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手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)
By 東野 圭吾

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  • 発売日: 2006-10
  • 版型: 文庫
  • 428 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東野 圭吾
1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞。2003年、本書「手紙」が第129回直木賞候補となる。2006年、6度目の候補作である「容疑者Xの献身」で第134回直木賞受賞。同書は第6回本格ミステリ大賞、2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」各第1位にも輝いた。幅広い作風で活躍し、圧倒的な人気を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

どこか遠い世界の話ではなく5
映画化もされて、いまはどこの本屋さんにも平積みになっているベストセラーだが、やはりそれだけのものがある、とすべて読み終わってそう思えた。
強盗殺人犯の弟として生きていく、というところに遥か自分とは遠い世界を思っていた。
しかし、その世界は決して遠いところにあるものではなく、自分のすぐ隣、身近にあるものだった。そう気付かせてくれる小説である。「強盗殺人」というもの自体、多くの人にとっては縁遠く感じているものだが、この小説に出てくる人物は決して特別ではない。直貴を繰り返し繰り返し苦しめてしまうのは周囲の人物に違いはないのだが、特別に嫌な性格の人物たちが集中しているわけではなく、自分の胸に手をあててみてもいろんな面で理解可能な周囲の人たちの行動の連続なのである。
様々なきっかけを読んだ人に与えてくれる小説である。

「手紙」は、考えていた以上に、ずっしりとたくさんの気持ち、書く人読む人両方の気持ち、を運んでいた。

きれいごとではない現実を私たちに突き付ける本5
読後、小説から本の帯に抜粋された言葉をあらためて読んだ。納得したくないのだけれど、納得せざる得ないのか?微妙な感覚に、いまだに頭を整理できずにいる。
すごい本を読んでしまった。学校の道徳のテキストや新聞掲載の小随筆などには絶対に出てこない現実を突き付けられて戸惑いを覚えながらも、頷きながら読むしかなかった。
殺人犯であり服役中の兄のため、主人公である弟が社会的に様々なものを失い、兄の犯罪が自分のためのものであった故にこそ、一層苦しみ、社会、そして兄を憎む姿は、切なく辛い。
しかし筆者は筆を緩めることなく、これでもか、これでもか、と主人公を苦しめ続けるのだ。
そして兄との完全な別離。
犯罪加害者の身内の真の痛み、苦しみとは、またその社会的な必然性とは何か。最後の場面はあまりにできすぎていた感は拭えないが、きれいごとではない現実を深くえぐった作品であった。

書き続けられた手紙の意味―「あの手紙があったからこそ、今の自分がある」!5
 端的にいえば、「感動的な作品を読んだ」というよりは、「感想を述べるのが難しい作品を読んだ」というのが正直なところだ。おそらく読者の感涙を意図して執筆された作品ではない。本書は犯罪加害者の家族が辿る過酷で悲惨な運命を、冷静な筆致で描き出した大胆な作品と称してよい。文春文庫から刊行された東野作品のなかでも群を抜く販売部数を誇っており、直木賞候補作として注目された作品の1つでもある。

 強盗殺人犯の弟というレッテルはどこまでも付きまとい、それは彼から多くの大切なもの(仕事、恋人・友人そして夢)を奪ってゆく。むろん本人は殺人犯ではない。しかし「血が通っている」という決定的な関係は断ち切れない。彼もまた犯罪加害者の一員であるかのごとき「差別」は当然のごとく存在する(この「差別」という現象は本書における最重要概念の1つ)。その事実が突きつけるものはあまりにも重い。まさにびくともしない岩壁である。この現実を受け容れざるを得ない弟の虚しさ・痛々しさ・腹立たしさは、本書を読んで十二分に伝わってくる。多くの読者も同じ心情ではなかろうか。

 犯罪者である兄は手紙を書き続け、それは彼の日課となってゆく。手紙を書き続けることで罪の意識が軽くなるだろうなどと彼は全く思っていない。ただ純粋な気持ちで手紙を書き、それを心の支えにして生きている。「手紙」が果たしている意味の大きさや解釈は兄弟において異なってゆく時期もあるが、それでも手紙が果たした役割はまことに大きかったはずである。「私は手紙を書くべきではなかったのです」(418頁)という兄の言葉に対して、弟はそれを否定する。弟は家族をもち、これからも自らに課された残酷な運命に立ち向かってゆかねばならない。そこから逃げず逞しく生きていって欲しいと願いたい。なお本書と併せてDVDの鑑賞も薦めたい。原作に忠実ではないが、本書の良さを見事に映像化している。