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十二夜 (光文社古典新訳文庫)

十二夜 (光文社古典新訳文庫)
By シェイクスピア

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  • 発売日: 2007-11-08
  • 版型: 文庫
  • 245 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
男に変装した若く美しいヴァイオラは、セザーリオと名乗ってある国の領主に仕えていた。その領主に魅せられたヴァイオラだが、領主は、伯爵家の令嬢で当主のオリヴィアに恋焦がれている。ところが、こんどはオリヴィアが男装のヴァイオラにひと目惚れ、大混乱が巻き起こって…。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
シェイクスピア,ウィリアム
1564‐1616。イギリスの劇作家、詩人。若くして故郷を出、ロンドンで役者となった後、座付作者として活躍。『ハムレット』『オセロウ』『リア王』『マクベス』の四大悲劇など、37編の劇を残し、エリザベス時代を代表するばかりか、時代と国境を超えて、世界文学史上最大の作家の一人に数えられている

安西 徹雄
1933年生まれ。上智大学名誉教授。また、「演劇集団“円”」を拠点に、シェイクスピアをはじめ、多くの芝居の翻訳・上演にたずさわってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

科白の躍動感がいまいち4
『十二夜』は、物語も楽しいが、言葉の詩的な美しさという点で、シェイクスピアの最高傑作と言ってもよい。吉田健一は「登場人物の対話がどれだけ切実な調子を帯びても、それが美しい歌が歌はれるのを妨げない」と称えている。従来の名訳に加えて、安西氏の新訳が現れたのは嬉しいが、科白に躍動感がやや不足している。たとえば第五幕一場、ヒロインのヴァイオラが最後に双子の兄に会える感動の場面を既訳と比べよう。「もし、私たち二人の歓びの邪魔として、最後に一つ残っているのが、私のこの、かりそめの男の姿だけであるなら、場所も、時間も、出来事も、すべてみごとに一致して、私がヴァイオラであることの、最後の駄目押しの証明として、この町の、ある船長の家へ案内しましょう」(安西訳)。「もしも私たち二人の幸福を妨げているのが、女の身にまとったこの男の姿だけであるなら、抱きしめるのはもう少し待って。いますぐ、時も所も運命も声を一つにして叫ぶでしょう、私がヴァイオラであると。・・・」(小田島訳)。安西訳が、原文のDo not embrace meを訳し落としたのも問題だが、言葉の跳ねるような楽しさが乏しいのでは。

気軽に読める古典として5
読んで驚くのが、掛け合いの面白さ。
以前、舞台中継をテレビで見て、現代風にせりふを書き換えていると思っていたら
本で読んで驚きましたが、久しぶりに読み返した今回も同様の感想です。
現代にも通じるように翻訳で工夫がされているのかもしれませんが、読めば
掛け合い漫才のような台詞回しに驚くでしょう。
古典といっても肩肘張らずに気軽に楽しめる作品です。

そして悲劇時代の足音が…4
イリリアの領主オーシーノが熱を上げているのは、伯爵家の末裔のオリヴィア。しかし、最近兄と死別してしまった彼女は悲しみにくれ、彼の求婚など眼中にない。そんなおり、もう一つのほのかな片思いも始まっていた。オーシーノの忠実な家来セザーリオは実は、双子の兄を船の難破で失った男装の麗人ヴァイオラだったのだ…。

シェイクスピアの俗に言う「喜劇時代」最後を飾るのは、男装の麗人が巻き起こすどたばた劇だ。日本では手塚治虫のマンガ『リボンの騎士』で描かれて以降、魅力的な男装美少女がたくさん生み出されているが、いつの時代も男装のキャラクターは男女を問わず魅了するものなのだろうか。しかし、今作品の劇中を埋め尽くすのは、オリヴィアお抱えの道化フェステや叔父のトービー、アンドルーらの演じるとんち合戦だ。

それにしても評者だけなのだろうか、この作品はほかのシェイクスピアの恋愛劇にくらべ、人物の感情の移り変わりがやや拙速すぎてはいやしないだろうか。いや、もちろん「惚れ草」や「妖精」が登場する時点でリアリティもへったくれもないだろという話ではあるが、例えばオリヴィアを長く想い続けていたはずのオーシーノが、なぜあんなにも簡単に心変わりできたのか。また姿形は同じでも、双子だからといって対象を即座にすげ替えられるのだろうか。そこの葛藤がなさ過ぎるような気がした。

解題で訳者の安西氏が書くとおり、喜劇に分類されはするものの作品は終盤、どこか陰のある終わり方をする。直前には大作「ハムレット」を書き上げた彼は、これをもってついに怒濤の悲劇時代に突入する。そこでは歓喜の叫びは断末魔に、失恋の涙は傷口から流れる鮮血に変わっていく…。