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中世の罪と罰

中世の罪と罰
By 網野 善彦

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  • 発売日: 1983-01
  • 版型: ハードカバー
  • 239 ページ

カスタマーレビュー

法規範・法意識を表す『言葉』から見た中世史像5
 戦後の日本史学研究を動向として考えてみると、そこに幾つかの流れを見出すことは比較的容易である。
 1つはそれまでと異なる大きな社会構造の転換に裏付けられた社会経済史学の流れ、であり、もう1つは国家や組織それに根拠を与えるための“法規範”から時代像を捉えようとする法史学或いは法社会史の流れである。
 卑俗な表現が許されるならば少々乱暴かもしれないが、前者は“人間の行動から社会を解明しようとするスタンス”、後者は“人間の行動の背景から社会を解明しようとするスタンス”と言い直すこともできる。
 戦後間もない時期から70年代にかけての日本史学界にあって常に脚光を浴びてきたのは前者だったが、その一方で地道ながらも後者は着実に実績を積み重ねてきた。
 年代毎の動向で見るならば、社会経済史は50年代後半から70年代の半ばにかけて学界の中心的な流れを牽引し、80年代になるとアナール学派の登場も相俟って社会史と呼ばれるスタンスにウェイトが置かれ始めてきた。そうした背景もあって一貫して地道な研究が積み重ねられてきた法社会史が一躍、脚光を浴びることにつながっているのが現状である。
 本書はこうした流れの中で後者のスタンスから“日本の中世社会”を理解しようとする意図に基づき4人の中世史家による考察と討論で構成されている。
 例えば“悪口の罪”などは現代ならば“この程度で罪になるの?”と感じてしまう事柄も日本の中世社会の1つの特性である。無論、現代でも“ハラスメント”は立派な犯罪行為ではあるが、それを差し引いても中世の人々の法規範に対する意識には興味を引かれる部分が多々あることを再認識させられる。
 昨今、歴史学の世界では“権威”“意識”など史料とそこに記された『言葉』を丹念に読み解かねばあぶり出すことの困難な分野での成果が着目を集めているが、本書はその先駆的な位置を示している。
 最後に付加するならば、この書物の共同執筆者(網野善彦・石井進・笠松宏至・勝俣鎮夫の各氏)は全て1人の中世史家の門下生であり、その人物は実直な研究スタイルの持ち主として著名な“佐藤進一氏”である。