雪沼とその周辺 (新潮文庫)
|
| 価格: | ¥ 380 1500円以上は送料無料 詳細 |
発送可能時期: 在庫あり。
販売、発送は Amazon.co.jp
商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #63571 / 本
- 発売日: 2007-07
- 版型: 文庫
- 206 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
堀江 敏幸
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。’99(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞を、2001年「熊の敷石」で芥川賞を、’03年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、’04年、同作を収録した『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
心地よい刺激に満ちた作品集
この二百頁に満たない小品集は、
≪雪沼≫という土地での生活を描いたものです。
この哀感ある地名は存在しませんが、
土地に暮らす人々の生活の一片を垣間見ると、
巻末の池澤夏樹の解説にあるように、
雪沼で生活しているかのように思えるのが、
淡白ながらするりと作品に引き込む文章の魅力なのです。
さりげない生活の中にさりげない奇跡を織り込んでいる分、
そこに派手さはなく、退屈ととられるかもしれません。
ですが、
最後の一投にかけるスリル、
失われたものへ向ける悲しみ、
ささやかな誇りへの英雄譚、
大切なものが壊れる瞬間、
など、小粒でもピリリとした刺激に満ちた秀作ばかりです。
初めての感触
どこが面白いのか分からない、だけど面白い。そんな微妙な感覚が楽しめるようになった自分は少し成長出来たと言う事でしょうか。
こんなにメッセージ性を押さえていて、暑苦しさが全くない筆致なのに、何故か“哀”しく流れ込んでくる趣。リアリティが有りすぎて怖いくらい。なのに舞台は架空の土地。
“雪沼とはどこにあるのだろう?”
無いと分かっているのに考えてしまう、また無いからこそ逆にこの中に描かれた住民性が疑いなく綺麗に映る。
そして主人公に『さん』を付けている事。読み方によっては、出てくることのない主人公の主観によって描かれているような不思議な読み方が出来る。そうすると“『主役』のいない物語”という風味になり、益々タイトルのニュアンスが引き立つ。うまく言えませんが…。(恐らくこれは私の勘違いな読み方で著者の思惑には全く含まれていないと思います……)
こんなに淡々としているのに退屈しなかったのは何故だろう?…本当に不思議な本です。
静かでひっそりとした読書の愉しみ
雪沼という山あいのひっそりとした町。どこか昔風でそれがいっそ美しいこの町とその周辺に暮らす人々の生活が丁寧に綴られた連作7篇を収める。語られるのは人々だけではない。旧式のボウリング装置、裁断機、家具調ステレオといった「機械」や「物」が、人々と分かちがたいものとして描かれ、独特の表現で鮮やかに映し出される。
作品内で「機械」や「物」が丁重に扱われるためか、本作には職人的な人物が多く登場する。職人に限らず、雪沼の人々の性格は職人的というのか生真面目で、それがなんともいえない安心感と信頼感、憧憬の念を生む。
どの作品もまぎれもなく著者の文章なのに、一作一作色合いが違う。雪沼の静かな風景の一部になっているかのようでありながら、誰もが異なる世界−ごく小さいけれども確かな世界−をもつことを思わせられる。物語は前置きなしに何気なく始められ、彼らの姿に迫ろうとページを繰るにつれて、閉じられていた物語、主に過去の物語が立ち上ってくる。そしてひたすら読み入るうちさっと幕引きがなされるので、読者は物語の中から立ち去り損ね、いつまでもその中に漂う格好になる。そんな読後感だ。
地の文の中で人々は「・・・さん」と表記されるのだが、これが妙味を加えている。ユーモラスな作品ではより親しみやすく、居住まいを正したくなるような作品では敬意を伴って響く、「・・・さん」。 その他書ききれないが、読書の愉しみを味わわせてくれる作品集である。
「送り火」は、2007年度大学入試センター試験に出題された。試験に取り組まれた皆さんが、今度はこの文庫を、ゆっくりと読んでくださっていることを願う。





