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片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)
By 東野 圭吾

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  • 発売日: 2004-08-04
  • 版型: 文庫
  • 622 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東野 圭吾
1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

QBの常識的な残酷さについて3
やはり東野らしく暖かな小説です。
見た目と内面の不一致は人に混乱と苦悩をもたらしますが,その際立った形として性同一障害をとりあげています。
保守的な常識だけにもおもねらず,ラディカルフェミニズムにもはまらず,主人公であるQBは友人を救おうとします。
しかし,常識的な人間はとても残酷なものです。
彼は何とかしたいとあがきながら,救済することが出来ません。
その姿は著者の思いを反映していると感じました。

悩みを抱えた3つの家族の片想い5

この片想いという作品は元アメフト部のマネージャーでジェンダー問題に悩む美月と
もう一人のマネージャーだった理沙子との夫婦問題に悩む元スタープレイヤーのQBこと哲郎
そして学生時代に美月と付き合ったことがあり、今は資産家の娘婿である中尾
の3つの家族の物語だと私は解釈しています。

今年大ブレイクされた東野さんは離婚されていますが、
1.氏のその経験
2.時折みせる社会的なテーマへの挑戦というかそのテーマを深堀りした氏なりの読者へのメッセージ
3.ストーリーテラーとしての緻密な複線が絡み合う物語の上手さ
4.学生時代のアーチェリー部主将の経験
が見事に折り重ねられて生まれた超一級の小説です。

3つの家族のメンバはそれぞれに悩みを抱えながら、そして自分の信じた・選んだ道を進み
やがてそれぞれある終点へと辿り着きます。
そこはまた各人の新たな人生の出発点でもあります。

最後まで読み終えた時、この小説が伝えるメッセージの感じ方は
読む人の人生経験やその時の心の状態で大きく変わるでしょう。
私は2回目に読んだ時は前回に比べて、前向きなメッセージを強く感じました。

かの村上春樹氏は優れた小説とは、読む人の年齢・性別・時代の変化に多面的に対応できる要素を備えていて、
いつまでも陳腐化しないことだと言いましたが、この片想いという作品は正にそんな作品です。

ミステリーに留まらない人間ドラマ4
ただのミステリーに留まらず、昔の仲間との友情、
恋、社会問題などを盛り込んだ、読み応えのある長編小説です。
主人公は30代のスポーツライター、そして彼の学生時代のアメフト部
の仲間たちがある事件をめぐって苦悩し、やがて秘密がひとつひとつ明らかになり・・・というようなお話なのですが、なんだか失われた青春、
変わってしまったそれぞれの仲間たち、それでも変わらない友情などが
ないまぜになり、とてもせつない気持ちで読みました。
仲間達の一人一人の個性が、アメフトのポジションの役割と重ねて
すごくよく描かれています。主人公を始め、私は仲間みんなに
感情移入しながら読みました。そういう人間ドラマ的な魅力がまずひとつ。

それから、実はこのお話の縦軸になっているのが「ジェンダーの問題」。
いわゆる「性同一性障害」とか「半陰陽(男女両方の特徴を持った体で
生まれてきた人)」とか、一般的にマイノリティの人たちの悩みとか
暮らしが小説とはいえ説得力をもって描かれているのがとても痛々しくも有り、
興味深くもありました。

ミステリーとしての展開も面白く、
かなり厚い本なのですが一気によんでしまいました。