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半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)
By 村上 龍

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  • 発売日: 2007-08
  • 版型: 文庫
  • 591 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。いまや九州は反乱軍の占領下となった。逮捕、拷問、粛清、裏切り、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋―。絶望と希望が交錯する中、若者たちの決死の抵抗が始まる。現実を凌駕する想像力と、緻密な描写で迫る聖戦のすべて。各紙誌で絶賛を浴びた、野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作品。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
村上 龍
1952年長崎県生まれ。76年「限りなく透明に近いブルー」で第七五回芥川賞受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文芸新人賞、「村上龍映画小説集」で平林たい子賞を受賞。『トパーズ』『KYOKO』で映画監督も務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

イイッス!5
先ほどようやく読み終えました。いや〜面白かった。

他のレビューもチラッと見ましたが結構辛口の批評も多いですね〜どこがそんなに問題なのか良く分かりませんが。批判的に見ることができないのは、私が自分の頭で社会的にリアルにシミュレーションする能力が乏しい、龍氏のファンなので心情的に氏に擦り寄っているだけ、というのはあると思います。

でも面白かったですね〜個人的にはやはり。北朝鮮の軍人たちが作戦会議の様なものを経て攻めてくるところは実にドキドキワクワクでした。そういう言い方は不謹慎なのかもしれませんが。また、普通の人が日常の中で見過ごしがちな問題、特に日本人が抱える問題で、あまり人が言わないことをズバリと指摘する、それも評論家のような難しい言い方ではなくて、というところがさすが人気小説家の技量だな、と思いました。あと随所に出てくる人間観察も鋭い!と思いました。私が印象に残っているのは、自分にとって重要でない人間に対してだけ威張る首相とか、最後の方に登場するたくましい主婦たちの描写です。首相については、そういう人いるんだよな〜という感じで、主婦については、女性の強さをたたえられるっていいな〜という感想でした。

でも全体を通して意外だな〜と思ったのは、激しい戦闘シーンが短いことです。結構大激戦みたいなのが出てくるんだろうな〜と思ったら、居座ろうとする朝鮮軍に対して周りがどう対処しようとするか、というのがメインでしたね。そういうのは返ってリアルな感じがするとは思いますけどね。朝鮮軍人の心理描写も見事だと思います。朝鮮軍の人が自分の育った過酷な境遇を思い出す場面では、思わず涙がこみ上げそうになったときもありました。私自身、田舎の中流家庭で育ったということもあり、あまり開けていない環境や貧しさというものに対して少しは想像ができる気がします。

しかし、最初の農民の殺人や、福岡の犯罪人に対する拷問など、やはり描写が残酷というかグロいというか、この人はこんなにグロいシーンを書き続けていい加減神経が参らないのかな、と思ったこともありました。ただこういう状況ではそれぐらいの方がリアル、また小説に求められる刺激、ということなのかもしれません。

また、イシハラたち(フリーター、プータローですかね?)の間のやり取りもアホラシイものが多い気がして、私は個人的にはこういう変わったキャラは興味がそそられるんですが、世間の読者に受け入れられるのかな?という気がしたこともありました。

あとすごく気になったのは福岡人の博多弁です。これは細かいことかもしれませんが。ハードカバーの方のレビューで他の人も書いてるかな? 龍氏は長崎出身なのに意外だな?と思ったんですが、いまバリバリの博多弁は、福岡市の若い人はあまり使いません。語尾にちょっと特徴があるくらいで、会話にはあまり方言は出てきません。おそらく40代くらいの人までそうだと思います。昔ながらの福岡弁でしゃべる人は結構年配の人か、福岡でも市から離れた地方の人だと思います。会話がものすごい博多弁なので心の中でちょっと笑ってしまいました。でもこれは地方感を出すための計算なんでしょうかね?

