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涙 下巻   新潮文庫 の 9-16

涙 下巻 新潮文庫 の 9-16
By 乃南 アサ

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  • 発売日: 2003-01
  • 版型: 文庫
  • 494 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
川崎、熱海、焼津、田川…わずかな手がかりをもとに、萄子は必死に婚約者の跡を追った。やがて捜査から、ある男が重要人物として浮上するが、勝が逃亡する理由は不明のまま。勝への思いが消え入りそうな萄子だったが、当時米領の沖縄・宮古島に彼がいる可能性を大阪で知る。島でわかった慟哭の真実とは?’60年代の出来事・風俗をちりばめ、男女の一途な愛を描いた傑作ミステリー。


カスタマーレビュー

上下巻を一気に読まされる4
主人公・萄子婚約者の刑事・奥田が突然失踪。先輩刑事・韮山の娘で奥田に思いを寄せていた、のぶ子の惨殺体発見され、奥田は容疑者となる。東京オリンピック前後を時代背景に、真実を求め失踪した婚約者をおう萄子を描いたサスペンスの秀作。

萄子があまりにも自由にお金の心配をすることなく、いろいろな場所を行き来するという展開に若干の無理は感じるものの(金持ちすぎる!)、上下巻を一気に読まされるだけの内容はある。(「涙」するかどうかは別にし

「しゅとるむうんとどらんく」4
ミステリー?否。これは恋、青春の悲恋物語。
己に降りかかった疾風怒濤に対峙して、自力で抜け出した女性の物語。
ちょっと甘めの味付けもあるけど。

日本という国で、「戦後」に青春を過ごした者、
人それぞれ、時代に多少のずれはあっても、思い返せば
青春とはまさしく「疾風怒濤」の時間。
この物語、あの熱に浮かされたような青春時代のひとつの

昇華されたカタチみたいなものを描いているように感じた。

象徴として描かれる、宮古島での疾風怒濤のさなかでの再会(&告白)
は、まさしく、「主人公に青春はおわるもの」という事実を告げている。
あれほど人を苦しめた台風はうそのように過ぎ、青春もあっけなく終わる。
蛇足ながら、ふつうは、勝のように、告白してくれたり、

はっきりかっこよく決別させてはくれないのが、一般的青春だ。
それに、男女問わず、淳のような存在は、ほとんどまったく期待
できない、というのもまた実際の現実だ。
主人公は東京山の手のお嬢様だけれど、その胆力には脱帽させられる。
始めは若気の至りだったのかもしれない捜索行動だったが、なんと

青春の貴重な2年間を費やして、男を追って日本中を駆け巡るのだ。
これは相当な力仕事だと思う。
私ならまず、「金と時間がない」
と考えてあきらめるだろうことを、彼女はやってのける。
これがすごい。お嬢様だとか、金の有無とか以前のその情念が。
もちろん、水呑百姓の娘には考えることすらできないことだから、

こちらの視点で見れば、あまちゃんだとしか言えないのだとしても。

それでも。
心震える物語には間違いない。

これが、「小説家の力」なのだろう。
堪能しました。ありがとう、乃南アサさん。

しゅとるむうんとどらんく5
ミステリーなのでしょうか。んん。確かにミステリーなのでしょう。
しかし、この物語は疾走する青春の物語なのだと思いました。

時代設定が、物語にとてもリアリティをもたらしていると思います。
でも、この類いの悲恋物語はどんな時代シークエンス設定でもあり得る。

圧巻はやはり、宮古島台風襲来の中での奥田誠の告白場面です。

上下巻の長丁場を待たされた読者はここに至ってやっと、
この悲劇が生まれたそもそもの真相を知らせてもらえます。
同時に誠と萄子の恋愛の結末をも。
悲しい。
けれど美しい空港での訣別のシーン。

今でもかなり難しいと思うけれども、6、70年代の日本で、
お財布と相談する必要もなく日本の各地を飛びまわれるヒロイン

というのも私の常識の範囲を大!いに超えていますが、
他方、情念はすべてを超越するということもわかる気がします。

エピローグ。
長年連れ添った夫婦の間で、交わされるあたりまえの日常会話。
こんな、忍耐強い?亭主というものは、通常存在し得ないのでは。
というのは、率直な感想です。

しかし、この恋、この怒涛の青春にすっかり同化し、泣いたり恨んだり
笑ったり・・・・と堪能させていただきました。
これをして小説家の腕力というのでしょうか。
ありがとう、乃南アサさん。