白い紙/サラム
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #118366 / 本
- 発売日: 2009-08-07
- 版型: 単行本
- 160 ページ
エディターレビュー
内容紹介
イラン・イラク戦争下の恋を描き文學界新人賞を非漢字語圏から初めて受賞した作者。留学生文学賞を受賞した「サラム」も注目作。
内容(「BOOK」データベースより)
文學界新人賞受賞作(「白い紙」)、留学生文学賞受賞作(「サラム」)。大型新人の傑作二作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ネザマフィ,シリン
1979年、イラン・テヘラン生まれ。神戸大学情報知能工学科卒業。同大学院自然科学研究科修了。現在、システムエンジニアとして日本の大手電機メーカーに勤務。2007年留学生文学賞を「サラム」で、2009年第108回文學界新人賞を「白い紙」で受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
絶望の中の崇高さに打たれる・・・
最初の一編「白い紙」はどうやらイ・イ戦争時のお話らしい。イスラムの戒律で女性が肌を晒すことも、男女が言葉を交わすことも許されない国。男達は戦場にかり出され、残された者は空襲に怯える日々・・・。出征した父親の運命を知った息子は、母親を護るために重大な選択を迫られる・・・。
「君たちは望み通りの未来を書ける白い紙の様なものだ」と言って息子を励ましていた教師、 密やかな交際を重ねていた息子の恋人、そして残される母親・・・最後の場面でそれぞれが見せる涙、非情なまでの別れの光景は泣けます。
二編めは「サラム」。「サラム」とは元々は「降伏」「救い」「平和」等の意味があったが、今では単なる日常の挨拶として使われる言葉らしい。
日 本に留学している「私」は、難民認定の裁判に関わる弁護士にアルバイトの通訳として雇われ、入管の「収容所」でアフガニスタン 人の少女レイラと出会う。弁護士と行動を共にし、何度も言葉を交わすことで少しずつ心を開いて いったレイラだったが、様々な出来事の末に、「サラム」と言いながら敵に殺された母親を思い出し・・・・。
最後の場面、過酷な運命を受け入れ、暗い瞳に戻った少女の言葉が鮮烈・・・打ちのめされる「私」と弁護士の姿にも泣けます・・・。
所々で不思議な言葉使いも散見されますがご愛敬。どうやらこの二編は完全な「小説」のようですが、多くの場面には現実の姿が反映されていると思えます。そして、単なる「小説」というよりイスラム世界と日本という国に対する「告発」という面も感じます。厳しい現実だけがもつリアリティーにたじろぎながら、結末の場面で感じる不思議な程の静謐さにも惹かれます。
そして読了して思います。楽に、楽しく、豊かに・・・日本人のその様な価値観と、あえて過酷な運命を選ぶ人々の価値観。同じ人間なのに、何故これほど違うのか?
そして・・・どちらが幸福なのだろうか・・・と。
あえて言えば、もちろん日本人の方が幸福に決まっているが・・・彼らの見せる、絶望の中の「崇高さ」に打たれるのも事実ですね・・・。
身近に戦争がない国で暮らす事の幸せに気づかせてくれる哀切な中東の物語集。
現在日本の電機メーカーに勤めながら執筆活動を続ける在日イラン人女流作家ネザマフィが著した2009年度文學界新人賞受賞作と2007年度留学生文学賞受賞作の2作品を収録するデビュー中編小説集です。外国人の方が日本の文学賞を受賞するのは中国の楊逸さんに続いて二人目で、こうして日本語で書かれた作品であれば外国人にも参加資格を与え門戸を開くのは、とても良い事だと思います。
『白い紙』本作は著者の故国イランを舞台にした若者達の青春小説で、題名は教師が生徒達に向けて未来に様々な可能性を秘めた今を真っ白な白紙に例え「悔いのない色に染めよう」と呼び掛ける言葉から来ています。主人公の高校生の少女(名前は書かれていません。)は戦争医師の父の仕事の関係で首都テヘランから母と田舎町に引っ越して来て、男女共学の高校に通う内にテヘラン大学への進学を目指す優等生の男子生徒ハサンと知り合う。若者達の大半が戦争に駆り出され兵士として出兵して行く社会の中でプレッシャーを感じる彼を、彼女は先生と共に励まし応援するのだったが・・・・。男女学生が話す事を許されない事や女性が外出時にチャドルという黒い衣装に身を包んで容姿を隠す風習に閉鎖された異質な社会を実感しました。前途ある若者達が国の大義の為にどうしようもなく追い詰められていく過酷な社会に遣る瀬無い憤りを覚えました。
『サラム』入管という外国人の入国を審査する役所でアルバイトとして日本で働くイラン人女性通訳の私が弁護士の田中先生と共にアフガン人女性レイラを救おうと努力する物語です。サラムはダリ語で降伏、救い、平和を意味する奥深い挨拶の言葉です。無制限に外国人を受け入れられない我国の事情も十分理解出来るだけに複雑な思いに駆られます。
本書は平和な国日本と中東の過酷な現実を対比させて身近に戦争がない国で暮らす事の幸せに気づかせてくれる非常に意義深い作品集だと思います。
悲惨の中の気高さ
すでに他の方がレビューされていますが、あえてコメントを述べます。
私も2編目に収録されている、アフガン難民の少女をめぐる「サラム」に強い印象を受けました。
民族的にも宗派的にも少数派に属し、タリバン政権下で家族の離散、母親の死という過酷な状況に陥った少女の難民申請をめぐり、熱意のある弁護士、ボランティアたちと語り手である通訳バイトの女子大生が関わってゆく。語り手の私はそもそも小遣い稼ぎの通訳バイトなので、いくらか距離を置いて状況を眺めているのだが、おりしも9.11同時多発テロも起きてしまい、否応なく物語は加速していく。
最終場面(これも他の評者が触れていますが)、日本にとどまることよりあえてアフガンへの帰国を決意する少女の姿は、悲惨な運命に翻弄される哀れな娘ではなく、その運命にあえて「サラム」と言いつつ受け入れようとする人間の気高さ・尊厳が描かれている。
「このときはじめて少女を美しいと思った」と書く、作家の筆に全く躊躇はない。
とても良い作品だと思う。今後の作品にも期待する。

