夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #2525 / 本
- 発売日: 2009-06-10
- 版型: 単行本
- 256 ページ
エディターレビュー
内容紹介
ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅(かいこう)を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末(てんまつ)をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。
内容(「BOOK」データベースより)
ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。
著者について
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、五歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡る。同地で育ち、英国籍を取得した。イースト・アングリア大学大学院で創作を学んだ後、一時はミュージシャンを目指していた。やがて、ソーシャルワーカーとして働きながら執筆活動を開始し、1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞に、1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞に輝き、一躍重要作家としての地歩を確立した。1989年発表の第三長篇『日の名残り』(以上、すべてハヤカワepi文庫刊)はイギリス文学の最高峰ブッカー賞に輝き、アンソニー・ホプキンス主演で映画化された。
その後、『充たされざる者』(1995)、『わたしたちが孤児だったころ』(2000)を発表。2005年に上梓した『わたしを離さないで』は世界的なベストセラーとなった。
カスタマーレビュー
長編にはない新鮮な趣が・・・
過去、文芸誌等にていくつかの短編(『夕餉』など)
は訳出されたことがあるものの、
「短編集」としてはイシグロ初の一冊。
通奏低音として流れるのは、引き続き
「個人にとっての大事な過去と、記憶の改ざん」
というテーマであり、夕暮れの時刻はまこと
そのテーマに相応しい。
また元ミュージシャン志望だけあって音楽には詳しく
全編男女の悲哀に焦点が当てられ
一篇を除いて舞台を都市に設定するなど
長編にはない新鮮な趣がある。
どちらにせよ、一読して地味な作品群ではある。
しかし氏の敬愛するチェーホフと同じく、
表面的な静けさが必ずしも文学的な静けさでは無い、
ということが真に理解できる一冊である。
音楽を愛する人々の人生模様を緩やかに描く著者初の好短編集をお楽しみください。
長崎県生まれの英国人文学作家カズオ・イシグロが2005年のベストセラー大作「わたしを離さないで」以来4年振りに刊行した著者初の書き下ろし短編集です。著者は若い頃ミュージシャンを目指した時期もあったとの事で、本書に登場する音楽を愛する人々の姿から著者自身の若き日の音楽に対する熱い想いが伝わって来ます。本書収録の5編はどれもリラックスし肩の力を抜いて書いた小品の趣で、タイトルから連想される様な重々しい物でなく、むしろコミカルで人生どう転ぶか解らないという緩やかな可能性を秘め、読み手に自由に解釈を委ねる結末には微かにそこはかとない夢と希望が感じられます。
『老歌手』ベネチアのカフェで演奏していた流しのギタリストの私がアメリカの往年のベテラン大物シンガーと出会い、音楽人生への想いと長く愛し合って来た夫婦の行く末を教えられます。『降っても晴れても』大学時代の友人夫婦と久し振りに再会した僕に夫が夫婦の危機を打ち明ける。夫婦が不在で留守番中にひょんな事から犬の匂いをでっち上げるというとんでもない展開になる本書一番のユーモア編です。『モールバンヒルズ』ギター片手にシンガーソングライターを目指す学生の僕は都会暮らしに行き詰まり、ひと夏を田舎の姉夫婦のカフェで過ごす事にした。僕は店で働く内に出会った音楽家夫婦の険悪な仲を目撃する。若き日の著者を思わせる主人公の情熱と冷めた中年妻の諦念が対照的です。『夜想曲』テナー吹きの俺は他の男に惚れて別れようとしている女房の勧めで顔の整形手術に踏み切る。病院で「老歌手」のシンガーの元妻と出会った俺は、やがて二人共に包帯姿のままでちょっとヤバイ犯罪事件を起こしてしまう。『チェリスト』若いチェリストの青年が自称チェロ演奏の大家と名乗る旅のアメリカ人女性と出会い個人指導を受ける奇妙だが充実した日々を描きます。ますます円熟味を増す著者の好短編集をお楽しみください。
誰しも訪れる下り坂にさしかかった人々の物語
副題には、音楽と夕暮れをめぐる五つの物語とある。「音楽」は短編を連ねるための重要な要素で、かつては誰もが知っていた老歌手、バンドを転々とする共産圏出身のギタリストなどあじわい深い登場人物の姿形を浮かび上がらせる。ただ、主題は「夕暮れ」の方だろう。
誰しも訪れる下り坂にさしかかった人間たちの物語。27年間連れだった夫婦の離婚旅行を描いた「老歌手」が典型だが、どの作品もどこかもの悲しい。決して不幸とまでは言えないのだが、悲哀を感じさせる。才能ある若者が大家を自称する女性に演奏の手ほどきを受ける「チェリスト」もそうだ。その才能を大きく花開かせることなく人生の峠を越えてしまった。
大きな出来事が起こるわけではないが、ほのかなコーヒーの苦みが舌に残る、そんな余韻を感じさせる短編集。





