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世に棲む日日〈3〉 (文春文庫)

世に棲む日日〈3〉 (文春文庫)
By 司馬 遼太郎

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  • 発売日: 2003-04
  • 版型: 文庫
  • 311 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し……
幕府の長州征伐の重圧で佐幕化した長州藩で、わずか八十人で兵を挙げた高杉晋作のクーデターは成功するが、時運は移り変っていた

内容(「BOOK」データベースより)
狂躁の季節がきた。長州藩は既に過激派の高杉晋作をすら乗りこえ藩ぐるみで暴走をかさねてゆく。元冶元(1864)年七月に、京へ武力乱入し壊滅、八月には英仏米蘭の四カ国艦隊と戦い惨敗…そして反動がくる。幕府は長州征伐を決意し、その重圧で藩には佐幕政権が成立する。が、高杉は屈せず、密かに反撃の機会を窺っていた。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
司馬 遼太郎
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章。平成8(1996)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

見てきた様に描く司馬氏の筆が冴え渡る一巻5
本巻では、「予言者」吉田松陰、「行動家」高杉晋作に続いて、「処理家」井上聞多(馨)、伊藤俊輔(博文)そして山県狂介(有朋)が登場。1863年の八月十八日の政変や1864年の禁門の変(蛤御門の変)、四国連合艦隊下関砲撃事件などにより存亡の岐路に立った長州藩における彼らの動静が、恰もその場面々々を見てきたかのような筆遣いで活写される迫力満点の一巻である。

政治史的な学びとしては、他藩惹起の騒擾について何故幕府が賠償金を負担したのかのロジック(83頁、219頁)や奇兵隊の創設=封建身分社会の否定=明治維新の出発点との説明(101頁、251頁、300頁)、彦島の共同租借地を阻止した高杉の機転(245頁)、征長軍に従軍せず長州藩に恩を売った西郷隆盛の政略(249頁)などが有益であった(頁数は全て新装版による)。

「井上はアーネスト・サトーと同様、役人というものを知っていた。一国一藩の安危よりも自分の保身から物事を思考し、大事をきめるときは、かならず会議をし、すべての責任は「会議」がとるという建前をとり、責任を問われれば、「自分一個はそうはおもっていないが、会議でそうきまったことだから」という理屈をつかって責任の所在を蒸発させてしまう世界であるということを井上ほど知っていた者はない」(229頁、これは企業などでもよくある話であろう)。「山県狂介は奇兵隊そのものであった。山県は「軍」という存在が単に銃と剣の世界でなく、いかに政治力をもちうるかという政治学上の重大な機微をこの頃に身をもって覚ったにちがいない」(307頁、正にその後の彼の立身出世の鍵がこれか)。

幕末のヒーロー登場5
主人公の高杉晋作は、幕末きってのヒーロー。
昼は漢詩をよみ、夜は女郎の唄なんぞを作ってドンチャン騒ぎ、
折り畳み式の三味線かついで東奔西走、
ある時はテロリスト、ある時は長州藩のにわか家老に化け、
かと思えば出奔、気がつけば雪の功山寺で藩政府の転覆に向け、半ば絶望的な進軍の号令を下している。
馬面よろしくまるっきり奔馬のような男だが、
父母にはあくまで孝を尽くし、藩主には燃えるような忠を捧げる。

この痛快さ。
まるで拵えたようなヒーロー像。もちろん実在の人物だ。

それが、いわばこの作品の素材が持つナマの魅力で、
司馬遼太郎はこの作品に評論めいた冷静な地の文を配し、
彼らの青春を俯瞰するという態度をとっている。
「まるで拵えたようなヒーロー像」に必要以上に肩入れしなかったことが、
「青春」とは距離を置いた抑制の節回しを作り、世の管理職の皆様方にも好まれる要因になった。
私も、それ行けドンドン式のヒーロー物語でなくてほっとしている。

作品の最後で、さりげなく主人公の享年に触れ、その一生の密度を浮かび上がらせる。
ジーンと来た。
司馬遼太郎の長編の中では目立つ方ではないが、名作中の名作。

幕末長州藩の英雄4
幕末の長州藩に改革を起こした奇兵隊の創設者として 知られる高杉晋作を通して、幕末の諸藩の複雑な 内情を伝える一冊である。幕末長州の歴史に興味がある人への入門書としてお勧めである。 特に吉田松陰と高杉晋作とのまったくことなる才能を もった二人の希有な関係が面白い、

高杉晋作のとは一般にはあまり知られていないが、破天荒な行動と武士として教育を受けた矛盾とをこれる姿が 非常に面白い。この二面性をつなぐものが松陰からうけた 影響がおおきいのではと思わせるところが、長編のなかで 二人を描きながらひとつのストーリーとして成立させている要素である。このあたりの描きかたがさすが司馬遼太郎の一冊である。