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グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)
By トム・ロブ スミス

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  • Amazon.co.jp ランキング: #26895 / 本
  • 発売日: 2009-08-28
  • 版型: 文庫
  • 365 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
レオに突きつけられた要求は苛酷をきわめた。愛する家族を救うべく、彼は極寒の収容所に潜入して、自ら投獄した元司祭を奪還する。だが、彼を待っていたのは裏切りでしかなかった。絶望の淵に立たされ、敵に翻弄されながらも、レオは愛妻ライーサを伴って、ハンガリー動乱の危機が迫るブタペストへ―。国家の威信と個人の尊厳が火花を散らした末にもたらされる復讐の真実とは―。


カスタマーレビュー

好漢ティムール・ネステロフは矢張り還らず4
第57強制労働収容所からの脱出とモスクワへの帰還、フラエラ率いるヴォリとの暗闘、フロル・パニンの謀計とハンガリー動乱など舞台が目まぐるしく変わる中、翻弄されるレオの家族愛の物語。人物造型的には、「自分の逮捕に関わったすべての者たちに復讐する自由」(181頁)と「人生を台無しにした国家そのものに仕返しをする機会」(269頁)を得て、ある意味燃え尽きたフラエラの存在が圧巻。今後発刊されるというレオ・シリーズの最終第3部が、何はともあれ待ち遠しい。

この著者、やっぱりただ者じゃない!5
前作でレオが築きあげたものが、続編では次々と壊されていきます。想像をはるかに上まわる容赦のない展開には、ただただ脱帽。前作での“まとめ方”も見事だったのですが、本作の中盤へ向かっての“壊し方”もすごい。著者の実力を見せつけられたような気がします。

とにかく登場人物ひとりひとりの描き方がすばらしくて、どんな脇役も手を抜くことなく丁寧に描かれている。みんな時代の流れに翻弄されながら自分なりに生きる道をみつけて必死に生きていて、そんな人々の生きざまと死にざまに胸を打たれました。ひょっとしたら何よりもまず、時代の犠牲者たちの姿を描きたかったのかもしれない。そう思わせるほど、登場人物たちの姿をとおして著者の熱い思いが伝わってきました。

そしてなんと言っても、読者を楽しませることには決して手を抜いていない。前作ほど圧倒的ではないにしろ、読者をぐいぐい引っ張っていく牽引力は健在。最後まで一気に読ませます。で、読んだあとには怒濤の時代を登場人物たちと一緒に駆け抜けた確かな余韻が残ります。この余韻は前作以上かも。お勧めです。

多層的な善悪構造で物語に深みが5
圧倒的なストーリーにひたすら脱帽!という感じだった前作。ただ、続編があると聞いたときには、あまりにきれいに終わりすぎたエンディングが少し気になっていた。で、本作を読んでみると、前作の大団円を大胆に切り崩していく展開にうならされた。この人、本当にすごい作家だなと思う。

前作は善悪の対立構造がわりと単純明快だったけれど、この作品では、主役級はもちろん脇役にいたるまで、登場人物が自分なりの信念を持って生きるさまがより丁寧に描かれている。正直、読んでいるうちに、誰が正しくて誰がまちがっているのかよくわからなくなった。作品中で死んでいった多くの人々のように、現実に即して生き残る道を選ぶことだって、あの状況下では卑怯だとも思えなかったし…。

映画化を意識しているのでは? と思わせるようなアクション・シーンも満載。最後まであっというまに読めて、エンターテイメントとして充分楽しめるつくりはさすが。個人的には物語の中盤で起きた悲劇に泣いた。

登場人物の一人ひとりにじっくりスポットを当てたぶん、物語の牽引力が弱まった感は否めないけれど、〈レオ・デミドフ物語〉として考えると、この作品が前作を補完する形で物語全体に深みを与えていると思う。最終作で、レオがどんな着地を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。