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運命の人(三)

運命の人(三)
By 山崎 豊子

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  • 発売日: 2009-05-28
  • 版型: 単行本
  • 256 ページ

エディターレビュー

内容紹介
記者と取材源の逮捕という前代未聞の事件に、世論は沸騰した。だが狡猾な国家権力は、起訴状でふたりの秘められた関係を暴露した。

内容(「BOOK」データベースより)
国家機密は誰のためのものか?密約を追及する弁護団の前に立ちふさがる、強大な権力。記者生命を失った弓成が見た光景とは―。徹底した取材と執筆に十年をかけた壮大なドラマ、いよいよ佳境へ。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山崎 豊子
大阪市に生まれる。京都女子大学国文科卒業後、毎日新聞大阪本社に入社。昭和32年、処女長編「暖簾」を刊行。翌33年、「花のれん」で第39回直木賞受賞。以後、それまで聖域とされていた分野をテーマとし、意欲的な長編を発表し続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

啓示5
山崎氏の作品は、いずれも小説の域を超え、実話に基づいた社会問題、国家や大企業の欺瞞を緻密な取材と筆力で暴く壮大なストーリーで常に我々に何かを啓示している気がする。氏の書かれる題材・スケールにはその都度圧倒され、私たちの気付かぬ、また立ち入る事の出来ない分野に、作家という腕力を持って敢然と立ち向かい挑戦し続けている。この小説にも年齢を重ねても衰えることのない信念と情熱を感じる。沈まぬ太陽が日航であったのと同様、運命の人は憲法21条言論・出版の自由という基本的人権と国家権力を問う壮大な物語だ。正義を貫こうとした主人公弓成は国家権力に捻り潰される正に運命の人である。しかし弓成は潰されるだけでなく、自らが犠牲になることで言論の自由・メディアのあり方を訴え続けるという近代史にも類稀な運命を背負って生きることになるのだ。誰のための国家機密か。誰のための政府か。報道機関の意義とは何かを山崎氏は問い質したかったのではないだろうか。氏がいなくなれば誰が筆力を持って現代社会の歪を正すのか不安さえ感じる。時の総理大臣佐橋は在職中の痕跡として、なんとしても沖縄返還という金字塔を成し遂げたかった。己の名誉のためには国民のことすら一顧だにせず密約を交わす。その命を受けた外務大臣は米国の理不尽な要求を呑み、外務省幹部も皆ひた隠す。警察庁・最高裁をもコントロールする国家権力、検察の驕り。この問題がこのまま過去の出来事と葬り去られていいのだろうか。記者生命を賭して報じた沖縄返還の裏・外務省極秘電信分。権力は国家の犯罪すら巧妙に下世話な『情通』に掏り変え、世論をコントロールし、弓成一家の運命をも歪める。国民を欺くために秘匿した国家機密。それ自体が最大の犯罪ではないのか。最高裁にも控訴棄却されたこの問題を、氏は小説を通じ世論に問いかけているのではないか。この小説で最高裁の判決が果たしてすべて正しいのだろうかとも思える。憲法21条をもう一度問い質す作品だ。政府は国民のためにある。政府の欺瞞を暴く事は報道機関の役割ではないのか。ストーリーよりもこの作品には、いまだ『密約はなかった』と嘯く政治家・国家権力を正す一石をなることを期待したい。メディアの役割。主人公弓成の運命の真の意義を現実のものにして欲しい。

地裁無罪、高裁有罪、最高裁上告棄却、有罪確定。5
外務省機密漏洩事件、74年東京地裁判決、被告人三木昭子懲役六月執行猶予一年、被告人弓成亮太無罪。驚いた。第三巻ではそこから76年東京高裁判決、弓成被告懲役四月執行猶予一年、国家公務員法111条「そそのかし」行為に該当し逆転有罪。そして最高裁上告棄却の決定。取材手法に違法性、正当な取材を逸脱、「そそのかし」に該当し有罪確定となった。沖縄返還にまつわる密約を国民に伝えようとした記者の取材には意義があり、密約は協定の実態を隠蔽するものであり、本件報道がなければ、永久に国民と国会の討議はなかったことになる。しかし同時に人間として記者として見下げた輩の烙印を押される。公共的使命を扱う報道機関の記者として取材の正道を逸脱、その社会的非難は大きかった。後に毎朝新聞は弓成事件で会社更生に行くはずだ。弓成は尊大で一方的で「そそのかし」は執拗で、囁きと酒で一線を越えても毎日のように電話で執拗に書類を「頼む」の一言、これが毎朝新聞の記者なのだろうか。こんな弓成の為に三木昭子は馬鹿なことをしたものだ。弓成は、三木昭子は当然、その主人琢也氏、弓成の妻由里子、二人の子供、実家の両親、皆に余計な大変な迷惑と損害を与えたことは忘れてはならない。弓成本人は実家の北九州の弓成青果に帰るが、経営はうまくいかず結局九州青果に吸収となる。落ちるまで落ちた。女性事務官の人格の尊厳を著しく蹂躙したこと、何の条件も付けず、親しくもない社進党の横溝議員に対し、部下に電信コピー現物を持たせるなど、これが毎朝記者だろうか。米国の方針は、沖縄返還後も米軍基地機能に支障がないこと、カネは一切出さないことだった。国民は国家機密も知らずに、平和裡に祖国復帰させたことで佐橋元総理はノーベル平和賞を授与された。

裁判をめぐっての記述がすごい4
関係者への取材や裁判記録を元に小説風に仕立てているんだろうけれども、登場人物とくに被告の女性事務官や弓成の妻の心情の描き方は、女性作家だからでしょうか、さすがです。
『そそのかし』の解釈をめぐって法廷で争われますが、個人的には、地裁の判決が弓成側(弁護団)に流されすぎであって、高裁判決&最高裁判断は妥当だと思います。