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消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)
By 藤沢 周平

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  • 発売日: 1983-01
  • 版型: 文庫
  • 424 ページ

カスタマーレビュー

江戸を舞台にした人気サスペンスシリーズの1作目です5
海外ミステリー好きとしても有名だった著者のサスペンス物ともいうべき人気シリーズの1作目です。主人公はかっては凄腕の岡っ引であったものの、妻に他の男と無理心中されたことから、今は彫師として気楽ではあるが、冴えない日々を送っている伊之助。そんな伊之助の元に昔の仲間から居なくなった娘を探してくれとの頼みが舞い込み、いやいや探索するうちに昔取った杵柄が甦ってきて、娘の失踪に仕組まれた謎をしだいにほぐしていきます。
サスペンス性に重点を置いているものの、著者独特の江戸の人々や町の描写は相変わらずであり、また、サスペンス物としても、本格推理小説とまではいかないまでも、一挙に読ませる面白さを持った本です。

ぐいぐいと読者を引き込む構成には脱帽!4
舞台は江戸時代の江戸と思われる。主人公は元岡っ引のバツ一。適当に仕事を

こなし、だらだらと自由な身分に身を置いている。僕は、こういう時代物を呼んだ経験はほとんどなかったのだが、この本は予想以上に面白かった。消えた女を捜す私立探偵のような働きをする主人公が時に戸惑い、しかし、大部分は冷静に問題の核心に迫るストーリーテリングはなかなかのものだと思う。人物描写などはシンプルで、たまに幼稚におもえる描写などもあるが、それはストーリーの骨太な勢いであまり気にならなくなるとおもう。(ただ、致命的なのは死の描写で、「ガクガクと手足が震えたかと思うと、両目がくるっと上に向いた」というところ(笑)これじゃ、安物の時代劇です)
何はともあれ、面白いです。

伊之助迷路を歩く4
暮れ六つ(午後6時)「日は町の高いところに移り、木の梢や寺の屋根瓦の端に、昼のかけらのような光を残しているだけで、町のそこには白っぽい日暮れのいろがたまりはじめていた」という秋のある日から始まり、「伊之助は早春の光のなかに立ちつづけた」ところで終わる物語である。その間には秋から冬にいたる季節と江戸の庶民の暮らしと探偵ハードボイル調の伊之助の活躍が描かれている。

かわいそうな女おようと、哀れな女おうのと、一途な女おまさが印象的である。事件は一定の解決を見るのであるが、実は伊之助は1人の別の女のことをずっと探索していたのではあるまいか。彼は「岡っ引をやめてくれない?」と女房のおすみに言われて「バカ言え」と一笑にふす。その後女房は男と無理心中して死んでしまったのである。彼は岡っ引をやめ、その後決して十手を持とうとしない。伊之助はおようを探して江戸深川の小路から小路へ歩きながら、精神を病んだおうの事を調べながら、おまさの愛に戸惑いながら、死なれた女房おすみの本当の気持ちを探す迷路に入りこんでいたのだ。私にはそう思えて仕方なかった。彼に本当に「早春の光」は届いたのか。それは次の物語に書いてあるのかもしれない。

このサスペンス時代小説は本格推理物ではないので、謎解きが物足りない所があるのは仕方ない。少し強引な展開があるので星ひとつ減ったが後は満点。