グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)
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商品の詳細
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- 発売日: 2009-09-08
- 版型: 文庫
- 256 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
妻の不貞に気づいた貴族の起こす猟奇的な事件を描いた表題作、黄金に取り憑かれた男の生涯を追う「ファチーノ・カーネ」、旅先で意気投合した男の遺品を恋人に届ける「ことづて」など、創作の才が横溢する短編集。ひとつひとつの物語が光源となって人間社会を照らし出す。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
バルザック,オノレ・ド
1799‐1850。フランスの小説家。トゥール生まれ。17歳で代訴人の事務所に見習いとして入り、パリ大学法学部に通う。このころから文学者を志し、20歳のころパリ市内の屋根裏部屋に住んで小説を執筆し始める。人間を観察し、その心理を精密に描きつつ、社会全体をも映し出す長短編小説を次々に生み出し、巨大な作品群によってフランス社会そのものを表す「人間喜劇」を形成していく。旺盛な執筆活動の他に、年上の貴婦人たちと数々の浮き名を流したことでも知られる
宮下 志朗
1947年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。フランス文学者。ラブレー、モンテーニュ、ゾラ、バルザックなど、幅広いフランス文学を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
人間観察力と共に、理知的な面でも優れている傑作短編集
「ゴリオ爺さん」、「谷間の百合」等で著名な作者の短編集。趣向の異なる五編を収めている。歴史的人物や自他の作品中の登場人物を、作中で言及している点が目を引いた。
タイトル作「グランド・ブルテーシュ奇譚」は作者が寄宿舎生活を送ったヴァンドームを舞台に、寂れた豪邸(グランド・ブルテーシュ館)に起こった過去の悲劇を描いた作品。館で亡くなった富豪のメレ夫人は放蕩な貴族の夫と暮らしていたが、夫と離別した後は誰も寄せ付けず晩年を送り、50年間は館をそのままの状態で保存せよとの風変わりな遺言を残す。語り手のオラースは荒廃した館と館が醸し出す異様な雰囲気に興味を持ち、その謎を探るのだが...。背景にあるキリスト教とナポレオン戦争。そして、メレ夫妻は勿論、公証人、小間使いの娘、宿屋の女将等が活写され、"人間を描くのが巧いなあ"とつくづく思わせる。「ことづて」は事故で瀕死状態の青年に、密通している伯爵夫人への"ことづて"を頼まれた主人公が夫人に遭いに行くと言う小品だが、夫人の深い悲しみと夫の喜劇性の対比の妙、自身も恋に落ちている主人公と夫人との心の交情で読ませる。"ことづて"の恋文の束の他に、青年の"髪の毛"を届ける辺り巧い。「ファチーノ・カーネ」はヴェネチィア出身の元貴族の盲目の老人の数奇な人生を詩情豊かに綴った幻想的作品。「マダム・フィルミアーニ」は面白い構成の作品。様々な階級・主義の立場の人々のフィルミアーニ夫人評を羅列して、各々を皮肉ると共に、天使とも悪女とも取れるフィルミアーニ夫人の実像を曖昧模糊とさせ、夫人に堕落させられたと言われる青年オクターヴとの真の関係を最後に明かすと言う技巧が光る。「書籍業の現状について」は題名通りのエッセイ。
良く言われる事だが、人間観察力の鋭さと共に、理知的な面でも優れている点を痛感した。訳文も分かり易く、巻末の年譜も親切。バルザック入門に好適な傑作短編集。
今も昔も変わらないさまざまな人間の性を描き上げる文豪の味わい深い短編集。
19世紀フランスの偉大な文豪バルザックの壮大な名著「人間喜劇」から味わい深い四編の短編を選び併せて評論一編を付した秀作選集。本書を読んで感じたのは著者が普遍的な人間心理の洞察力に長けていて、仰々しくなく飾り気のない文体で淡々と描いているという印象です。話を誇張せずに事実をさらりと伝える事で却って読み手の心に沁みる効果を上げていると言えるでしょう。
『グランド・ブルテーシュ奇譚』かつて著者自身が寄宿舎暮らしを経験したヴァンドームの町外れに建つ荒れ果てた屋敷グランド・ブルテーシュ館に興味を抱いた医師が、公証人や宿屋の女将や嘗ての小間使い達から少しずつ話を聞く。それは妻の不貞を知った貴族の夫があくまでも嘘を貫こうとする態度を逆手に取って懲らしめる陰惨な物語なのでした。激しい憎悪に突き動かされた為に人間が為し得る残酷な行為に慄然たる思いが込み上げます。『ことづて』旅の途中で知り合った好青年が不慮の事故で亡くなり、彼の願いを聞き入れ生前恋人だった夫人に遺品を届ける話。前の話とは違って夫である伯爵が気弱な性格だった為か相手が既に故人であった為か寛大であった事が心を和ませてくれて、夫人の流した清らかな真実の涙に胸を打たれました。『ファチーノ・カーネ』様々な人々の人生の物語に触れる事を気晴らしにする私が、ある盲人の楽士の老人から黄金に取り憑かれて身を持ち崩した壮絶な半生の物語を聞く。どんな障害に遭っても諦めず尚血気盛んな老人の姿に勇気を貰い励まされます。『マダム・フィルミアーニ』十七通りの話を聞いても実体を判じ切れない謎の人妻フィルミアーニ夫人に恋をしたオクターブ青年の物語。この物語が向かう先に喜劇悲劇の何れが待つと考えるのかによって楽天家か悲観家か読み手の性格が窺えそうです。
今も昔も変わらないさまざまな人間の性を描き上げる文豪の味わい深い短編集をゆったりとした気持ちで存分にお楽しみ下さい。




