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安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
By 山岸 俊男

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  • 発売日: 1999-06
  • 版型: 新書
  • 253 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
リストラ、転職、キレる若者たち―日本はいま「安心社会」の解体に直面し、自分の将来に、また日本の社会と経済に大きな不安を感じている。集団主義的な「安心社会」の解体はわれわれにどのような社会をもたらそうとしているのか。本書は、社会心理学の実験手法と進化ゲーム理論を併用し、新しい環境への適応戦略としての社会性知性の展開と、開かれた信頼社会の構築をめざす、社会科学的文明論であり、斬新な「日本文化論」である。


カスタマーレビュー

「品格」よりも、社会構造5
糸井重里氏の『インターネット的』(PHP新書)で紹介されていたので読んでみました。期待以上に興味深い本です。

もっとも興味深かったのが、男女差別が生まれる理由を解説した部分です。「男女差別が生まれるのは偏見があるから」と言われますが、実はこれは社会構造への適応の結果であるとしています。

つまり、(男女差別がある)→女性は、出世の機会が少ないため、がんばることへの報酬や、サボることの不利益が少ない→全体的な傾向として男女の意欲や成果に差が出る→人事担当者は、終身雇用のもとでは「はずれ」の人材を選ぶことのコストが大きいので、統計的に「はずれ」が少ない方を選ぶ→男女差別が強化される。 という構造です。そのため、いくら「男女差別は良くない」といって意識変革を迫っても、「差別文化」の構造が変わらない限り問題は解決しません。

最近は、社会問題に対する解決策として、情緒的に「昔の日本人の心を取り戻せ」との提案がなされたりしていますが、筆者が実証するとおり、これはむしろ社会構造の問題であり、心の持ちようで解決する問題ではないことが分かります。

この他にも、「日本人はアメリカ人よりも個人主義である」ことや、「正直者がバカを見る」というのは必ずしも正しくないことなど、世間一般で信じられていることとは逆の事実が実証実験の結果と共に論じられており、衝撃的です。

社会心理学の立場から、人々の行動や文化を、人間の性質ではなく、社会構造から読み解く本。「日本人の心は貧しくなった」的な現代批判とは違った角度から現代の日本を眺めるためにも、一読を強くおすすめします。

「信頼」をキーワードに社会的矛盾を鋭くえぐる警世の書5
コンピュータの信頼性から人間に対する信頼まで,我々を取り巻く日常は「信頼」の二文字をベースに回っていると言っても過言ではない.

にもかかわらず,日本人の言う「信頼」は,グローバルな社会にあっては,むしろ人間関係の障害になりかねないと警告する.つまり,我々のいう信頼は実は本当の「信頼」ではなく,本来は「安心」とでも呼ぶべきものであり,「内なる人々に向けた“安心”」は,実は「“外”の人間を分けへだてる“障害”」になっていると指摘する.

こわいのは,そうした矛盾を知らず知らずに,しかも無邪気に再生産しつづけてしまう我々の意識と社会的システムである. 著者はこうした「社会的矛盾」に真っ向から取組む気鋭の学者である.

根源的テーマに挑み続ける著者のそんな姿勢は,読者に,「大事なキーワードは自分のアタマでしっかり考えなければいけません」と迫っているようにさえ感じられる.

人々は,現代を不確実な世の中だと嘆く.しかし,“人こそが最高の不確実な存在”なのではないだろうか.とすれば,不確実というコインの裏には『無限の創造性や可能性』が潜んでいると前向きにとらえることもできるはずである.

とすれば,問題は不確実性そのものにあるのではなく,人間を含む「不確実なもの」を“与件”としてしっかり見据え,その上で,『本当の信頼構築』に向けた“我々の正しい理解と日々の行動”が求められているのだと思う. 本書はそうした,いわば“信頼構築の旅だち”に向けたガイドとなる好著である.しかも,新書版でもあり読みやすい.

すでに何人かの友人や後輩に紹介してきた.「信頼」について考えあぐむ人たちであるが,異口同音にその鋭い問題提起に感嘆している. 著者の前著「信頼の構造」(日経文化図書賞受賞,東京大学出版会)の姉妹編である.余裕あればこちらもあわせて読むことをお薦めしたい.

社会心理学って面白い4
我々が信頼だと思い込んでいるものは、じつは不確実性の小さい関係内での「安心」なのだと著者は説く。日本社会を支えてきた安心が、現在の経済、政治、外交他様々の問題によって崩壊しつつある。そのことは真の信頼社会を築く絶好の機会でもある。どうすればよいのか。

社会心理学者の著者は豊富な実験データをもとに、我々の常識を覆してゆく。終身雇用や就職男女差別、あるいは大学偏差値などの問題も「信頼」の観点から切り込んでいる。難しい論理を展開させることなく、平易に説明しようとする著者の努力がうかがえるし、実際とてもわかりやすい。一つ難を言うと、実験の説明がやや冗長でそこは読んでいて疲れる。だから星四つ。

情報が隠匿あるいは操作される社会や、多くの人が多くの可能性を奪われた社会では信頼の文化は育たない。「知らぬが仏」ではなく、知りたいことは知る、教えられることは教える、そしてそれらの権利が守られる、個人個人も努力する、そんな簡単なことが信頼社会を築く一歩となるはずだ。