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たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)
By 藤沢 周平

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  • 発売日: 1991-09
  • 版型: 文庫
  • 379 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮してはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない。表題作のほか、「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「日和見与次郎」等、その風体性格ゆえに、ふだんは侮られがちな侍たちの意外な活躍を描く、痛快で情味あふれる異色連作全八編。

内容(「MARC」データベースより)
異色の剣客たちの、ここ一番。一読心が晴れる、再読心に沁みる。表題作等8編収録。大きな活字で読みやすい「藤沢周平名作シリーズ」第一弾。1988年初刊の新装版。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤沢 周平
1927‐1997。山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。’71(昭和46)年、「溟い海」でオール読物新人賞を、’73年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍。『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』、『白き瓶』(吉川英治賞)、『市塵』(芸術選奨文部大臣賞)など、作品多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

かくも素晴らしく、優しき剣豪たち5
 短編集です・・表題の「たそがれ清兵衛」城勤めの武士でありながら、妻が病床に付き下の世話まで彼が見なければならない。そのため夕方の退城の定刻になると逃げるように自宅へ戻る。そんな彼に皆があざけりをこめてつけたあだなが「たそがれ」。本人も特に気にすることなく妻の身だけを案じて暮らしている。

 そんな彼に上意討ちの討手の役がひそかに舞い込む。実は彼は若い頃は藩内でも一,二を争う剣の腕前。夕方の城中での上意討ちが刻々と迫る中、愛する女房の下がもれてないか気が気でたまらぬ。が、そこは主人公、相手を鮮やかな腕で始末した後、いそいで女房の下の世話へと急ぐのだった・・。

 表題作を始め、どの短編もいじらしく人間くさい主人公と、普段は見せぬがいざというときに出てくるあざやかな剣さばきの対比が素晴らしい。作者が晩年にその胸中に達したといわれるユーモアとペーソスをさわやかに織り成しながら、剣客小説としての凄絶さも失われない、まことにバランスのとれた稀有な傑作だと思う。あらゆる人に推薦。

もう一つの「たそがれ清兵衛」論5
 藤沢周平『たそがれ清兵衛』は短編集で、表題作の「たそがれ清兵衛」は巻頭に入っ
ています。いま映画館でこの「たそがれ清兵衛」が上映されています。某 ワイドショ
ーによると、観客はこの映画に「サラリーマンの悲哀」を見出し、涙を流すとか。でも
映画と小説は全然違います。


 「たそがれ清兵衛」では、人間愛(夫婦愛)が描かれているんですが、それと完全並立
するかたちで、武士社会の論理も描かれています。

 病気の妻に優しい主人公。しかし「上意」(主君の命令)により何のためらいもなく、
人を殺す。
 いやためらいはある。けれども、それは殺害の日には帰りが遅くなるので、妻の介護
に差し支えはしないかという心配なんです。
 また、その後日、殺した相手の護衛が主人公を殺そうとするのですが、この時も、主
人公は実にあっさりとその人物を殺している。何のためらいも、葛藤もなく。そして平
然とその場を立ち去り、妻の元に急いで帰ってゆく。

 江戸時代の武士は主君に絶対服従なんですね。無条件の服従が要求される。このよう

なありかたは「封建制」とは違うという見解がある(石尾芳久、吉本隆明)。
 厳密な意味での「封建制」においては、主従の上下関係は絶対的なものではなくて、
give and take, 「ご恩」と「奉公」という相互性の関係がある、という。西欧と日本の
中世にはこの「封建制」があった。しかし、江戸時代の日本では「封建制」は崩れてお
り、それにかわって「アジア的専制」があったのだ……という見解がある。

 この見解に依拠して、やや「ゴーマンかまして」みますと、藤沢周平の小説「たそが
れ清兵衛」は、夫婦愛と「アジア的専制」とのコントラスト、それらのあっけらかんと
した両立可能性がテーマになった小説だということになる。映画と違って、サラーリマ
ンが自己投影でき、「団塊の世代」がむせび泣くような、やわな小説では毛頭ありませ
ん。

名もない名剣士たちの八つの物語4
 江戸時代の名もない剣士の物語が集められた短編集です。
 しかも、8人の剣士とも華々しい生活というよりも、ちょっと日陰な境遇の人達。ひっそりと生きる男たち。
 自分の力を誇ることなく、ひけらかすことなく、おごることなく生きるその姿こそ、まさに「卑怯」という言葉を一番に嫌う「武士道」そのもののように見えました。
 華美でなく、誇張しない文章からも、淡々とひたむきに生きた男たちの背中が見えてくるような気がしました。