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身の上話

身の上話
By 佐藤正午

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  • 発売日: 2009-07-18
  • 版型: 単行本(ソフトカバー)
  • 373 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
この主人公の流され方に、自分は違うと言い切れますか。人間・人生の不可思議をとことん突きつめる、著者の新たな代表作の誕生。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
佐藤 正午
1955年、佐世保市生まれ、在住。’83年、『永遠の1/2』で第七回すばる文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

面白い!!それにしても、こんな展開になるとは、、、(笑)。5
佐藤正午の新作。世評高く当レビュー上でも好意を以て迎えられています。7年振りの前々作「5」は凄く面白かったものの、前作「アンダーリポート」は今ひとつの出来。果たして今作はどうだったのか?
全く予備知識を入れぬまま購入、読み始めましたが、これがかなり人を食ったピカレスクな内容、しかし実に面白いのです。
どちらかと言えば目立たない地味な女性の、うちに秘めた感情の高まりが衝動的なアバンチュールを呼び、甚だ身勝手と思える行動の果てに、濡れ手に泡的な奇跡を掴むが、、、。
代表作「ジャンプ」が、ある女性の失踪の動機、謎をミステリー仕立てで追う展開なら、こちらは、数奇な運命を辿った女性の後日談から過去に遡って何が起こったのか解明していく。言わば、もうひとつの「ジャンプ」的物語。ただし、読了感はまるで違います。
底知れぬ人間の欲、瞬時に顔を出すエゴ、気紛れな衝動の代償、窮余の事態での自己中的防衛心、そして、人間の持つ根源的な負の、それ故に剥きだす人間的な本性を、ブラックな恐怖と笑いを内在させながら進みます。
その精緻な文章力とサイコ・スリラーの如き心理描写の妙。やや唐突な決着の付け方ですが、主人公の夫の講談調な告白による語り口に隠された意味が、「身の上話」などと言う凡庸なタイトル名と見事に連環するラストまで刺激的な魅力を放つ傑作。
「Y」、「永遠の1/2」、「ジャンプ」、「5」に加え、またひとつ著者の代表作が生まれた事を実感します。文句なしにお薦め。

「超大作」でなくてもこの余韻5
久々に読みごたえのある小説でした。
前半はどちらかと言うとコメディーっぽい展開。仕事中に近くの歯医者へ外出したはずの主人公が、同僚に頼まれた宝くじを買ったままフラリと不倫相手と一緒に東京行きの飛行機に同乗し“失踪”。この主人公が郷里の友人と電話で会話するシーンでの、必死に説得する同僚に対して能天気な受答えを繰り返す主人公のやり取りなどは情景が目に浮かぶようで笑えます。
ところがある事件が起こったところから、この小説はそれまでとは全く別の表情を見せ始めます。
その展開の素早さと乱気流に乗ったような激しさに、読む側はグイグイ引っ張られてしまいます。
この話のもって行き方は見事。
「この物語は最終的にどういう着陸の仕方をするんだろうか?」と誰もが思うはずです。大多数の読者は似たような結末を予想しながらこの物語を読み進めるものと思いますが、最後にさらに予想を覆す展開が待っています。
この小説は根無し草のように流され易い今どきの若者の空気を描きつつも実は核心はそこではなく、虚空さや人間の怖さを表現したものであり、その中で数回登場する“祈り”というシーンに象徴される「希望」のようなものを見事にブレンドさせた奥深い作品だと思います。含蓄があります。
後半になればなるほど重たくなって行きますが、読後はいろんな事を考えさせられる小説です。
“超大作”でなくてもこの余韻を残せる作品は稀中の稀。

不思議な敬虔さにつつまれる5
主人公は「柳に風〜」と評される書店員、ミチル、23歳。
昼休み「歯医者に行く」と言い置いて
不倫相手の出版社営業が帰京するのを見送り
そのまま(サンダル履きのまま)男とふらふらと東京まで行ってしまう。
頼まれた『お使いの宝くじ』とともに。

その後も成り行き任せ行き当たりばったりの日々をおくる彼女を同居させる
これまたバカみたいに気のいい郷里の後輩、その彼女らしき女。
語り手の独白でつづられる物語の始まりはお楽しみを後で後で...というふうに語られます。
このあたり、ちょっとしんどいですが
我慢して読み進めるだけの価値は十分ありますから、ここは辛抱して下さい。

加速しだしたらもう止まらず
次々起きる「異常な事件」に慣れたころ
用意された予測もつかない急展開。
ついついはまり込んだ事態に翻弄される人間の弱さと愚かさの狭間で
ミチルを通して語られる教会でひたすら祈る母の話は印象的。
物語を照らす細い光のように一貫して現れ、そして微かな希望のうちに終結する。
緻密な構成と作者の精神性を見せつける見事なラスト。