死の家の記録 (新潮文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #13347 / 本
- 発売日: 1973-07
- 版型: 文庫
- 567 ページ
カスタマーレビュー
優れた人間観察の記録
小説というよりもノンフィクションに近い感じの作品である。明確なストーリーはなく、ドストエフスキーが自ら体験したシベリヤの流刑地で起こった一連の小さなエピソードや人物描写からなっているが、どれをとっても興味深い。普通に考えると、監獄とは一種の特異な環境、さらに言うと極限状況であり、そして中に収容されている人たちも「異常」な者ばかりだと思われがちだが、この作品はそういった世間一般の偏見を真っ向から否定し、たとえ監獄内においても、人々の間で働く様々な心理学的、社会学的力学は外の世界とは本質的には違わないことを示している。そういう意味でこの作品は非常に優れた人間観察の記録であり人間の本性の論考である。また、お高くとまって犯罪者たちを見下して裁くのではなく、彼らを究極的な「不幸な人々」「たくましい力を持ちながらむなしく亡び去ってしまう人々」として捉え、彼らに限りない憐れみを寄せるドストエフスキーの視点にも見習うべきものがあると思う。
工藤精一郎の素晴らしい日本語訳が特筆すべき。訳文は非常にこなれていて、すらすらと読めて生き生きしている。こんなに気持ちよく読める翻訳作品は久し振りだ。
ドスエフスキー作品の原点
ドスエフスキーが実際に監獄で過ごした4年間をもとにした作品です。
とくにストーリーというものはなく、まさに「記録」といった感じです。
主には監獄の様子、囚人の生い立ち、人物描写という3つの要素で成り立っています。
平等と自由というものを強く感じました。監獄というある程度抑圧されて、囚人たちは平等であるはずの場でも「差」があります。なまじ平等であるからこそ貴族と平民の「差」が如実に表れている感じでした。
この作品はドストエフスキーにとって1つの原点であると思います。この後に出された傑作(「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」「悪霊」「白痴」など)のモチーフが秘められている作品であると思います。
入門書としてもいいし、この他の傑作を読み解くためにもいい作品であると思います。
ノンフィクション?
収容所での体験記というと本書と、V・フランクル『夜と霧』が頓に著名ですが、私はこちらのほうがずっと好きです。「夜と霧」は主観的要素が強く出すぎている箇所が多く、ドキュメンタリーとしての秀逸さは文句のつけようがないが、いささか首を傾げるところがあります。本書はフィクションではありますが事実上ノンフィクションといってもよく、現実の人間社会を描いた作品としてはもっとも高い位置にあると思います。著者の独白にはその小説と同じように普遍性を持った問いかけがあり、誰もが深い内省に引きずられずにはいられません。作品の性質上、著者の小説のような劇的な展開は望むべくもないのですが、それを補って余りあるものがあると思います。罪と罰やカラマーゾフのあとに読むのが良いでしょう。





