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きよしこ (新潮文庫)

きよしこ (新潮文庫)
By 重松 清

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  • 発売日: 2005-06
  • 版型: 文庫
  • 291 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと―。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
重松 清
1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年、『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年、『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年、『ビタミンF』で直木賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々と発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

伝わる言葉。5
吃音に悩み、そのために言葉にならずに飲み込んだたくさんの言葉。
そんな少年がクリスマスに出会った「きよしこ」
「ほんとうに伝えたいことだったら、伝わるよ、きっと」
この言葉は、少年だけじゃなくて、みんなに当てはまることなのではないかと思います。
伝えたいことをうまく言葉にできなくて、もどかしい、悔しい、
そういう思いをしたことがある人はとても多いと思うから。
でもきっと、本当に伝えたかったことは、相手に伝わっているのかもしれない、
そう思うと、なんだか心があたたかくなりました。

少年を主人公とした7話の短編から成り立った作品です。
どの作品も、静かに心に響いてきましたが、
その中でも「どんぐりのココロ」が私の中では印象が強いです。
うまく学校に馴染めない時に出会ったおっちゃんとのお話。
最後のほうで少年が自転車を走らせながら歌うところでは、思わず涙がこぼれてしまいました。

その他の6話も、すべて、あったかくて切なくて、
読み終えた後、あったかい気持ちになれると思います。

伝えたいのは言葉だけではないけれど5
吃音のために言いたいことが言えなかった少年のお話し。
カ行、タ行、濁音が苦手です。
苦手な単語は自分の言える言葉に直して話すのです。
でも、それでは本当に言いたいことが伝わらない。
そういうのって、悔しいですよね。
逆に僕は昔、言葉が話せなければ良いと思った時期がありました。
話すのが下手だから、誤解されることもないし、傷つかないし、傷つけることもない。
でも、話せた方が良いに決まってる。
少年はいろいろな人と関わりながら、力強く青年へ成長して行きます。
この小説は同じ吃音の子供を持つ母親から、作者に励ましてくれるように頼まれ、
手紙の返事の代わりに書いたメッセージだそうです。
このメッセージは、しっかり伝わっていることだと思います。

少年の気持ちがカーンと胸に響く5
 言葉の最初の音がつっかえてしまう、吃音(きつおん)症の少年のきよし。きよし少年は、父親の仕事の都合で、小学生の頃から何度も転校を繰り返しています。せっかく友達ができたと思ったら転校。自己紹介で失敗したけど、ようやく周りと馴染めたかなと思ったら、また転校。それにしても、言葉がつっかえてしまうこの吃音、なんとかならんのか。
 そんなきよし少年の小学一年生から高校三年生までの思い出の出来事が、アルバムの中の写真を見るような感じで描かれていきます。

 「きよしこ」「乗り換え案内」「どんぐりのココロ」「北風ぴゅう太」「ゲルマ」「交差点」「東京」の七つの話。さびしかったり、いらついたりする少年の気持ちがカーンと胸に響くみたいな、しんみりとしてしまう話の味わい。涙腺にじわじわーっとくる話が多かったですね。

 それだけ取り出してみればなんてことなくても、その話では不思議にあたたかな光を放っている描写がとても上手いなあと思いました。
 母親が、フライパンの中の卵を菜箸で手早くかき回すところ。机の上に、飴色に透き通った蝉の抜け殻が置いてあるところ。両手を広げて走る少年のほっぺたに、冷たいしずくが飛んできて触れるところ。そういう文章の味わいが実にいいんだなあ。あたたかいんだなあ。

 それと、話の最初に置かれた木内達朗の挿絵がいいですね。話にすっと入っていける挿絵であり、話にぴったりの挿絵に◎を。