でもイシハラたちの集団が軍と戦う流れはイイな〜と思いましたけどね。確かにリアルでない部分があるかもしれませんが。良質なハリウッド映画のアクションを見ているようなワクワク感がありました。少数の人、マイノリティの人が大きなものに立ち向かう、という龍氏の中にあるロマンティシズムなんだろうな〜と勝手に解釈しています。西日本新聞の記者が優秀、という場面にもそういうのがあるような気がしました。

コツを教えましょう5
上巻の途中から一気に読み終えた。
上巻のレビューでは、この奇妙な若者たちにちょうど武器とであるところだったから、
てっきり彼らが単純に北朝鮮からの「敵」に立ち向かうんだと思った。ゲリラ的にね。
ま、おおよそとしてそれは当たってなくもなかったが、しかし、その中身ははるかに
緻密でもっともっと物語性に富むもんだった。
いやぁ、堪能した。面白かった。

ただし、私がこの下巻を(いくら読むのが速いとは言え)一日ですきっと読んでしまっ
たにはわけがある。
それはですね、超読み飛ばしです(すんません、村上さん)。
どうもレビュアの皆さんによると、この物量、この活字量などなどにかなり悪戦苦闘
されたよう。
でもどうでしょう。もちろん物語としての伏線を読み飛ばしてしまう恐れはあります。
とは言え、たった10日程度で起った出来事なんです。
一気呵成にこの大きな政治的、社会的流れに乗るのは細部にこだわっててもしょうが
ない。

北朝鮮の兵士達の名がカタカナで出てきます。立ち向かう若者たちも皆カタカナの名
です。覚えられません(漢字でないとなんと記憶に残らないことか!)。
いいんです、もう、少々区別がつかなくとも。
色男のTVに出るようになった兵士。恐ろしい威圧感の偉いさん。
その程度の区別で、もうどんどん読み飛ばしましょう。
過去のいきさつ。人格形成、家族との確執。これも、何と言うかどんどん読み飛ばし
ましょう。ばくっと、あぁ、いろいろ問題抱えてここまで来たのね、でいいのです。
大事なことは、前に進むこと。それも駆け足で。物語の時間の流れのように。
きっと、読み終えた後、あぁ、と満足感を覚える。
で、きっときっと、また読み返したくなる。

初めて歩いた道は長かったのに、帰りは、あれっ?!って近いはず。
そう、この作品もそうです。上下で1200ページなんてそんな大部でもない。
それを多い、すごく長い、と感じるのはこのカタカナ名のせい、が大きい。
そして、それぞれの人物の今を語るのに、その人物の過去をフラッシュバックのよう
に入れる点が大きい。
作者にゃ悪いが、一回目の読みでは、これらの部分を適当に(ゴメン)読み飛ばそう。
そして一気にクライマックスまでいってしまおう。

あぁ、なんて面白い作品なんだ。
ささ、2回目、今度は「道の長さ」を知っているから、安心して読むぞ読むぞ。

リアルな絶望感と未来への希望4
この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。

この下巻は何も有効な対策が取れない日本の政府やメディア、そして諦めに支配された風潮に代わり、社会のはみ出しモノ達が北朝鮮のテロリスト達に対し、必死の抵抗を行うという話がメイン。前述したように上巻とのスタイルが少し違う為に、期待を裏切られる読者も多いかと思うのだけれど、一貫した村上龍の意志は受け継がれているし、本来彼の小説はこういった壮大なスケールをもった物語こそが持ち味だと思うので、僕自身はこういうやり方は上手くはまったというように思えた。ただ、あまりにも話に無理がありすぎる部分も多い為、以前の名作に比べると若干物語の信憑性が薄いと感じる部分があった事も否めなかった。

物語重視故に、上巻に比べると、この下巻は魅力的な人物が多数現れる。北朝鮮軍のブレイン達、占領された福岡の果敢な人間達、そしてはみ出しモノであるイシハラグループのメンバー達。緻密な人間描写と彼らの生き様、状況が変わるにつれて変化する心理描写等、とてもスリリングで読み応えがある。傍目では優秀な人間でも、色々な葛藤や驚き、そして弱さを持っていて、そういったものに対し果敢に挑んでいく姿は、やはり美しいし、僕自身力を与えられる部分でもある。ラストがあまりにも綺麗に決まりすぎていて、何処か矛盾を感じてしまうのが勿体無いのだが、あまりにもリアルで残酷な現状を暴き出してしまった上巻に対して、未来への希望というものを村上龍自身、最後に示したかったのではないのだろうか?そんな風にも思えた。