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遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)

遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)
By ジークフリート・レンツ

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  • Amazon.co.jp ランキング: #342104 / 本
  • 発売日: 2005-01-26
  • 版型: 単行本
  • 286 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
婚約指輪を列車のなかに忘れた若い女性があれば、大道芸に使うナイフを忘れた旅芸人がいる。入れ歯が、僧服が、そして現金を縫い込まれた不審な人形が見つかる。舞台は北ドイツの大きな駅の遺失物管理所。巨匠レンツが、温かく繊細な筆致で数々の人間ドラマを描き出す、待望の新作長篇。

内容(「MARC」データベースより)
婚約指輪を列車のなかに忘れた若い女性、大道芸に使うナイフを忘れた旅芸人、入れ歯が、僧服が見つかる…。北ドイツの大きな駅の遺失物管理所を舞台に、巨匠レンツが、温かく繊細な筆致で数々の人間ドラマを描き出す。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
レンツ,ジークフリート
1926年、東プロイセンのリュク(現在はポーランド領)生まれ。第二次世界大戦中、海軍に召集されるが、戦争末期に脱走。捕虜生活を経てハンブルクに定住。ハンブルク大学で哲学や英文学を学ぶ。ジャーナリストとして働いたあと、1951年に『空には青鷹がいた』で作家デビュー。1968年の『国語の時間』で成功を収め、現代ドイツ文学を代表する作家の一人となる。ドイツ書籍平和賞、フランクフルト市のゲーテ賞、ゲーテメダルなど、数々の賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

自分を遺失物だと思ってる人も、誰かが拾って届けてくれてる場所があるかもしれない4
 タイトルと各種書評に目を通すと、“物にまつわる人間ドラマ”といったステレオタイプなストーリーを思い浮かべるかもしれない。それも一面では当たっているけれど、この小説の魅力は主人公のヘンリーにある。
 物語は24歳の青年ヘンリーが遺失物管理所に着任するところからはじまる。これまでの人生でうまく居所を見つけられなかったヘンリーはこの職場をすっかり気に入ってしまう。曰く、“遺失物管理所ほど気持ちのいい職場はないし、楽しいし、おまけに想像力も刺激されます”。
 育ちが良く、一見オプティミストに見えるヘンリーは、周りから「いつも思いつきに従って行動してる」「あなたは何でもお手軽すぎる」「ずいぶん自分が偉くて啓蒙的だと思っている」と揶揄されることもあるが、明るく人懐こくて、みんなの人気者である。そして実際のところ表面的な仕草とは裏腹に、結構深く物を考える“想像力”を持った奴なのだ。
 辺境出身ということだけで差別される同年代の数学者や、思い出にすがって生きる同僚の老父、自らの存在感を轟音と暴力にしか見い出せない街の暴走族...そうした弱者への眼差し、シンパシー、一方で権威や出世にまったく興味を示さないって辺りもヘンリーの魅力である。
 ヘンリーは世間に収まりの悪い自らを“遺失物”になぞらえるくだりがあるが、ヘンリーの一見能天気でピュアな心情も、多くの人々が失ってしまった“遺失物”なのかもしれない。
 全編を通して軽妙洒脱な会話が登場し、いつまでも読んでいたくなるような居心地の良い小説である。遺失物の持ち主であることを証明してもらうための“お約束シーン”(芸人にナイフ投げをさせたり、子どもに笛を演奏させたり...)も楽しい。

飄々とした青年の物語3
 北ドイツの大きな駅とおぼしき場所の遺失物管理所。そこへ24歳のヘンリー・ネフが職を得たところから物語は始まる。
 ヘンリーは鞄を無くしたバシュキール人のラグーティンと知り合いになるが、彼との親交を通じて見えてくるのは、異邦人に対して不寛容な現代ドイツの姿だった…。

 ドイツ連邦鉄道でこの遺失物管理所というのは決して花形職場ではありません。そこへ伯父のコネで就職したヘンリーは野心があるでもなく、どこか飄々とした感じで日々を過ごしています。とりあえず食うために職に就いたという程度の無気力な青年かという色眼鏡を通して読み進めていたのですが、これが意外と芯が強く、寛容の精神に富み、そして義理人情に篤い青年だということが見えてきます。
 出世欲は相変わらずないにも関わらず、やがてヘンリーは自身の仕事に当初に比べれば熱意をもってのぞむかのような姿勢を見せ始めるところで物語は幕を閉じます。

 物語展開に激しい起伏は見られません。職場の同僚である人妻パウラとヘンリーとの仲も、最初に予感させるほどの波風が立つことはありません。ヘンリーの飄々ぶり同様、物語も静かに進行するといってよいでしょう。
 その点に物足りなさを感じないでもありませんでした。

 翻訳にはもうひと踏ん張りほしかったところです。ドイツ語原文の過去形を日本語でも律儀にすべて過去形で表記したために、「~た」で終わる文章が延々と連なる結果となっています。リズムが単調になり、読んでいて味気ないという思いをしました。
 「~ではないかと思った」とやらずに「~ではないか?」で切ってみたり、適度に体言止めを用いたり、思い切って現在形を混ぜてみたりという工夫をすれば、もっとテンポある翻訳文になったことでしょう。

失くしたものよりも、4
遺失物管理所という狭い空間から紡ぎ出されるさまざまな人間模様も面白いのだが、
読みながら自分が失くしたもののことを考えてしまう。
そのものにまつわる時間や出来事に、思いを馳せてしまう。
読み終えて、いま、わたしは取り替えのきかない全てのことを、
とても、とても大切にしたくなっている。