カデナ
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #53083 / 本
- 発売日: 2009-10-31
- 版型: 単行本
- 434 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
1968年夏。沖縄、アメリカ、ハノイ。フィリピンに生まれ、カデナの米軍に勤務する女性曹長フリーダ。サイパンで両親と兄を喪い、沖縄で一人戦後を生き抜いてきた朝栄。朝栄夫妻にかわいがられ、地元のロックバンドで活躍する青年タカ。朝栄のサイパン時代の旧友で、那覇で再会するベトナム人安南さん。―4人は、カデナ基地からの北爆情報を刻々とベトナムに伝える「スパイ」となる。だがそれはフリーダにとって、B‐52機長である恋人の大尉、パトリックを裏切る行為でもあった…。
カスタマーレビュー
自分で考えて動く
ベトナム戦争終盤の沖縄を舞台とする話。作者が取り上げるのは集団の中にあって自分の考えで行動する人の姿だ。
米軍の中にいてベトナムの市民を救う活動をする女性、軍隊という組織からの脱走兵・・・。
脱走兵を支援する組織が出てくるが、その組織はやめたくなったらいつでもやめていい。組織の中のひとりひとりが自分の意思で動くことを大切にする。
集団に対して個で立ち向かい、相手に一矢報いることをテロというならば、集団の中にありながら自分の意思を失わず、集団の悪意をガス抜きするのがスパイだ。
スパイ同士は独立した個人として距離を保ちながら連帯する。
家族という集団であっても個人が埋没するのであれば一緒にいないほうがいい。
現代は個の時代と言われることもあるが、実際は個人が自力で生きる術を失い集団に埋没している。
この本から「自分で考えて生きよ」というメッセージをつかんだ。
戦争と人間の関係を清々しく軽やかに描く、池澤作品の最高傑作のひとつ
舞台は本土復帰前1968年の沖縄。主人公は、機械部品店を営む地元出身の朝栄、ベトナム人であることを隠している安南、ロックバンドの若きドラマー、タカ、そして、カデナ基地に務めるアメリカ空軍女性下士官フリーダ・ジェインの四人。秘書官のジェインが持ちだしてきた軍事機密――ベトナムでの次の攻撃目標はどこかという情報を、リレーしてベトナムへ打電する、四人の素人スパイの物語だ。
しかし、四人の誰も声高に「戦争反対」を唱える者はいない。「みんな自分の気持ちからやっている」のだ。但し四人とも、戦争は攻撃される側も攻撃する側も不幸にする絶対悪で、その累は遠い未来へも及ぶ、ということを痛いほど理解している。つまり、池澤氏の発想には、大多数のアメリカ人のごとく(オバマ氏の、ノーベル賞受賞スピーチでも明らかだった!)、戦争には「よい戦争」とそうでない戦争がある、という考えなど一切ないのだ。
物語は、「あのバカみたいに大きなB52」が離陸直後に基地内に墜落する、という実際の事件でクライマックスを迎えるが、その爆撃機のパイロットこそジェインの恋人パトリックだった。そして、パトリックがずっと性的不能だった理由は、ヒロシマ・ナガサキに深く関係していたことが明らかにされる…… 。
この話には、アメリカの戦争物のような派手なアクションは出てこないうえ、ベトナム戦争ばかりか沖縄の基地問題、第二次世界大戦の爪痕、核兵器、そして国家と個人、つまり愛国心と裏切りという重いテーマまでが問われているのに、不思議に心にすっと入ってきて、とても読みやすい。それは、絶妙のタイミングで挿入されるなよやかな沖縄言葉が、心地よいリズム感を生み出しているせいでもあろうし、繰り返し説かれていることの高潔さが、読む者の胸を打つからでもあると思う。組織あるいは国家にのみこまれず、個人でいつづけることの大切さと困難さ、がそれだ。
この作品は、戦争という人類の生み出した「子ども」を、文字によって語り継いでいこうという作家としての気概、あるいは覚悟のようなものが伝わってくる、池澤作品の最高傑作の一つではないだろうか。
理屈抜きで面白い傑作
登場人物のうち、沖縄人の地の語り口は細部に至るまで徹底した沖縄口。さすが、わざわざ居を沖縄に移した筆者ならではの力業。それはマニアックな観点からも面白いが、それより何より本作は小説として非常に面白い。迷わず一読、あるのみ。




