流沙の塔〈下〉 (徳間文庫)
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商品の詳細
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- 発売日: 2006-04
- 版型: 文庫
- 428 ページ
エディターレビュー
出版社/著者からの内容紹介
天山山脈の山間の町・イーニン。殺されたロシア女性の身許を辿るうち、梅津は新疆ウイグル自治区で繰り広げられるイスラム原理派と、ウイグル民族独立を掲げる民族派の対立、哥老会と三合会の抗争、そして公安と軍部の確執の渦中へと巻き込まれてゆく。
内容(「BOOK」データベースより)
天山山脈の山間の町イーニン。殺されたロシア女性の身元をたどるうち、海津は新疆ウイグル自治区で繰り広げられるイスラム原理派と、ウイグル民族独立を掲げる民族派の対立、哥老会と三合会の抗争、そして公安と軍部の確執の渦中に…。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
船戸 与一
1944年山口県生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
持続する「酷」なサスペンス
経済の開放は人間の欲望を解き放つ。それまで抑圧されてきた側の欲望はもとより、抑圧してきた側の欲望まで歯止めなく増殖させる。本書に描かれた公安幹部の唯我独尊的な腐敗がまさにそうだ。「反革命」と唱えればすべてが断罪可能という歴史は、「革命的」な国であればこそ繰り返すことをやめない。
「気の遠くなるような量の漢人たちを送り込み、このウィグル人の土地を取りあげようとしておる」と、ある登場人物は言う。まさにそれが国内の他民族に対する中国(漢民族)政府の方針であり、チベットを背景にした谷甲州の著作と比較してもおもしろい。ここで優劣を問うことはやめておくが、読後に天を仰ぎたくなるような、あの甲州特有の哀感はなく、あくまでも「酷」(中国語で「クール」を意味する)に描き上げるのが船戸節なのだ。
絶対的な権力は絶対的に腐敗する。言わずと知れたテーゼである。しかし権力の打倒と奪取を計る解放組織が同類だとすればどうだろう。「ソビエト連邦が潰れてから、世界中の解放組織は闘争資金を麻薬に頼るようになった。(・・・)解放を名乗る政治・軍事組織が犯罪組織と何ら変わらなくなっていく」。この言葉は限りなく重い。
本書に書かれたイスラーム党内部の原理主義者と民族主義者の対立について驚く必要はない。世界宗教を目指すものは定義上、国境を越えたグローバルな志向を持つゆえに民族主義的な志向とは相容れないのであって、両者の共存は便宜的な仮構に過ぎない。世俗政党・バース党の党首でもあったフセイン元大統領が、アメリカとの戦いでことさらイスラームを強調したのは戦略上の虚構に過ぎないのだ。
係争地・紛争地ばかりに固執する性癖をマルロー・コンプレックスと呼ぶとすれば、船戸与一もまた「船戸コンプレックス」に凝り固まっていて、新疆ウィグル自治区を背景にしようと、構えは他の著作とちっとも変わらずに健在。




