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高松宮と海軍

高松宮と海軍
By 阿川 弘之

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  • 発売日: 1996-03
  • 版型: 単行本
  • 221 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
名著「志賀直哉」脱稿以来「高松宮日記」編纂に没頭している著者が、発見から刊行までの劇的な経緯を初めて明かし、第一級資料のみが持つ迫力と感動とを鮮やかに伝える。時代と背景を解説する「海軍を語る」併録。

内容(「MARC」データベースより)
名著「志賀直哉」脱稿以来「高松宮日記」編纂に没頭している著者が、発見から刊行までの劇的な経緯を初めて明かし、第一級資料のみが持つ迫力と感動とを鮮やかに伝える。時代と背景を解説する「海軍を語る」併録。


カスタマーレビュー

阿川氏による「帝国海軍」の総括4
本書後半部、「海軍を語る」について。

私の父も江田島兵学校出の海軍軍人だった。戦いに負けて帰郷した負い目もあったろう、「きけ、わだつみの声」を読み、軍人や戦争に対しては極度に批判的だった息子に、海軍の思い出などは一切語らなかった。わたしも聞こうとはしなかった。戦争については一貫して寡黙だったが、何かの折、村の与太者が家に押しかけてきたことがあり、父は木刀をひっさげ玄関に立ち、おれは命を張って戦ってきた男だ、貴様ら如きに云々、と言い放って追い返したことがある。

海軍に対する万感の思い、米内、山本、井上ら海軍良識派の擁護。阿川氏には旧海軍のスマートなスポークスマンという印象があって、若干の違和感があった。海軍美化とは言わぬが、海軍の良さを何とか語り伝えたいという感情が多分に濃厚で、開戦を阻止できず、終戦に至るまで終始陸軍にひっぱりまわされた海軍の弱点を冷徹に抉る視点が弱いというものである。

しかし本著では、阿川さんらしく海軍の佳きエピソードをふんだんに物語りつつも、永野や嶋田の無能、彼らの判断に圧力を加えた東郷平八郎や伏見の宮、ドイツの電撃的成功に目がくらんで上層部を突き上げた対米強硬派の中堅幹部層などの責任がきっちり指摘されている。にもかかわらず、広大な太平洋をまたいでの対米戦であってみれば、(目標なき海上飛行などとてもおぼつかない陸軍機)海軍のイエスがなくば遂行不可能であった戦い、しかも勝ち目がないこと重々承知の海軍がなぜ開戦したのか。阿川さんが海軍の良き伝統と魅力的な指導者を物語れば物語るほど、我々には、無念と不可解の思いが深まる。

父は阿川氏と異なり無学であったし、殆ど何も語らなかったが、本著を読んでいるときっと父がいいたかったことは阿川さんがすべて書いてくれたのだなと思う。今ならあの困難な戦いを戦った人物に対し、然るべき敬意を払いつつ、静かに語り合える気がするのだが。