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アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)

アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)
By 野中 郁次郎

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  • 発売日: 1995-11
  • 版型: 新書
  • 212 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
1775年に英国を模して創設されたアメリカ合衆国海兵隊は、独立戦争以来、2度の世界大戦、朝鮮・ベトナム・湾岸戦争などで重要な任務を遂行し、遂にはアメリカの国家意志を示威するエリート集団へと成長した。はじめは海軍内でとるに足りなかったならず者たちが自らの存立を懸けて新たな戦術を考案し、組織の自己革新をなしとげたのである。本書は、その戦績をたどりながら、「最強組織」とは何なのかを分析する試みである。


カスタマーレビュー

強さの秘密は<自己革新>能力!5
私は、アメリカ海兵隊を組織論の立場から考察した<ビジネス書>として読みました。

著者は、強さの理由を組織の「自己革新」能力に見出しています。(この点については、「失敗の本質―日本軍の組織論的研究―」野中、寺本、戸部他/中公文庫/1991年(初版はダイヤモンド社/1984年)においても、米軍の強さの理由として「自己革新」を挙げています)

特に印象深かったのが、第6章 組織的考察-自己革新組織 <独自能力-「有機的集中」を可能にする機能配置>で述べられる、「組織の独自能力の基本は、そのような機能の配置(configuration)である。機能の配置とは、組織の使命の遂行にもっとも適合するようにすべての機能が相互に影響しあって全体として統一体のように行動できる関係」であり、「その際、あらゆる要素を平等に扱うのではなく、中心的機能を明確にして、ダイナミックな集中が生れるように有機的な関係を形成することが重要である。」

海兵隊の中心機能は歩兵(ライフルマン)です。海兵隊の全ての機能は「歩兵」を支援することに徹しています。

たとえば、海兵隊の航空パイロットは飛行任務に志願できるまでの2年間、陸上士官として陸上部隊について働きながら学びます。その後も現役期間を通じ、陸上勤務者と同じ技術学校で学ぶことになります。歩兵の動きがわかるから、どこに爆弾を投下すれば味方が傷つかないかもわかるのです。

また、海兵隊員の中核技能(コアスキル)である「ワン ショット・ワン キル(一発一殺)」の射撃技術を「訓練で汗を流せば、それだけ戦場で流す血が少なくてすむ」という哲学にしたがって、みっちりたたき込まれます。11週間にわたる新兵訓練「ブーツ・キャンプ」は、厳しい訓練だからこそ海兵隊の中核価値と中核技能が何かを徹底的に体感でき、しかも同期生どうしあるいは全隊員が共有できる経験なのです。経理だろうとパイロットだろうと、皆が「ブーツ・キャンプ」など厳しい歩兵訓練を共体験した仲間となります。

これを企業に置換えると、自社の中核価値と中核技能は何でしょうか? 本書を読む限り、中核技能は最前線での必須技術と思われます。

たとえば、小売業であれば接客技術であろうし、商社なら特殊言語(コンピュータ言語や外国語など)や交渉技術、メーカーなら製品知識といったところでしょうか。この中核技能を社長以下、会社に所属している間を通じ、全従業員が習熟するのです。研修や訓練を通じて習熟するわけですが、価値を共有するためには汗と涙を共体験するような過酷で厳しい訓練でなければなりません。生半可な研修では、技能の習得はできても、世代を超えて全メンバーが価値を共有することはできないからです。

価値(あるいは企業理念)共有のための密度の濃い訓練…あなたはどのような訓練を経験しましたか?

海兵隊の機能、実績、自己革新の歴史を知る手がかりとして5
この書籍はいろいろな観点から読むことができると思いますが、私は海兵隊の機能、実績、自己革新の歴史を知る手がかりとして読みました。アメリカ人と話をしていて彼らの海兵隊に対する信頼を感じることがあったり、アフガニスタン紛争や湾岸戦争へ海兵隊が真っ先に投入されるのを見たり、太平洋戦争でのさまざまな上陸作戦(硫黄島、ガダルカナル、沖縄本島など)の主力が海兵隊だったり、現在日本に駐留している米軍の多くが海兵隊であること等々、海兵隊に関する断片的な知識はあるものの、海兵隊がいったいどんな組織なのかよく分かっておらず詳しく知りたいと思っていました。陸、海、空の3軍とどんな関係にあって、それぞれとどう違うのかという基本的なことから、どんな経緯で作られて、どんな役割を果たしてきた組織なのか、現在の役割は何なのか、といった疑問まで本書は明快な説明を提供しています。そして本書は、こうしたことに関する歴史背景の説明を通して、海兵隊という組織がいかに自己革新を遂げてきたかを解説しています。最後の章では、海兵隊の自己革新組織としての要件として、(1)「存在理由」への問いかけと生存領域の進化、(2)独自能力-有機的集中を可能にする機能配置、(3)分化と統合の極大化の組織、(4)中核技能の学習と共有、(5)人間-機械系によるインテリジェンスシステム、(6)存在価値の体化、の6つを挙げており、それぞれに対してよくまとまった説得力のある説明が展開されています。

組織論の視点から米海兵隊の歴史的発展を分析する4
アメリカ海兵隊といえば、我々にとっては「太平洋戦争当時にガダルカナルや硫黄島で日本軍と激闘を交えた米軍の水陸両用戦部隊」というイメージが強いです。でも太平洋戦争開始前に米海兵隊がどういった存在なのか。彼らがどのような歴史的経緯を経て現在の姿になったのか。それらについては意外と知られていないのではないでしょうか。
本書では米海兵隊の誕生から様々な戦いを経て現在の姿に至るまでの経緯を追っています。艦上における警察官としての役割からその歴史が始まった米海兵隊は、やがて前進基地防御という新しい任務を獲得し、さらに日本の脅威が顕在化してくると「水陸両用作戦」という新しい任務を創出していきました。そして太平洋戦争における日本軍との激闘は、その概念をより発展させることになりました。
その後朝鮮、ベトナムの戦いを経た米海兵隊は「海兵・空・陸機動部隊」(MAGTF)という概念を生み出し、それを具現化するためにV/STOL攻撃機、海上事前集積艦(MPS)、揚陸戦強襲艦(LHA)等を開発していきました。そして今日、米海兵隊は緊急展開部隊の中核として、戦場に真っ先に投入されて敵と戦う役割を担っています。

本書の最後に「米海兵隊が如何にして自己革新を遂げていったのか」を筆者が分析しています。非営利組織である米海兵隊が現在の姿に発展できたのは何故か?。常にその存在に疑問が投げかけられながらも現在まで生き残って来られたのは何故か?。それらの問いかけに対し、筆者は組織論の視点から興味深い分析を提供しています。

初版が1995年ということで、時期的にはやや古さを感じさせる内容にはなっています。しかし米海兵隊という組織について考え直してみるキッカケとしては好適な著作といえるでしょう。常にダイナミックに変化する組織としての米海兵隊。そんな側面を読み取ることができるという点で本書はお奨めしたい作品です。