妖女のねむり (新潮文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #660449 / 本
- 発売日: 1986-01
- 版型: 文庫
- 364 ページ
カスタマーレビュー
幻想と謎解きの甘美な二重奏
樋口一葉の遺稿と思われる一枚の反故を偶然手に入れた
柱田真一は、その出所を突き止めるため、諏訪に旅立つ。
そこで真一は、長谷屋麻芸という女性に出会い、
二人は前世で恋人同士だったと告げられるのだが……。
本書は一葉の遺稿を巡る歴史ミステリ、あるいは輪廻転生という超自然的設定を
前提とした幻想恋愛物語というような当初予測しうる常道的な展開は見せません。
とある主要人物が毒殺されたことを転機に、物語は合理的な謎解きの方向に
収束していきますが、謎が解かれてもなお残る幻想の残滓に、曰く言い難い
余韻があります。
作中の事件のトリックをみてみると、男女の心中という究極の情愛と、
その裏に仕掛けられていた、きわめて即物的なトリックの対照の妙、
そして、毒殺殺人における大胆不敵な毒の混入方法が印象的です。
全編に揺曳する神秘的な雰囲気と、いかにもミステリらしい理知が
有機的に融合し、著者独特の味わいが生み出されています。
また、本書では、贋作にはどうしても見えない美術品が登場するのですが、
その制作者のひとりが、以下のような〈芸術観〉を開陳します。
〈芸術は模倣から始まるなどと言いますね。わたくしは型から入って心を得たのです。
(中略)ある意味では××はわたくしの肉体の中で、転生したと言えるでしょう〉
このように本書における「輪廻転生」は文字通りの
意味だけでなく、文化論としての含みもあるのです。
▼付記
冒頭でさりげなく示されるあるモノが結末において
最大の謎を氷解させる構成にはしびれました。




