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井上成美

井上成美
By 阿川 弘之

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  • Amazon.co.jp ランキング: #487021 / 本
  • 発売日: 1986-09
  • 版型: ハードカバー
  • 507 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
昭和50年暮、一人の元海軍大将が死んだ。戦後、清貧の生活を貫いたこの人こそ、敗戦前夜、一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭した井上成美だった。開戦前、米内光政・山本五十六とともに日独伊三国軍事同盟に反対し、無謀な対米戦争回避を主張。戦時下にあっては兵学校長として英語教育廃止論を退ける等、時流に抗して将来を見通す全人教育を目指した。狂熱の時代に、さめた知性と合理性を保ち続けた〈意志の人〉の悲劇的な生涯。「山本五十六」「米内光政」につづく海軍提督三部作

内容(「MARC」データベースより)
帝国海軍きっての知性、海軍大将井上成美。彼は終始無謀な対米戦回避を主張、兵学校では英語教育を存続させ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく身命を賭し、戦後は子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた…。*


カスタマーレビュー

キリストの生涯と相通ず5
小生、訪問販売(飛び込み営業)時代の出来事です。

伺った家のご主人はたいへん寡黙な方でした。壁に掛かっていた飾り物から、その方が海軍の元ラッパ手であることに気付き、当時、丁度読んでいた『井上成美』についての感動を素直にお伝えしたところ、当方を信頼に値する者と見做してくださったのでしょうか、数十万円した商品を、驚くほど簡単に予約してくださいました。詳しくお話しをお聞きすることはできませんでしたが、その方を通して、同時代を生きた人々の井上成美に対する深い畏敬の思いを間接的に知ることのできる経験でした。

論理的であることや自己主張する個人を煙たがる風のある日本の社会(『世間』)において、高い見識を保ち、10年先20年先を見据え、疎まれ、誤解され、場合によっては社会(『世間』)から排除されるのも覚悟の上で、左顧右眄することなく生涯を送るなどというのはたいへん難しいところがあると思いますが、まさに井上成美はそのように生きました。退き際も立派です。

小生は、井上成美の生涯とイエス・キリストのそれとを、いつの間にか重ね合わせて読んでいましたが、「終章」井上成美の死後、残された蔵書について触れたくだりで、「井上の枕頭の書だったろうと思われるものに聖書と賛美歌があった。」「何故バイブル全巻をこれほど丹念に繰返し読んでいたのか、不思議であった。」という記述に膝を打つ思いをいたしました。小生思うに井上の生き方はキリストのそれと相通じます。井上が聖書に共感を覚えるのは無理なかろうと思いました。

当該書籍は、気骨ある明治男を扱った小生の愛読する伝記の一つです。

最後の海軍大将、強烈な意志と生涯5
 この作品は太平洋戦争の終戦に尽力した提督、井上成美の生涯を描いた伝記小説である。とりわけ戦争前夜から晩年までに焦点を当てて描かれている。構成の仕方に妙味があり、海軍軍人としての井上と、海軍が解体されたあとの晩年の井上と、彼の人生における異なる局面の時間軸を前後させながら物語は展開する。

 感じたのは、作品をうかつに読んでいると井上の何が徳なのかが見えてこない可能性があること。大局的、本質的に観察してこそ井上の功績は認めることができるものだろう。

 さて、井上には性格的欠陥が多分にあったと、まずはそう言わねばなるまい。思ったことは歯に衣着せずそのままズケズケと言ってしまうし、正しいと信じた事以外にはテコでも動かない頑固さがあった。そして何より潔癖症であり、秩序だったものを病的に好む。当然周囲との摩擦が絶えず起こり、敵対者を大勢作った。井上のこの性格はついに生涯貫かれる事になったが、しかしこれをもって井上を過小評価することは出来ない。この作品では様々なエピソードを引いて井上成美の人物像を多角的に映し出している。

 人間には良い面も悪い面もあって、一元的にその人を「こうだ」と決め付けることはできない。阿川氏の作品ではそういうことがよく踏まえられており、主人公とする人物の欠点、または偉大性ばかりを強調するような書き方はしない。戦時中や終戦までの悲愴な過程を描くときでさえ冷静な筆致は変わらず、距離を置いた観察者に徹している。それだけに読者は物語を客観的に読むことが出来、様々な感慨を自らの頭の中に思い描く事ができるのである。
 様々見てきて、最終的にはああいう狂気の時代にこの人物がいてよかったという結論に達するのが本書の主題ではないか。性格はどうあれ、正しい方向に向けて行動し発言できる人間がいなくなったらオシマイである。現代の国の舵取りを見るにつけ、一層それを強く思う。

派手な伝記ではないが、戦時中にこのような軍幹部がいたことに驚く4
阿川氏の海軍大将三連作のうち最後のもので、派手さは一切
ない読み物ですが、井上成美の名前だけは聞いたことはあっても、
どのような人物であるかほとんどど知らなかった自分にとって
目を開かされる思いの一冊でした。

井上が日米開戦前から「南方諸国を侵略して資源を
盗ってはいけない。資源がほしければ商取引をすればよい」と

現代人と全く変わらない考え方を持っていたこと...。

山本五十六が日米開戦前、当時の近衛首相に問われて、
「とうしても闘えと言うならば、海軍は一年ぐらいは
闘って(暴れて?)ご覧にいれます」と答えたことに対して、
「どうしてはっきり『海軍はアメリカとは戦争できません』と
答えなかったのか」と批判したこと...。

今となっては言ってもしかたがないことですが、
井上成美が日米開戦前に首相であったならば、
真珠湾攻撃は行われず、太平洋戦争もなかったのではと
思わずにはいられません。

太平洋戦争や日本の近代史に関心を持つ方は、
一度読んでみるといろいろと面白い発見がある
一冊であると思います。