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ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫

ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫
By 澁澤 龍彦

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  • 発売日: 1998-04
  • 版型: 文庫
  • 256 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
ねむれる森の美女さながら永いねむりについてしまった美しく幼ない姫に魅入られるかのごとく数奇な運命をたどる腹違いのひとりの童子―中世の京の都を舞台にくり広げられる男と女の不可思議な生涯を物語る「ねむり姫」ほか、実母の生んだ牝狐を愛し命を奪われてしまう男の物語「狐媚記」など、古今東西の典籍を下敷きに構築されたあやかしの物語六篇。


カスタマーレビュー

六つの美しい珠を収めた宝石箱のような作品集5
 平安時代から江戸時代にかけての妖異譚が六つ。「ねむり姫」「狐媚記」「ぼろんじ」「夢ちがえ」「画美人」「きらら姫」。澁澤龍彦の小説のなかでも殊に魅力的な『高丘親王航海記』(1987)や短篇集『うつろ舟』(1986)に先立って1982年〜1983年(昭和58年)にかけて書かれた、これも実に魅力的な作品集。
 「ねむり姫」の、ひたひたと満ちてくる“水”。「狐媚記」の、夜光る“狐玉”。「ぼろんじ」の、小さな“節穴”が遠眼鏡になり変わる不思議。「夢ちがえ」の、他人の“夢”を吸いこんでしまう頭の中の匣(ハコ)。「画美人」の、画中の唐様美人の馥郁たる“芳香”。「きらら姫」の、北斗の七つ星を舟に見立てた“星舟”が夜空を翔る件り。いずれも、妖しいエロスが匂い立つ話の中に、宝石の如く美しいイメージがきらりと輝いていたのが素晴らしかったなあ。
 わけても気に入った作品は、一点で結ばれるふたつの線に妙味を感じた「ぼろんじ」(“虚無僧”の意)と、江戸時代のタイム・トラベルを綴った「きらら姫」。どちらの短篇も、途中から意外な方向に話が逸れて行く・・・、その逸れて行き方が素敵だったのが印象に残りました。

澁澤氏の嗜好が自由気儘に描かれた親しみ易い作品4
澁澤氏が愛好するオブジェや両性具有、黒魔術、その他の思索を、ザックバランな語り口で6つの昔話風の物語中に散りばめた中編集。

タイトル作「ねむり姫」は、定家「明月記」中に出て来る悪党天竺丸と、作者が愛好する貝、螺旋、「箱(柩)中の姫」のイメージを組み合わせて幻想談に纏めたもの。永遠の「ねむり姫」と化した"静"の珠名姫と、波乱万丈の人生を送る"動"の天竺丸との対比の妙と因縁話が狙いだと思う。神秘感漂う姫の柩が舟に運ばれ川を辿るシーンは、黄泉の国への旅立ちを想起させ、幻想感を高めている。姫が流す血は破瓜のような気が...。「狐媚記」は憑狐譚と復讐譚の組み合わせに黒魔術の雰囲気を加えて綴ったもの。狐の体中に生まれ出る「狐玉」と言う霊異の塊が重要な役割を果たしている点が作者らしい。「ぼろんじ」は石川鴻斎「夜窓鬼談」中の「茨城智雄」をベースにした由だが、作者のアンドロギュヌス嗜好が出ているだけで興趣が薄い。「夢ちがえ」は再度「箱の中の姫」がモチーフ。姫が"耳しいて"いるため父に疎まれ牢に幽閉されている点が工夫で、牢の小窓から覗き見る世界が全てと言う設定。そこで垣間見た田楽法師にトキメキを覚える。無音と雅楽の対比、そして作者の得意とする、夢の重層構造と、夢と現実の逆転。小品ながら味わいがある。「画美人」は唐風の物語で、ギヤマン鉢の中の金魚(蘭虫)、絵から抜け出す美女、西洋風魔術師を思わせる神官と、道具立ての割には平板な感じ。「きらら姫」は江戸時代の大工が江ノ島の洞窟をタイムトンネルとして鎌倉時代へ行き、日蓮のために草庵を立てて帰って来るという一種の法螺話。"きらら姫"が作中に登場しない所が可笑しい。

全て明治以前の物語なのに、カタカナ語を含む現代用語や英語を違和感無く使用している辺り、気儘に書いている様子が窺える。澁澤氏に親しむには適した本ではないか。

馥郁たる幻想物語の香り5
渋澤龍彦の小説ã‚'初めて読ã‚"だのがã"の本だった。「å"è‰ç‰©èªžã€ã«æ¯"べると物語色が強まっており、またすべてが古い時代のæ-¥æœ¬ã‚'舞台にã-た幻想譚となっている。渋澤独特の、エッセイと虚構が交じり合ったような自ç"±è‡ªåœ¨ãªã‚¹ã‚¿ã‚¤ãƒ«ã‚'より堪能できるのは「å"è‰ç‰©èªžã€ã®æ-¹ã‹ã‚‚知れないが、姫や童子がç¹"り成すあやã-い物語の馥郁たる香りã‚'よりまとまった形でå'³ã‚ãˆã‚‹ã®ã¯ã€Œã­ã‚€ã‚Šå§«ã€ã ã‚ã†ã€‚それぞれの物語もã"ちらのæ-¹ãŒé•·ããªã£ã¦ã„る。

短篇の出来にはばらつきがあるが、「ねむり姫」や「狐媚記」はそれ自ä½"があやかã-の力ã‚'秘めているような美ã-いå‚'作。不思議な果実のような幻想譚ã‚'堪能できる。æ-‡ç« ã‚‚ã"のような物語にふさわã-くå...¸é›...でæŸ"らかく、ã-かも読みやすい。アクセントのようにちりばめられたå!š!!識がé­...æƒ'的な物語ã‚'æ›'にé­...æƒ'的にする。

渋澤龍彦の物語は極めて審美的で、彼の古今東西の幻想的モチーフ・幻想的オãƒ-ジェに対する偏愛が凝固ã-て形ã‚'成ã-たかのようだ。それ以å¤-の夾é›'物は一切なく、それが非常に心地よい。起承転結などæ°-にもとめていないようなãƒ-ロットは非常にæŸ"軟で、それでいて見事な構成美ã‚'描く。そういうとã"ろもまた美å'³ã§é¦™ã‚Šã®è‰¯ã„果実ã‚'思わせる。

渋澤龍彦の小説集はそれぞれ微妙に肌合いが違う。「å"è‰ç‰©èªžã€ã‚'読ã‚"で、なã‚"かæ-­ç‰‡çš„でå-りとめがないなと思ったæ-¹ã¯ã€æ˜¯éžã€Œã­ã‚€ã‚Šå§«ã€ã‚'読ã‚"で欲ã-い(私自身はどちらかというと「å"è‰ç‰©èªžã€ã®æ-¹ãŒå¥½ãã§ã™ãŒï¼‰ã€‚とにかく御伽噺や幻想譚が好きなæ-¹ã¯æ˜¯éžã"一読下さい。