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カシスの舞い (新潮文庫)

カシスの舞い (新潮文庫)
By 帚木 蓬生

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  • 発売日: 1986-11
  • 版型: 文庫
  • 361 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
分裂病と覚醒剤中毒の治療・研究に成果をあげている南仏、マルセイユの大学病院で首なし死体がみつかった。だが被害者とおぼしき元患者のカルテ、レントゲン写真は消えていた。疑惑を抱き、調査を始めた日本人内勤医水野の周囲で次々に起こる不可解な事件。暗号名〈カシスの舞い〉の意味するものは―。そして脳研究所で行なわれている実験とは―。戦慄の科学サスペンス。


カスタマーレビュー

帚木蓬生という作家を認識できた4
 帚木蓬生という作家をようやく認識した。

 外科医の水野は日本で実績をあげ、フランスで勤めている。そんな中マルセイユの大学病院で首なしの死体が見つかる。しかし被害者のレントゲンやカルテは消失。その後あわただしくなる周辺の状況。疑問を覚え調査を始めた水野。シモーヌというパートナーも得た中危機感を感じずにはいられなくなる。

 うん、上手い。盛り上げ方はどうかだがキャラクターが本作でも上手に描かれていると思う。何より主人公の魅力を重視したいわけだがそうではなく周りにあると思う。シモーヌの存在も必要不可欠だ。

 どうしても本作は帚木にしか書けないなあ、と思う場所はいくつかある。まずはリアリティ。構築もさることながらどうやって医学ものをのミステリーを創り上げ読者を納得させることが出来るか。どれだけ自分の手腕を小説に生かせることが出来るか。フランスでの本人の経験は必要不可欠。情景描写が素晴らしい。それによって読後の余韻がどーんと残った。

 割と本作の筋は見えてくるわけだが水野はどうする。そしてどうなる、のかが注目される。スリリングなサスペンスとしての味も上々たるものだ。

 個人的に惜しいかな、と思ったのは決め手に欠けることかな。良作、とは思わせてもそれ以上の秀作にはならないと思った。しかしながらシモーヌという存在を上手に創り上げたものだ。足りなかった部分は最後に補足されている。というかそれこそが答えか。

 一作しか読んでいなかったが丁寧な作家だと認知することが出来た。また他の作も読んでみよう。

すがすがしきサスペンス5
 冒頭に、ローマ法王暗殺未遂事件が描かれ、「いまや法王でさえ標的のタブーではなくなった。それは、この世界がどこか見えないところでひび割れ始めている証しではないか」という一文があります。そして、社交的で世長けたムーラン教授と、理知的なポロー教授が「二つの対抗する城」として登場する講演会の場面。
 その後展開される物語の大筋は、精神分裂病(統合失調症)の病理を生化学的・薬理的に研究する人々の狂気のサスペンスで、筋立てがおもしろく、精神疾患についての細部の描写も興味深くて、引き込まれ、一気に読んでしまいました。
 そして読後のいま、冒頭の象徴的な場面が意味をもって問いかけてきます。人間の原罪(神に背き善悪の知識の木の実を食べた→知識への欲望)と、主に主人公カップルによって描かれる愛による救済が、対比されていたように思います。知への欲望が人類に文明をもたらし、病を克服する道となった一方で、目を神に向けてみれば、なんだかそれは罪を帯びているような。暴走すればとんでもないことになる、そうなる傾きを持つ人間の悲しさを感じます。
 最後に再びムーラン教授が登場したとき、冒頭では俗物のように思えたこの人が、たいへん魅力的に感じられて驚きました。主人公の一貫した誠実さも快かった。陰惨な筋立てだけれど、読後感はすがすがしく、希望があります。よきメッセージのこめられた作品だなあと思います。

旅のお供4
本書を入手したら即座にカバーをかけること。
巻末「解説」は最後に読むこと。箒木作品は初めてという向きには特に上記2項厳守をお勧めする。
さて本書だがジャンルの記載はあえて省いた。ともかくも表題「カシスの舞い」に抱くイメージを大事にしたまま、何をも思うことなく読み進めるといい。

著者についての予備知識がないにもかかわらず、しかも本書を3分の1読み進める前に、著者の作品に対する「思惑」を読みとれたとしたら、読者の恐るべき直観力に敬意を表する。
など、単に当方、飛行機内の時間つぶしで「ボーッ」と読んでいたので、分からなかっただけかもしれないが。

とどのつまり、3分の1読み過ぎるまで、クレゾールの匂いとほのかな時に濃厚なロマンスの芳香を嗅ぎ取っただけで、最終的なストーリーの行方をつかむことはできなかった。

舞台は南仏マルセーユと近郊の港町カシス。主人公は日本人の精神科アンテルヌ・インターンとだけはお伝えしておこう。

安易に汲み取れない展開の行方ゆえに、読み出したら止まらない。法事ごとで田舎への行き帰りの機内で居眠りせず仕舞い。ちょっとした空き時間でほとんど読んでしまった。家に帰り着くや、ラストを読み込んだ。

著者の本領発揮分野だけに、ディテールの積み上げは見事。長々しい説明はストリー展開の厚みと説得性に貢献こそすれ、邪魔にはならない。

面白く読み終え、しばらくしてちょっと「ゾワーッ」ともさせてくれる。旅行のお供なんぞにちょうどよい量のお勧めの文庫本!この著者の手になるもの、続けて何作か読んでみたくもなる。