チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (塩野七生ルネサンス著作集)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #145419 / 本
- 発売日: 2001-07
- 版型: 単行本
- 304 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
法王の息子というキリスト教世界での異端児でありながら、チェーザレは枢機卿にまで上り詰めた。しかし、その象徴である緋の衣を脱ぎ捨て、真の目標に向け進み始める。剣を手にした彼の野望は「イタリア統一」―父や縁戚フランス王の権威を背景に、自らの王国樹立のために権謀術数の限りを尽くした若者の鮮烈な生涯を描く。「毒を盛る男」と断じた歴史の評価に対し「マキアヴェリズムの体現者」「行動の天才」という新しいチェーザレ像を提示した、初期の代表作。初めて収録した著者自身による執筆当時の回想(メイキング)は、自伝とも言いうる内容で、塩野文学の核心を明かす好読物。
カスタマーレビュー
善人からよりも、悪人から、より多く学ぶものである
チェーザレ・ボルジアは15世紀から16世紀初頭のルネサンス期のイタリアで活躍した武人・政治家。日本では同時代の外交官マキアベリィが有名であるが、著者は日本ではなじみが薄いこの若き英傑を取り上げる。
ローマ法王を父に持ち、10代にして枢機卿の地位に着く。その後還俗し、ローマを中心とした中部イタリアで法王領を平定し、勢力範囲を広げる。妹のルクレッツィアは美人で知られ、兄チェーザレの意の元、政略結婚を何度も重ねる。小国に分裂し、フランスやスペインといった大国の干渉が絶えなかったイタリア。外交と政治と軍事が密接に繋がり、権謀術策、陰謀、実弟や実妹の夫も対象とする謀殺、昨日の敵は今日の味方、敵の敵は味方、とばかりに活躍し、政情をリードしていく。その現実主義で合理的、怜悧な判断、革新性など、戦国期の織田信長あたりを連想するが(ルクレッツィアはさながらお市の方か?)、チェーザレの全盛期は20代と遥かに若い(彼は32歳までしか生きなかった)。
活躍が華やかならば、その運命の変転も劇的。ローマ法王の父とともにマラリアに罹り、自らの運命を変えてしまう・・・(毒殺されたという説は著者は退けている)。
後年の「ローマ人の物語」で十二分に発揮されている、著者独特の小説でもなく、伝記でもない、という著述スタイルは本作でもすでに現れている。ただし、「ローマ人」では、カメラを寄せたり、引いたり、時として現代から時代全体を俯瞰したりと、自在な視点で描いてあったのに対し、本作はまだそうした自在な領域には達していないように思える。チェーザレを見つめる著者の視点は一定で、舐めるように対象を描き出すものの、内面には入らないのが、やや物足りなく感じられた。
しかしながら、日本ではなじみのうすい人物の紹介でもあり、またともすればその芸術史的な側面からのみ語られることが多いルネサンス期イタリアの描いたという点で大変興味深い一冊である。
”毒を盛る男”と呼ばれた貴公子の、華麗にして儚い一生
結婚を認められていなかった聖職者、しかもその最高峰である法王の息子という出自からして、何かの間違いだったのかも知れない。しかし、誰が、どうして、この世に生を受けた人間の存在を、否定することが出来るだろう?
チェーザレは力強く生きようとする。陰謀渦巻くローマ法王庁に生まれ育ち、宗教上、本来存在してはならない者という偏見にさらされながらも、永く分裂状態が続いている「イタリア」を統一しようとする彼の姿は、単なる野心家のそれというよりも、愛に溢れている。家族への愛、祖国への愛、人類そのものへの愛。そういったものこそが彼の真実であるように思える。
本書は、ヨーロッパ世界で悪名高いチェーザレ・ボルジアに、新しい解釈を与え、その人物の魅力を伝えている。
「男は、この世で何をするべきか?」
ニコロ・マキアベッリならずとも、彼の魅力に取り憑かれずにはいられなくなる一冊。
良質の歴史小説
イタリアルネサンス希代の英雄が、塩野さんの美しくリズミカルな文体にのって、優雅に時には冷酷に、乱世を駆け抜けます。まるで極上の長篇歴史映画を観てるよう(価格も映画のチケット代とあまり変わらないし)。読み終わったあと、チェーザレが最後を遂げた時の、バラ色の朝焼け空を一度見てみたいと思いました。偉大なるヴィルトゥとフォルトゥナに乾杯。





