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半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)
By 岡本 綺堂

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  • 発売日: 2001-11
  • 版型: 文庫
  • 453 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
岡っ引上がりの半七老人が、若い新聞記者を相手に昔話を語る。十九歳のとき、『石灯篭』事件で初手柄をあげ、以後、二十六年間の岡っ引稼業での数々の功名談を、江戸の世態・風俗を織りまぜて描く、捕物帳の元祖!「お文の魂」「半鐘の怪」「山祝いの夜」等十四編収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
岡本 綺堂
1872年~1939年。推理、怪談小説のほか、新歌舞伎運動の代表的な劇作家としても有名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

郷愁を呼ぶ江戸情調5
文章も平易で、あっさりした印象でありながら、何度読み返しても味わい深く、その江戸情緒が郷愁を呼ぶ。

昔、小林信彦さんがフォード監督の「リバテイバランスを撃った男」の映画評で「額縁に入った昔の絵」という表現を使われていたが、この作品もまさにそうである。半七老人が語る事件は彼の若き日の回想であり、それを聞いた当時駆け出しの新聞記者であった筆者が、往時の老人との交友を懐かしく回顧しながら記すという二重構造が郷愁を呼ぶ仕組だろう。

このシリーズを読んだ後に読むと、あの「鬼平犯科帖」なども、ひどくあざとい物語に感じられてしまう。

第一作の「お文の魂」で記される「半七はだれに対しても親切な男であった」という主人公のさわやかな印象がシリーズ全編を通じて感じられ、それも心地良い。

捕物帳の原点5
舞台は明治。新聞記者の「わたし」が元岡っ引の半七老人に昔あつかった面白い事件を聞かせてもらう。そして、舞台が転換して江戸時代に。半七が主人公の捕物帳が始まる。そして、明治に戻り、老人から顛末を聞く。

これが本作の基本的なスタイルだ。作者である岡本綺堂が生きていた時代はまだ「江戸」が色濃く残っていたのであろう。江戸の描写が非常にリアルだ。コナン・ドイルの影響も強く、エンターテイメント性にも優れる。

不粋な評価はやめよう。ただ一言、粋だねぇ。

江戸の不思議の空気に触れながら、謎解きの妙が堪能できるシリーズ5
 「半七捕物帳」の第1作「お文の魂」が初めて掲載されたのが大正六年(1917年)ですから、今からざっと90年近く前に執筆されたことになります。江戸幕末に岡っ引として活躍した神田三河町の半七親分が、その手柄話を、明治30年頃に「わたし」に語って聞かせる。その事件の顛末を、「わたし」がメモ帳に記して世に発表したのがそれぞれの話であると、そうした聞き語り形式の連作短編集です。

 淡々と抑えた綺堂の筆致がまず素晴らしい。そして、行間から立ち上ってくる江戸の風情の粋なこと。ぼおっと霞むような光と闇の世界がそこには広がっていて、ふっとなつかしい気持ちにさえなります。雅趣に富んだ話の味わいがいいんですねぇ。江戸時代にタイムトラベルしていたみたいな、そんなここ数日間でした。

 本巻で一番気に入った話は、「奥女中」でした。
 茶店を出している母親が、娘の身に最近妙なことが起きて心配であると、半七親分にその謎を調べてくれるよう頼みに来ます。お蝶という美しい娘が時々に姿を隠す不思議の話が、母親から半七親分に語られていきます。怪しい夢のような話に耳を傾けていると、やがて話に動きがあって、そこからすっと解決の光が射し込んでくる。不可解な謎に筋道がついて、そこからさらに、静かな調べを湛えた話が流れて行く。しみじみと心に染みてくる話の風情に魅了されました。

 江戸幕末の空気に触れながら、半七親分や子分とともに江戸の町をめぐる楽しみ。江戸の不思議や怪異の雰囲気に浸りつつ、推理小説の謎とからくりの趣向が堪能できる面白さ。そんな妙味を湛えた岡本綺堂の「半七捕物帳」のシリーズ。いいですよ!