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ティンブクトゥ

ティンブクトゥ
By ポール・オースター

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The New York Times Bestseller-
"[Timbuktu] emerges as Auster's most touching, most emotionally accessible book."-Michiko Kakutani, The New York Times

Mr. Bones, the canine hero of Paul Auster's astonishing new book, is the sidekick and confidant of Willy G. Christmas, a brilliant and troubled homeless man from Brooklyn, As Willy's body slowly expires, he sets off with Mr. Bones for Baltimore in search of his high school English teacher and a new home for his companion. Mr. Bones is our witness during their journey, and out of his thoughts Paul Auster has spun one of the richest, most compelling tales in recent American fiction.

"Lovely...[Paul Auster] is one of our most inventive and least predictable authors."-Jonathan Yardley, The Washington Post Book World

"A novel of haunted love whose themes loop around one another like glowing coils, connecting gracefully beneath Auster's clear prose, eliciting the fanciful and the tragic."-Oscar Villalon, The San Francisco Chronicle

"After reading Timbuktu, we ramble through our world with reawakened senses and newly alert minds. This is the Auster magic....[His] books tease and challenge. There is an innocence in his work that is entirely compatible with the complexity of his artistry....Paul Auster is a genuine American original."-Paul Kafka, Boston Globe


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  • Amazon.co.jp ランキング: #43637 / 本
  • 発売日: 2006-09-28
  • 版型: 単行本
  • 208 ページ

エディターレビュー

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   本書は、ポール・オースターが、「犬の視点」を通してアメリカのホームレスを描いた作品。一見奇妙な設定だが、ジョン・バージャーの『King』同様、感情に流されない厳しい犬の目を通してホームレス生活を描くことで、メロドラマ的なセンチメンタリズムに歯止めをかけた。バージャーが数人の登場人物をかわるがわる描いたのに対し、オースターはたった2人の主人公をじっくりと追っていく。まず「これといった血統も特徴もない雑種犬」のミスター・ボーンズ、そしてその飼い主であり、4年前の母親の死をきっかけにホームレス生活を始めた精神分裂症の中年患者ウィリー・G・クリスマスだ。

   物語は、ウィリーとミスター・ボーンズが人探しのためボルチモアの街をさまよう場面から始まる。相手はウィリーに作家になるようすすめてくれた高校時代の英語教師。死期迫るウィリーは、飼い犬と、グレイハウンドバスのターミナルに隠してある自分の大量の原稿の引き取り手を必死の思いで探していたのだ。「とうとうウィリーはこれまで書いたことのない最後の1文を書き終えた。残された時間はもうわずかしかない。あのロッカーにある原稿の一語一語、それは彼がこの世に存在したあかしのようなもの。もしその1語でも欠けてしまったら、彼の存在自体を否定されたも同然なのだ」

   ポール・オースターは、考えさせることで読者の感情を揺さぶるタイプの知性派作家である。死ぬ瞬間、ウィリーはあふれんばかりの言葉の海に向かって漕ぎ出していく。一方、残されたミスター・ボーンズはきわめて哲学的なことを考えだす。それはかつてウィリーが「ティンブクトゥ」と称した「あの世」のことだった。

ペットとしての生活が許されなくなったらどうなるだろう。いや、そんなことはありえない。だがミスター・ボーンズはだてに長生きしているわけじゃない。ちゃんと知っているのだ。この世の中、ありえそうにないことがいつだって起きる、なんでもありの世界だということを。だぶんこれもそのうちの1つなんだろう。でもこの「たぶん」ってやつの先には、ものすごい恐怖と苦痛がぶらさがっている。それを考えるたびに彼は言い知れぬ恐怖に襲われるのだった。

   ウィリーの死後、1人ぼっちになったミスター・ボーンズをとりまく環境はどんどん悪化。飼い主のいない犬は数々の裏切り、拒絶、そして失望を経験することになる。犬の心の内側に入り込んだ独特の世界観を通し、オースターは人間のもつ残酷さ、めったにお目にかかれない優しさを巧みに描き出す。だが読者は思い知らされるだろう。「ティンブクトゥ」の世界が荒涼としていること、そしてときおり感じる神の恵みの瞬間さえ、長くは続かないことを。(Alix Wilber, Amazon.com)

柴田元幸 on ポール・オースター
ジャックとオースター

ポール・オースターには1990年くらいからだいたい一年に一度のペースで会っていますが、90年代なかばあたりからか、ブルックリンの家に遊びに行くたびに、ドアを開けて迎えてくれるポールのうしろに、やたらと毛のふさふさした、人の(犬の)好さそうな犬が控えているようになりました。

