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溺レる (文春文庫)

溺レる (文春文庫)
By 川上 弘美

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  • Amazon.co.jp ランキング: #55206 / 本
  • 発売日: 2002-09
  • 版型: 文庫
  • 204 ページ

エディターレビュー

メタローグ
川上弘美の小説には「川上語」といっていい特有の語彙がちりばめられている。おそらく川上氏は用いたい言葉を常日頃からコレクションして、それを使いたくて逆にストーリーを誂えるというようなところがあるのだと思う。男と女の濡れ場や修羅場、道行きの数々が書かれた本書も、良い意味で言葉に淫している。たとえば「たいそう」や「どこぞ」のような和もしくは軟に、ふいに硬い漢語が混じったりする。その硬軟の混ざるリズムとバランスは、他の誰でもない川上氏の文章の柄なのだ。(清水良典)
『ことし読む本いち押しガイド2000』 Copyright© メタローグ. All rights reserved.

出版社/著者からの内容紹介
もう帰れないよ、きっと。
重ねあった盃。並んで歩いた道。そして、二人で身を投げた海……。時間さえ超える恋を描く傑作掌篇集。女流文学賞、伊藤整賞W受賞

内容(「BOOK」データベースより)
二人で何本も徳利を空にして、ゆらゆらと並んで歩く暗い夜の情景―「さやさや」。ちょっとだめな男とアイヨクにオボレ、どこまでも逃げる旅―「溺レる」。もっと深い仲になりたいのに、ぬらくらとすり抜ける男―「七面鳥が」。恋愛の過ぎて行く一瞬を惜しむ、傑作短篇集。女流文学賞・伊藤整文学賞受賞。


カスタマーレビュー

あじわい深い大人の恋愛とは5
かけおちであり、不倫の仲である大人の男女ふたりがあてどもなく彷徨する表題作「溺レる」は、リアル感が妙に希薄でありながら、なまなましい艶もある、川上さんの独特のセンスにあふれた秀逸の短編だと思います。現代的で、どこか和風の味つけのされた、様々な恋愛の形がつめこまれた、味わい深いおおすすめの一冊です。

秀逸!5
 まず、言葉の選び方が凄い。
 ここでは詳述しないが、「ぼうっと」「ひょうっと」の「っ」を抜いただけで、ここまで世界の広がり方が違うとは。まさしく「目から鱗」だ。
 第二に、どちらかと言うと幼稚っぽくなるからタブーに近いとされている、「オノマトペ」の使い方。こんな風に使えば、タブーでもなんでもない。むしろ効果絶大。誰がこの場面で「さやさや」って発想出来る?
 第三に、このエロ満載のストーリーを、品位をもって、哀しく描くことのできる表現力。読後にはエロ感覚よりも、無常感のほうが強く残る。
 私的川上さんランキングではベスト3に確実に入る作品集です。ある程度歳を重ねて、愛の哀しみは分かるけど、愛を諦め切れない。そんな人ならきっと気に入ってくれるはず。

川上弘美版官能小説??3
主人公は全編女性。しかも、みんな「だめ」な女性。
「だめ」というのはこれといって明確な目標もなくなんとなくふわふわと生きている、ということ。なんとなく男とつきあってなんとなく寝る。そして、気がついたら捨てられていたりする。

登場する女性たちはそれぞれなんとなく満たされない気持ちを抱えながらも、その正体をつかみかねてじたばたしてみたり酒を飲んだり男と寝たりする。何か大切なようなものがあっても、それがはたしてどのように大切なのかがよく分からない。なんだかよく分からないでいるうちに事態はすでに次の段階に進み、彼女たちは置いていかれてしまっている。

川上弘美の性描写はふわふわほわほわとしている。しかし、エロティックでないわけではない。直接的な描写がないかわりに「いたくする」とか「自在にする」とか遠まわしな表現が逆にエロイ。それにひらがなが多いので子供っぽい感じがしてよけいにエロイ。

他の作品ではあまりこういう描写がないので読んで驚いたけど、こういうのを書いても川上弘美っぽさは失われずやっぱり上手いなあと読むものを唸らせる。