安部公房全集〈30〉1924.03‐1993.01
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #287025 / 本
- 発売日: 2009-03
- 版型: 単行本
- 865 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
新たに発見された幻の映画用シノプシス、書簡等70篇を収録。全30巻を自在にナビゲートする詳細な書誌。愛娘が人間・公房の真実に迫る、書下ろし評伝「安部公房伝記」。かつてない完全編年体個人全集。
カスタマーレビュー
弱者への愛
私も、安部公房全集が完結したことを、まず祝いたいと思う。
編年体というユニークな方針(長女の安倍ねり氏の発案)の全集の第1巻が刊行されたのが、1997年7月で、この最終巻は、2009年3月の発行である。足かけ約12年にして完結した。
かつて、とりわけ若い人たちの間で、争うようにして読まれた安倍文学は、この力作とも呼べる全集の刊行にも関わらず、いまやほとんど忘れ去られているように見える。辛うじて純文学という死語の下に、「三島」という名前が想起される時代にあっては、それもまた当然なのかもしれないのだが。
付録の「贋月報」で、三浦雅士氏が、安倍の言葉を紹介している。「二十世紀の大きな主題は弱者の救済であり、弱者への愛なんだ」。その世紀は聳え立つ知的構築物に翻弄された世紀だった。マルクス、フロイト、人によっては、それはフーコーであったり、デリダだったりしただろう。まさに翻弄されたのであり、人々は生の方向をその中で、見失っただけのことだった。そして、いま二十一世紀、私たちは、素朴な善いこと、悪いことという感受性しか頼るものがなく、その感受性にしたところで、ほとんど崩壊している、そのような「危機」の中にある。その意味で、「弱者」とはまさに私たちのことなのだ。
母親の子供殺しの時代に対する時、殺人が記号以上の意味を持ち得なくなってしまった時代に対する時、「弱者」という言葉は、唯一の導きのように、私には感じられる。
私は、安倍作品、特にその長編小説を読み直してみよう、そう思ったのだった。
刊行開始から12年・・・感涙の完結
結局、当初予定の〔別巻〕ではなく、第30巻の扱いとして刊行。別巻だったら、外函どのようなデザイン?などと思い描いて数年・・・ようやく正真正銘の最終巻の出現である。今回収録の補遺では、埴谷雄高宛書簡19通、主役の男をアメリカ人高校教師に変更した幻の〔砂の女〕シナリオ、同じく映画〔他人の顔〕の別シナリオが目玉だろう。安部ねりの伝記・年譜は大方の予想をはずしてコンパクトな内容、しかし凝縮された中に新たな情報を多く含み、無論第一級の資料たりえている。書誌は参考文献・索引含め600ページ超、確かに圧倒的だが、誤りや漏れが散見される。修正版の作業に着手した安部ファンも少なくないだろう。付録のCD−ROMは新潮社のテレフォンサービスの肉声音源を収録(懐かしさに震えました)。また本全集の函裏、見返し写真すべて収録していて、ひとまず合格点かな。




