五千回の生死 (新潮文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #40098 / 本
- 発売日: 1990-04
- 版型: 文庫
- 212 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
「一日に五千回ぐらい、死にとうなったり、生きとうなったりする」男との束の間の奇妙な友情(表題作)。トマトを欲しながら死んでいった労務者から預った、一通の手紙の行末(「トマトの話」)。癌と知りながら、毎夜寝る前に眉墨を塗る母親の矜持(「眉墨」)。他に「力」「紫頭巾」「バケツの底」等々、日々の現実の背後から、記憶の深みから、生命の糸を紡ぎだす、名手宮本輝の犀利な「九つの物語」。
カスタマーレビュー
一つ一つが印象深い。
粒ぞろいの短編集です。どれもが印象深いです。
なかでも「力」は、小学校にあがったばかりの子供の話です。
家から離れた学校だったため、最初の数回は母親と一緒に
行くのですが、ついに一人で通う日が来る。
それを後ろから、隠れて、はらはらしながら見守る母親や、
父親の思いなど、短いながらも心温まる、印象深い作品でした。
珠玉の短編集
宮本輝がこんなにも短編の名手だとは知らなかった。九編の短編は日常生活の一コマを背景にしているようでありながら、私たち市井の人々にはなかなか垣間見れないような、夜中の突貫工事、大阪の釜ヶ崎、あるいは埋め立て団地の工場現場などを仔細に描いている。と、思えば、何でもない日常品、トマト、自転車、眉墨などが巧みに各短編の小道具として使われたりもしている。そして、ストーリーは.....。一種特異な背景を舞台に、何でもない小道具を使って綿密に練られたストーリーは、何とも表現し難い読後感をもたらす。ストーリーの中の人々の生き生きとしたふれあいがさらに氏の短編の魅力を増している。
眼差しの逆転
昭和の終わり近くに刊行された短編集。九篇の作品が収められている。
「力」・・・入学して間もない小学生の息子の通学をこっそり見守る母親の話(長編『流転の海』シリーズに重なる挿話)。意外なたくましさや大胆さを発揮する息子の様子が、危なっかしくそしてほほえましい。やきもきしながら息子について行った母親、この小さな尾行を命じ、報告にお腹をかかえて笑った父親・・・商売に失敗してから、あとにも先にもないような笑いだったそうだ・・・心の芯がほんのり温もる話だと思う。作品中のある老人の言葉、「元気が失くなったときはねェ、自分の子供のときのことを思い出してみるんですよ」。これを実践して元気を取り戻せる人はつくづくしあわせだ。
「眉墨」・・・癌と診断された70歳の母親を気遣い、見守る息子の話。「生きるもよし、死ぬもまたよし」と、心配する息子にささやき、癌と知ってもなお寝る前に眉墨を塗るという習慣を粛々と続ける母親の大きさ、強さが染みる。
この二篇を並べると、母親→息子、息子→母親と眼差しの方向が逆転する。真新しいランドセルを背負った息子も、いつか母を見守るようになるのだ・・・ 連作ではないが、大きな時間のうねりが印象に残る。





