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日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)

日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)
By 松本 清張

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  • 発売日: 2004-12
  • 版型: 文庫
  • 408 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
戦後日本で起きた怪事件の背後に何が存在したのか。米国・GHQの恐るべき謀略に肉薄した昭和史に残る名作の続編。戦後の混乱を生々しく伝え、今日の日本を考える貴重な資料である。日本中を震撼させた「帝銀事件の謎」、被告の冤罪を主張する「推理・松川事件」、横暴な権力への静かな怒りに満ちた「追放とレッド・パージ」など。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
松本 清張
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

巨大な言論人としての清張の正義感5
上巻に続き、日本の近戦後の闇を描き出して行く作品。日本をそれぞれの権益のためにとことん利用しようとしたGHQの各部局、自分独自のアジア構想のために多くの国や兵力や人間を駒のようにあやつろうとして挫折したマッカーサー、そしてGHQに絡みついて利権にむらがり、結局は暗黒を内包したままの現代の日本につながる底流を築いた日本の政・財・官。清張がこの作品を書いた当時にして既に、これらの蠢動の真相は手の届かないところに消え去ろうとしていた。清張の憤怒や焦燥、ペンをとる者としての使命感、正義感、そして反骨精神が行間に満ちている。大岡昇平との論争の一端も記されているが、当時の作家の社会意識の高さを伺わせる。終戦60年、今日の日本では正義の怒りが影を潜め、暴力と不正と隠匿が横行している。道理が通る社会を…と、やはり思わずにはいられない。しばらくは清張の巨大さに没頭してみようかという気になってきた。

今なお晴れない「黒い霧」5
 これは,不世出の社会派推理小説作家である松本清張が,GHQ占領下の日本の暗部にメスを入れた貴重なノンフィクション作品である。下巻では,接収ダイヤ問題,帝銀事件,鹿地亘事件,松川事件,追放とレッド・パージ,朝鮮戦争が扱われている。

 下巻での白眉は,帝銀事件,そして,「戦後三大鉄道謀略事件」とも呼ばれるものの一つ松川事件であろう。特に,「青酸カリ」により12人の死者を出し,容疑者が裁判で死刑を宣告され確定しながらも,ついに刑が執行されなかった帝銀事件の奇怪さと,その背後に見え隠れする「黒い霧」とは,忘れてはならないものであろう。必ずしも十分ではない資料と資料との間を,点と点とを繋ぎ合わせていくように推理,推測した上で,を少しでも晴らすようにと一つの仮説を立てていく清張の力量には並々ならぬものを感じる。
そして,最も重要なことは,これらの事件の存在すら忘れられかけている現在,GHQの日本占領史の裏の裏にまで迫るような迫力で書かれた作品は殆ど存在しないということである。もちろん,若干の論理展開の荒い部分ば感じられることは間違いない(本書を巡っては,清張と大岡昇平との間で論争らしきものも起こったようである。)。しかし,さらに混迷の度を深めている21世紀のはじまりに,日本における「戦後統治」の実像を辿る資料として,本書は,やはり一級のものというべきであろう。

 本書は,しばらく入手困難であったが,最近の清張ブームに伴い,久々に新装版として帰ってきた。このような歴史的著作物が消え去ることなく復活したことに,心から賛辞を送りたい。

現代に通じる謀略の影を感じた戦後昭和史ドキュメント5
 終戦後、米国の占領下にあった日本。昭和20年代に起きた怪事件の裏側にあったのは何か、公表された“記録”とは別の“真実”がそこにあったのではないかと、松本清張が検証、推理していく戦後昭和史ドキュメント。「征服者とダイヤモンド」「帝銀事件の謎」「鹿地亘(かじ わたる)事件」「推理・松川事件」「追放とレッド・パージ」「謀略朝鮮戦争」と、「なぜ『日本の黒い霧』を書いたか」が収められています。

 関係者の証言や残された記録を手がかりにして事件の真相を探っていくと、どうも公表された事と違うのではないか、様々な不審の点がそこにはあるようだと論を展開していく清張の推理。実に説得力のあるものでした。「推理・松川事件」などは殊に、公表された“事実と称する記録”よりもよほど真相に迫っているのではないかと思った次第です。

 戦後当初は日本の民主化を奨励、推進しながら、それが高じて共産主義の勢力と結びつく恐れがあると見るや、占領政策を方向転換し、日本を極東の対共産圏の防波堤となるべく誘導したGHQ。対共産主義の米国の戦略の中心となって動き、GHQ内部でGS(民政局)と激しい主導権争いを繰り広げていたG2(参謀部第二部・作戦部)。怪奇複雑な事件の背後には、このG2の工作や謀略が行われた可能性が強いのではないか。事件の“黒い霧”の中を探っていくと、どうしてもそういう謀略の影が見え隠れしてならないのだがと、清張かく語る訳です。
 極東における米国の防衛ラインとしての日本の位置づけ、極東情勢の変化に伴うGHQの政策の大転換などが清張の推論によって浮かび上がってくるところ、その辺が強く印象に残りました。