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錦


By 宮尾 登美子

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  • 発売日: 2008-06
  • 版型: 単行本
  • 438 ページ

エディターレビュー

出版社 / 著者からの内容紹介
西陣の呉服商・菱村吉蔵は斬新な織物を開発し高い評価を得る。やがて法隆寺の錦の復元に成功し、織物を芸術へと昇華させていくが……。絢爛たる錦に魅入られた男の生涯を描く宮尾文学の集大成。

内容(「BOOK」データベースより)
若くして京都・西陣で呉服の小売りを始めた菱村吉蔵は、斬新な織物を開発し高い評価を得る。しかし模造品が出回り辛酸を舐めた末、元大名の茶道具の修復をきっかけに、より高度な作品を手がけるようになった。そして、ついに法隆寺の錦の復元に挑むが…。織物に全てを懸けた男の生涯を描く渾身の大作。宮尾文学の集大成。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
宮尾 登美子
1926年、高知市生まれ。62年「連」で女流新人賞、73年『櫂』で太宰治賞、77年『寒椿』で女流文学賞、78年『一絃の琴』で直木賞、83年『序の舞』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

著者初?の男性が主人公作品4
きもの好きなら「龍村平蔵の帯」といえば、垂涎モノです。アンティークのきものを扱っているお店などで、目の玉が飛び出るようなお値段だったりもするのですが、その作品の存在感というのは、服飾品の域を超えて、まさに「美術品」と呼べるものです。
その龍村を創業し、織物に一生をささげた龍村平蔵をモデルに、宮尾登美子さんが30年の時間をかけてやっと書き上げたのが、この『錦』です。

主人公は、織物に取り憑かれたかのように、新しい目標を定めては、それに向かって一心不乱に前進していきます。そして、大名物茶入の仕覆の復元をきっかけに、法隆寺や正倉院御物の復元、さらには宮家の注文によるタピスリーの製作と、一織屋の域を超えた活躍をします。

仕事の業績が経糸なら、緯糸となるのは、彼をめぐる3人の女性との関係でしょう。十代から主人公に好意を持ち続け、仕事の場では常に吉蔵に付き従うお仙、曲尺屋から嫁入りして無口な中にも強い芯を感じさせる妻・むら、吉蔵の心の拠り所となる妾のふく。やはり、女性を描かせると宮尾さんの本領発揮という気がします。

ちなみに、タイトルになっている「錦」は、古くからある織物の技法で、さまざまな色糸から織り出された布のことです。

400ページ以上の大部ですが、なぜ龍村の帯に人が惹かれるのか、それを作った人たちがどんな苦労をなさったのか、という点に興味を持って、どんどん読み進んでしまいました。が、これまで読んだ宮尾作品としては、個人的にはもう一つ、突っ込みが・・・という気もするので、☆4つで。

宮尾作品に珍しい男性が主人公4
構想30年!だそうです。
昔の女性の憧れ・龍村の帯の創業者の物語。
帯といえど、あらゆる織り方を考案し、芸術の域まで高め、さらには大名家やシルクロードの錦を再現する主人公ののめりこみっぷりが描かれている。
彼をめぐる3人の女性もこの小説の大切なキー。本妻、二号さん、そして男女関係はないが彼の仕事ぶりに10代のころから焦がれ、影のように寄り添う女。
芸術家の苦悩もすさまじいが、彼に振り回される周りの人間の悲惨と喜びの落差のすごいこと!
宮尾さんの筆致も、すっかり落ち着いたかんがあり、正直、昔の迫力はない気もするので☆4つです。

主人公より脇役が魅力的3
巧みな筆捌きで飽きることなく最後まで一気に読めました。
これまでの作品に比べて平易に読める文体にされたように感じます。

主人公菱村吉蔵の激しい人生もさることながら、それをとりまく明治から昭和初期にかけての風俗も味わい深かったです。

ただ読みながらとても気になったのですが、彼は一切機織りをしません。非凡なアイデアを着想し、優秀な職人を集め機織りの環境を整備するのではありますが、機織りの技術そのものは全く持たないという謂わばプロデューサーという設定です。プロデューサーなのですが、最後は命を削ってまで、そして家族を含めた周囲の人に多くの犠牲を払わせながらも錦を作り続ける、そんな異常な執念の持ち主です。

実際に一切機織りを行わないのに錦の帯作りに執念をあげる、そんな人が存在しえないとしても小説だから創作するのは当然のことですし、ましてやモデルとなった龍村平蔵氏を私が全く知りませんのでこのような批判は見当ハズレかもしれませんが、しかし、そのような人がいようとはなかなか想像が出来ず、それゆえリアルな人物像を結ぶには至りませんでした。この人物造形に関して、更に念入りな描写がされていれば、尚一層楽しめたかも知れません。

また、充分に起伏に富んだ生涯ではあったのですが、想像していたほど波乱万丈というわけでもなく、ややトントン拍子に過ぎる感がありました。

一方、脇を固める女性たちの描写はとても豊かで、特に最後まで付き添うことになるお仙は、とても生き生きとして良かったです。私は、吉蔵自身よりもむしろ、彼を取り巻く3人の女性の描写を面白く読みました。