生誕祭〈上〉 (文春文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #52359 / 本
- 発売日: 2006-04
- 版型: 文庫
- 567 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
六本木のディスコで黒服のバイトをしながら満ち足りぬ日々を送っていた彰洋は、偶然出会った幼馴染の麻美に不動産屋の美千隆を紹介される。時はバブル真っ盛りの八〇年代後半。おれはおれの王国を作りたいんだ―若くして成り上がった彼の言葉に魅せられた彰洋は、二十歳そこそこで大金を動かす快感に酔いしれていく。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
馳 星周
1965年、北海道生まれ。横浜市立大学文理学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライターに。96年、『不夜城』でデビュー。翌年の『鎮魂歌(レクイエム)不夜城II』で日本推理作家協会賞長編部門、99年、『漂流街』で第1回大薮春彦賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
人は変わらない、時代によって立ち振る舞いを変えるだけ・・・?
馳星周が従来のノワールから微妙に方向転換を図った、バブル期のマネーゲームを描いた上下作の文庫版。
20歳そこそこで大金を動かす快楽に魅入られてしまった主人公、汚い地上げ屋の世界、お金が一番の女子大生。
みんな熱に浮かされたように金を求め、立ち回り、化かし合いをする。
主人公が、馳作品にしては珍しくまっとうな感情を持っているせいで、人間の自然な感情と本能的なドス黒い欲望がどちらもリアリティを持って迫ってくる。
それが小道具の「祖父の形見の十字架」とあいまって、人間の浅ましさ、悲しさ、強さ、バイタリティ、そういうものを強烈に意識させずにはいられない。
主人公が誰かに対して自然な愛情を持って接したり初々しい葛藤をしたりする作品は馳作品としては珍しいのではないだろうか?
いつもの特殊な家庭環境に育ちスレた主人公とは違い、金のためでも生き抜くためでもなく、ただ「ひりつくような熱に浮かされる感覚」を求めて前に進むさまも、主人公の若さとあいまって微笑ましくさえ感じられる。
しかしその若さ、愛情ゆえの盲目、道のあやまりが結果的にどんどん墓穴を掘ることになっていくのはいつものこと。
バブルが崩壊してすべてが終わった後、それでも諦めずに「ねずみ講をやる」と決めたあたりも、時代を感じさせると同時に、バイタリティを失わない馳作品の登場人物を見て
方向は微妙に変わっても馳ワールドは変わらないなあと実感した。
バブルもやはり人間ドラマ
すさんだ気持ちの時には、思いっきりすさんだ読後感になる馳星周モノを読むのが良かろうと手に取ったけど
意外なことに、さわやかなと言うか、ほっとすると言うか、不思議な読後感になってしまった。
ちょうど、自分のすさんだ、自暴自棄な気持ちもおさまっていたので、その意味ではよかったな。
いつもの馳星周モノのように、やはりどうしようもない人間が山のように出てくる。
そして、ストーリー展開もこれでもかこれでもかの騙しあい。嘘と金と暴力。
にもかかわらず、これまでの作品との大きな違いは、どこか最低な人間の中にも何か見いだそうとすると
言うか、どこか希望と言うかが残されている感がある。もちろんさりげなく、もちろんしたたかに。
バブルの人間模様とその崩壊。
経済社会的な現象とは言え、やはり要するにヒトのドラマでしかない。
ヒトの欲望と功名心等々の一つ一つの積み重ねが、とどのつまり日本中を(あるいは世界をも)
巻き込んだ、バブルとバブル崩壊になったと言うことがよく分かる。
どんな社会小説、経済小説、あるいは解説やテキストよりも、この未曾有の金融パニックの現実を
私達に強く伝えてくれる、格好のエンターテインメントであると思います。




