W/F ダブル・ファンタジー
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #1275 / 本
- 発売日: 2009-01-08
- 版型: 単行本
- 496 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ―。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら―そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。
カスタマーレビュー
タイトルが意味深長
レビューを読むと、賛否両論あるようですが
わたしは眠気も吹っ飛んで夜中に一気読みしました。
性描写が作品の軸になっているように取りざたされていますが
わたしは主人公・奈津が、夫・省吾と築いた10年の日々と、
自分にとっての「楽園」が崩壊していく辛さ・寂しさが
胸に迫ってきて、息苦しくなるほど切ない小説だと思いました。
誰かが功成り名を遂げたとき、
それを支えてくれている“味方”が
気づいたら“敵”になってしまう恐ろしさを描いた意味では、
ホラー小説のような戦慄を覚えます。
かつてジュリア・ロバーツが主演した
『Sleeping with enemy』という映画がありますが、
“敵”と寝ることを拒み、孤独の代償を負っても
一人で生きることを選ぶことを
奈津に余儀なくさせた夫との生活、
そして、心の赴くままに生きようとしても
自分の思いに応えてくれない
志澤を初めとする、想い人たちへの焦燥。
その煩悶に苛まれる苦しさ。
省吾の独善、志澤の豹変、岩井との齟齬、そして大林の執心・・・。
この作品の中には、男性主役の都合のいい官能小説のように
人格を与えられてない登場人物は、一人もいません。
なぜなら、実際のリアルな人生にも「都合のいい他人」
なんて存在しないことを、作者は知っているから。
そういう意味で、相手と気持ちを分かち合えない苦しみと
救済の訪れない日々を、この作品が残酷なまでに描いていることに
わたしはリアルを感じました。
森瑤子の初期作品にも通じる苦しさが籠もったこの作品、
血が通っていると思ってます。
(作者=主人公という稚拙な読み方は本来御法度ですが)
しょうじき、全ての村山作品を読んできて、
著者の鴨川暮らしに憧憬すら抱いていた自分には
読んでいて切ない部分もありましたが
『星々の船』以来、数年ぶりの大作に挑んだ
村山さんの第二章の幕開けとなる、
エポックメイキングな作品であると受け止めました。
初めての感動
これまで村山由佳の小説を追っかけてきた読者(村山の作品にはそういう中毒性がある)は、おそらく全員、首がへし折れるほど驚いたことだろう。自分がそうだった。
過去の村山作品にも官能的表現はじつは多いが、それらは今まで、決して常識やモラルを確信犯的に踏み越えるものではなかった。
それが、この『ダブル・ファンタジー』ではどうだろう。主人公自らが、夫以外の五人の男と次々に体を重ねていく。彼女の行動が、社会的なモラルに鑑みて褒められたものでないことは置いておいて、なぜそれぞれの男と体の関係を結ばなくてはならなかったのかについては、緻密な心情描写によって、ものすごい説得力で迫ってくる。特殊な主人公が決して特殊に思えなくなってくるあたりは、やはり作者の筆力だろう。
主人公奈津の選択をけしからんと考える人は多いだろうし、彼女を生理的に好きになれないという人もいるだろう。もしかするとこの作品をきっかけに村山由佳を二度と読まなくなる人までいるかもしれない。実際、ここのレビューを見ても、評価は両極端に分かれている。
しかし、僕は思う。そんな危険性くらい、作者は百も承知ではなかったか。作中にも出てくるとおり、「書くことによって自分が血みどろになるとわかっていても、それでもなお書かずにいられないという呪い」に突き動かされるようにして、村山由佳はあるいみ自分の作家生命を賭けてこれを書いたんじゃないか。そうまでして自分の殻を破らなくてはいられなかった作家の業みたいなものに、僕は感動した。
個人的にはこれまでの青春恋愛小説のほうが気分よく読めて好きだが、それにもかかわらず、『ダブル・ファンタジー』にはただただ圧倒されて、有無を言わさず最後まで一気に「読まされて」しまったのだ。
男が読むと、これは相当おそろしい話だ。性愛の真っ最中に、相手の女がこんな辛辣な批評をしながら演技している可能性を思うと、多くの男は自分をふり返って疑心暗鬼に駆られずにいられないだろう。女性の性愛、性感というものは、こんなに豊かで底知れないものなのか。怖ろしいような、うらやましいような気がした。
しかし、これだけ過激なセックスを書き尽くした後に訪れる、ラストシーンのせつなさや美しさときたらもう、溜め息をつくしかない。朝日新聞のインタビューで作家本人が、「読み終わればやはり村山由佳の作品だと思ってもらえるはず」と言っていた意味がよくわかる。
女性はもとより、男にもぜひ読んでもらいたい作品だ。
鳥肌が立ちました!
こんなにのめりこんで読むことになろうとは思っていませんでした。
この著者の作品は初読で、書店ですごく売れているようだったから何となく手に取ったのですが、読む前はいわゆる官能小説なのかと思っていました。
違いました。これは、多くの人にとって切実でありながら誰も表立っては語ろうとしない「性愛」というものを、快楽の面からだけ書くのじゃなく、生きる哀しさや寂しさの面からもとことん描こうとして見事に成功した秀作だと思います。
エッチなんだけど、きれい。
描写は過激なのに全然汚くない。
女主人公の行動に眉をひそめる人もたぶん多いだろうけど、作家が作りあげた “既製のモラルを踏みはずしてでも自分の欲求に忠実であろうとする主人公”を、このごにおよんでモラルで裁くことに意味はないでしょう。
この主人公がもしも男で、妻以外の女たちと次々にめくるめくセックスをする話だったら、きっと誰も真顔でなんか咎めない。なのに、どうしてそれが女だと後ろ指をさされ、糾弾されてしまうのか。
そこに、女が性愛を追い求めることの難しさと不公平さがあって、著者はそれをつきつめようとしていると思うのです。
読んでいる間、気がつくと歯を食いしばっていました。
だってこんなこと、今まで誰も書いてくれなかった。夫婦の間にある一見穏やかな支配の根深さのこと。体から引きずられてしまう恋のどうしようもなさのこと。とりわけ、女の性欲の哀しさや、やるせなさ。
男性作家には絶対書けないでしょう。女性作家だったら誰でも書けるというものでもないと思います。
主人公は、自分のほんとうに望むことを追い求めた結果、最後にはすごく寂しいところにたどりついてしまいますが、それでもなお「すべては自分で引き受けてみせる」と言い切る姿はすがすがしくて凛々しい。
ラストの、火薬の匂いのことを書いた一文が、最初のうちは未熟な少女みたいだった主人公に、女としての凄みを与えていて秀逸でした。
読んだ人と熱く語り合いたい気持ちにさせられる一冊です。





