戦う操縦士 (新潮文庫)
|
| 価格: |
おすすめ度:
商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #346525 / 本
- 発売日: 1956-11
- 版型: 文庫
- 203 ページ
カスタマーレビュー
アラスへの飛行
15歳の学院生活の安らかな世界から、この小説は始まる。けれども彼ははすぐに現実へと呼び出され、危険な偵察飛行の任務に飛び立っていく。この小説では実在した人物が、事実に基づいて描かれている。1940年の5月にサン・テグジュペリ自身が行なったアラス上空での偵察飛行について、実際にその任務にあたったものにしか書けない臨場感を持ちながら、まるで人ごとのようなクールさのある文章となっている。それはその任務そのものがほとんど生還不可能であり、しかも仮に生還してもその情報を司令部へ伝達する機能が崩壊している・・つまりその任務は無意味なもの、「まるで山火事にコップの水をかけるような」ものだったからだろう。
機上での観測士や機銃員との会話は、任務の困難さをまるで映画のように伝えてくれる。高度1万メートルでは気温は氷点下50度となり、操縦装置も機銃も凍結してしまうという。そしてドイツ軍戦闘機との遭遇や、アラス上空で高射砲の弾幕のなかを一秒一秒生き延びていくさまが当時の戦争をリアルに伝えていて、戦記物としても優れた作品。
小説の終盤では、人間が人間として生きることについて作者の省察が独白的に書きつづられていて、彼の遺作となった「城砦」へのつながりを感じさせる。フランス軍が各地で敗北、撤退を余儀なくされている中で、あくまで希望を抱き続ける彼の文章は非常に心を打つ。
一番好きなサン・テグジュペリ作品
夜間飛行も,人間の土地も,そりゃ名作です。
でも,個人的には一番好きなのは,この本です。
既に素晴らしいレビューがありますが,好きな本なので,一言。
第二次世界大戦下,ドイツの電撃戦により,フランス軍はちりぢりに崩壊していきます。
その中,自分の偵察飛行が全くの無意味であり,生還は期しがたいことが分かっていながら,サンテグジュペリは,フランス空軍パイロットとして飛び立ちます。
高々度故凍り付くコクピット,他の搭乗員との会話,崩れゆく戦線,偵察目標地点における対空砲火の渦,どれもこれも,実にリアルで,まるでサンテグジュペリと共に,フランス上空を飛んでいるかのような錯覚に陥ります。
全く良く生きて帰れたものだ。
でも,この彼の献身的な闘いの全てが無駄なのです。
そのくらい,はじめから分かっていました。
それでも,彼は飛ぶのです。ただ命令のためではなく。
人間にとって,国家とは,戦争とは,果たすべき責任とは,義務とは…
サンテグジュペリは,飛びながら考えます。
絶体絶命の砲火にさらされて,絶対に生還は無理だと思えるときも,考え続けます。
アメリカが参戦し,ヨーロッパ戦線に向かう若きGI達が,皆この本を持っていたとの伝説もあります。
サンテグジュペリの他の作品に比べると,この一冊は,確かに青臭いかも知れません。
でも,そこには,他にはないリアルさが,生きることの意味を問い続ける作り物ではない生々しさが溢れています。
他に数社から今もこの作品は出版されています。
今は,そちらで何とかしましょう。
でも,この堀口大学訳が,実にいいんですけどねえ…



