた高虎が奮起して活躍した。」というように
ただの年代記のようになってしまっている部分がままある事も否めません。


また、作家というのは文体、即ち言葉・言い回しや本人なりに解釈した世界観を描いてこそ、それに対して読者は共感したりまたはその反対であったりするのではないか、
作品を通してその作家の頭の中を覗いたり、
その人の人間性から滲み出る、いわば染み付いた「クセ」のようなものを見つけ、感じ取る事が読者の愉しみなのではないかと個人的に考えています。

そういう点では、言葉の選択も世界観も全体的に無難に無難にしすぎてしまっているようで、正直あまり面白みは感じませんでした。


この作品の帯には
「『誰々(巨匠とされる作家名)』・『誰々』・『誰々』達に迫る!藤堂高虎の生涯を描いた力作!」のような感じで本作品の謳い文句が書いてあったのですが、
誰かに「迫る」のであればそれは皆自由であるし、なにも巨匠に「並ぶ」とは言っていないので確かにそれなら語弊は無いな、と妙に納得してしまいました。

苦労人の藤堂高虎から見える、働き方の原点5
豊臣家の名補佐役にして、経済のマネージメントが抜群であった羽柴秀長。
その下で家老を勤めた高虎が、上巻の最大の見せ所である。

槍働きだけの時代から、土木や経営学が、これからの時代にもっとも必要不可欠になる!という流れは、今の時代にとても重要な示唆を示している。また、主従の関係における人との接し方や生き方なども参考になります。

後半は、現場からの叩き上げのため、人が何で動くかの本質を理解し経営する高虎。
これに比べ、成長した中で出世してきた官僚型の石田三成。
この確執を描く部分が、日本人の働き方と生き方に類似する点が多く、「経営本」としも良い。どちらが正しいという見方ではない点が評価できる。

最後の部分は、高虎が「倒産」して、再起を図る部分であるが、高虎の本質が見える部分であり、どうして徳川家康に重宝されたかわかる部分である。

藤堂高虎5
歴史の中心人物ではなかった藤堂高虎という一武将をこれだけの大作に仕上げた作品はかつてないと言ってよい。読むまではこれほど偉大な築城家とは知りませんでした。武勇を描いた活躍は他の小説でも散見されるが本人をこれほど見事に描いた作品はすばらしい。一気に読ましてもらいました。歴史小説126作品目の感想。