 見かけと真実との錯綜した関係はオースター文学の大きなテーマですが、この犬――ジャックといいます――はまったく単純に見かけどおり、本当に人なつっこい犬です。すごく寂しがり屋で、みんな(ポール、奥さんのシリ、お嬢さんのソフィー、僕と僕の妻)で食事に出かけようということになって、ぞろぞろドアから出ていくと、ウォォォォォォォォォォォォンと鳴くこと鳴くこと、ドアを閉めて道を歩いていてもしばらく聞こえていました。

 そんなわけで、何年か前に「今度は犬が主人公の小説を書いているんだ」と言われたとき、これはきっとジャックと暮らすようになったことの成果だな、と思いました。もちろん、ジャックそのままの性格の犬が出てくるとは思わなかったけど(あんなに素直にいい性格では物語にならないと思う)、『スモーク』や『ルル・オン・ザ・ブリッジ』などの映画作りにかかわったことが、The Book of Illusionsのなかの映画に関する記述に確かな手応えを与えているのと同じような意味で、ジャックと過ごした時間が栄養分になっている小説にちがいないと思ったし、その予想は外れていませんでした。

 だから、日本語訳『ティンブクトゥ』の表紙を考える際も、ジャックに似た犬の写真を使ってもらいました。新潮社装幀室はいつも素晴らしい仕事をしてくれますが、今回の表紙は、そういうわけで、いつにも増して好きです。

 僕は犬を飼ったことがないし、どんな犬であれ、犬の生態についてはほとんど何も知りませんが(道を歩いていて、散歩をしている犬を見るのは大好きですが ――特に、寄りかかれそうなくらい大きなやつ)、『ティンブクトゥ』は、犬を主人公にしてはいても、僕のような犬音痴も疎外しない小説だと思う。このへんもいかにもオースターらしくて、この人はたとえばニューヨークの街を描いても、べつにニューヨークに行ったことがない読み手にもよくわかるような、それでいて単に絵葉書の引き写しではない、街の空気がはっきり伝わってくる描き方ができる人で、今回も同じことが犬について言えるんじゃないかと思います。犬の好きな人にも、べつに好きじゃない人にも、お読みいただければとても嬉しいです。

――柴田元幸
(イラスト:きたむらさとし)

出版社 / 著者からの内容紹介
優しかったウィリーに再会するために、ティンブクトゥへ行こう。出会いの喜び、別れの悲しみ。言葉の分かる犬と放浪癖のある飼い主の可笑しくて感動的な物語。オースターの最高傑作ラブストーリー。


カスタマーレビュー

shaggy dog story4
声に出して読んでみるとよくわかるのですが、
日本語のリズムに無理がなくて、耳にものどにも心地よい。
柴田さんの和語のセンスのよさが感じられます。

物語は、冴えない男とそのペットの犬との
まったくとりとめもない話なのだと言ってしまえばそれまでです。
でも、毒にも薬にもならないということは、
呼吸をするのと同じくらい、そこにあることが自然だということ。
すっかり自分の生活の一部になっているということ。
それは犬のみならず、何か生き物を飼ったことのあるひとなら、
わかってもらえる感覚だと思います。

生き物を愛する、愛される。
お互いにそんな関係でいられたらいいのに。
年を取るのも死ぬときも、いっしょだったらもっといいのに。

久しぶりに後味の良い本にめぐり合えました5
本が好き、犬も大好き。それだけでお勧めします。
が、それだけじゃありません。日本語の文章が洗練されていて無理がありません。

表紙の犬が可愛いすぎなんですが5
 行き倒れになったウィリーは病院で高校時代の恩師、ミセス・スワンソンと再会を果たすのですが、その様子を、なぜか「ハエ」になって天井から見下ろすミスター・ホーンズの視線が素晴らしい。ここのジャンプ感は最高。ふたりの会話がいいんですよね。道中、ウィリーからからミセス・スワンソンの聡明さを聞かされていたミスター・ホーンズは、30年ぶりに見る教え子が病院に担ぎ込まれた姿を見た時の反応に仰天します。ミセス・スワンソンは気丈にもこう云うんですな。

《「参ったわねぇ、ウィリアム」と彼女は言った。「あんた、人生滅茶苦茶にしちゃったみたいね」""Jesus Christ, Willam," she said. "You've sure made a mess of things, haven't you?"》

実は、ペイパーバック版では読んでいたんですが、この日本語訳は素晴らしいですね。さすが柴田さん。とにかく、日本語版のp.83-からの会話は素晴らしすぎ。もし、アメリカに、どこか、まだ憧れがあるとすれば、こうした女性がローカルな街に本当にいるかもしれない、と思うからなんじゃないのかな、なんて思いながら読んでいました。